「デジタル化の推進」で「働き方改革」がどのように変わっていくのか
そもそも「骨太方針」とは、2001年に、当時の総理大臣だった小泉純一郎氏が「聖域なき構造改革」を進めるために出したもので、政権の重要課題や翌年度の予算の方向性を示す方針のことです。それが2020年も閣議決定されたのですが、ひとつ目の「デジタル化の推進」によって、行政手続の抜本的なオンライン化も推進させるとしています。たとえば、話題になっているハンコ主義からの脱却もそうですが、すでに導入されている雇用調整助成金のオンライン受付などもそのひとつです。
また、コロナ禍で注目された「テレワーク」の促進と定着も重要な課題になっています。緊急事態宣言が発令されていた時は、在宅勤務を実施していた会社が多く見受けられましたが、宣言の解除後は、コロナ前と同じ勤務体制に戻しているところが多いようです。
そこで、せっかく導入され始めたテレワークをそのまま定着させて、ワークライフバランスに貢献させるべく、「フェーズIIの働き方改革」に向けた取り組みを加速させるとしています。
どういうことかというと、2019年では「働き方改革」の目玉として、「長時間労働の是正」や「多様で柔軟な働き方の実施」、「同一労働同一賃金の導入」などをあげていました。しかし、2020年になって新型コロナウイルスが猛威を奮い、これまでの働き方からやり方を変更せざるを得なくなりました。これにともない、テレワークによる在宅勤務も導入せざるを得ない状況になりました。
そうはいっても、不幸中の幸いとして、コロナ禍のおかげでテレワークの普及が進んだわけで、政府はその取り組みを後戻りさせず、そのまま定着させたいのですね。そのためには、これまで日本の雇用で当たり前だった「メンバーシップ型」から「ジョブ型」の雇用への転換をはかるために雇用ルールの明確化などを進める、としています。つまり、これまでのように「人に仕事を割り振る」のではなく、「仕事に人を割り当てる」ようにすることで、仕事の内容を明確化し、テレワークによる在宅勤務を進めやすくするのです。
たとえば、業務を細かく棚卸してマニュアルを作成し、どのように仕事を進めれば結果を出せるのかを明確にします。これによって、「仕事に人を割り当てる」ことができるようになれば、会社に行かなくても業務を進めやすくなり、テレワークの定着に貢献できるというわけです。
そのために政府は、デジタル化、オンライン化を進めると同時に、労働契約のあり方を見直すために「雇用ルールの明確化」にも取り組むと言っているのです。
「骨太方針」で雇用の維持をどのように進めていくのか
そして、もうひとつ「骨太方針」にあげているのが「雇用の維持」です。緊急事態宣言が出されると、政府は「雇用調整助成金」や「小学校休業等対応助成金」、「持続化給付金」などで雇用の継続を促し、今でも申請を受け付けています(2020年8月現在)。
政府は、「雇用調整助成金」について、オンライン受付を確実に稼働させ手続きを簡素にすることで、できるかぎり迅速に助成金を支給し、雇用の維持に全力を尽くすとしています。また、「持続化給付金」や「家賃支援給付金」についても、オンライン申請を継続して審査やサポートを迅速に進めて、早く支給できるように努めると記載しています。
そして、オンライン化による恩恵を受けられるよう兼業や副業を支援するとも言っており、それに合わせて労災保険法や雇用保険法もダブルワークに対応できるよう法改正されました。
ただ、同時に「最低賃金の引き上げ」にも言及しており、最低賃金の全国加重平均が1,000円になることを目指す方針は堅持するとしています。「加重平均」というのは、最低賃金の平均額を企業ごとに出すのではなく、対象になる労働者1人当たりの賃金平均額を出すということです。
コロナ禍で企業を取り巻く状況を考慮して検討を進めるとしていますが、今後の政府の方針の動向には注意しておく必要がありそうです。
さて、いかがだったでしょうか。これまで述べたように、デジタル化やオンライン化の波にうまく乗りながら、また、助成金なども上手に使いながら「Withコロナ」の時代を生き抜いていくことは避けられないようです。
助成金はオンライン申請ができるとはいえ、手間と時間がかかり、慣れていないと申請書類の訂正などを要求されることもあります。助成金の申請は、お近くの社会保険労務士に依頼されることをおすすめします。