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どこよりも早い2018卒採用総括、どうなる2019卒採用

HR総研 主席研究員(ProFuture株式会社) 松岡仁

前年と同様、「採用広報開始:3月、採用選考開始:6月」の採用スケジュールとなった2018年卒採用。そして解禁前のインターンシップについて1Dayインターンシップが正式に容認されることとなった2019年卒採用。そこで今回のフォーラムでは「どこよりも早い2018卒採用総括、どうなる2019卒採用」と題し、HR総研による独自調査結果をもとに、それぞれの総括および予測を行いました。

18卒採用動向(インターンシップ)

まずは18卒採用動向ということで、インターンシップから見ていきます。開催時期についてですが、従来は夏開催のインターンシップが一番多かったわけですが、採用スケジュールが変わったことで冬の時期が多くなり、結果的に18卒も実施社数ベースで「2月」が「8月」を大幅に上回りました。実施したインターンシップのタイプでは、夏は「1週間程度」や「2週間程度」が1Dayをわずかに上回るなど、さまざまなタイプのインターンシップが実施されていますが、冬はそのほとんどが1Dayタイプに集約されています。またインターンシップと採用選考の関係については、6割超の企業が何らか選考と結びつけていると答えています。

次に学生側のデータを見てみましょう。インターンシップの参加時期に関しては、当然のことながら実施企業数が多く、かつ1Dayの実施が多い企業「2月」が圧倒的に多く、参加したインターンシップの社数については、文系の56%、理系でも46%の学生が2社以上のインターンシップに参加したとしています。またインターンシップ参加による志望度の変化に関しては、7割の学生がインターンシップに参加して、志望度がアップしたと答えています。結果、8割近くの学生がインターンシップ先企業に正式応募し、文系の4割、理系の5割がインターンシップ先から内定を取得しています。もちろん複数社のインターンシップに参加している学生も多いですから、複数社のうちの1社だけから内定という学生も多いでしょう。

一方で、インターンシップ参加学生を事前選考する企業は少なくありませんが、選考に漏れた学生からは、文系で37%、理系で33%の学生が、その企業への志望度が落ちたと回答。また、4割以上の学生が、事前選考に不合格となった企業への正式応募を見送っています。定員の少ないインターンシップは、本選考の応募母集団を大きく減らすリスクがあると言えます。企業はこれまで、インターンシップに参加した学生をどう選考に結び付けるかに注意を払ってきましたが、それだけでなく、事前選考で不合格にしてしまった学生へのフォローをどうするかをよく考えた方がよさそうです。

18卒採用動向(プレエントリー)

プレエントリー数の増減は、約4割の企業が「前年並み」と回答。「前年より少ない」は33%で、「前年より多い」の18%を上回りました。プレエントリー社数を比較したデータを見ると、文系では「41社」以上にプレエントリーした学生が前年よりも軒並み減少し、その分「21〜40社」が前年よりも6ポイント増加しています。理系でも「21社」以上にプレエントリーした学生が、「61〜80社」を除き、前年よりも軒並み減少し、逆に「20社以下」の学生は5割を超えました。また、プレエントリー時期に関しては、文系・理系ともに前倒し傾向にありますので、プレエントリーが開始される3月1日以前に、いかに学生との接点を持ち、認知させておくかが重要になります。

18卒採用動向(セミナー・説明会、面接選考)

セミナー・説明会参加者数の増減では、例年は「前年並み」が最多となりますが、今回は「前年より少ない」が31%の僅差でトップに。一方、学生に目を向けると、セミナー・説明会の参加社数に関しては、文系は「30社以上」の割合が減少し、「10〜14社」の割合が増えるなど、全体的に減少傾向にあります。理系も、「1〜3社」、「4〜6社」など社数が少ない層が増加し、「15社以上」の層が軒並み減少。文系同様に、理系もセミナー・説明会参加社数は減少傾向にあるようです。

次に学内セミナー参加学校数の増減について見てみると、特に大手企業で「増えた」が「減った」を大きく上回り、大学対策強化の動きが鮮明になっています。また、重視するセミナーの種類としては、中堅企業の6割近く、全体でも約半数の企業が、マスを対象とした「合同企業セミナー」ではなく、「学内企業セミナー」を重視と回答しています。

面接選考開始時期を見てみると、「6月前半」に面接を開始した企業が13%から5%に激減し、代わりに「4月後半」が12%から17%に増加するなど、前年よりも前倒しの傾向が鮮明になりました。また、複数選択で聞いた面接選考時期では、前年よりも「5月前半」までは増加したものの、「5月後半」以降は減少するなど、面接開始だけでなく、選考期間自体も前倒しになっています。

18卒採用動向(内定)

次に内定に関する様々な調査結果をご紹介しましょう。文系学生への内定出し開始時期で最も多かったのは「5月後半」。前年トップだった「6月前半」は5ポイント以上も減少しました。複数選択で聞いた文系の内定出し時期も、前年よりも「5月後半」までは増加し、「6月前半」以降は減少。一方、理系の内定出し開始は「3月前半」「5月前半」が増加し、内定出し時期も「5月前半」までが増加、「6月前半」以降は減少しました。

学生側に目を向けると、まず内定保有率では、文系で「旧帝大」「早慶」が91%、「中堅私大」「その他私大」が88%に。「その他私大」は前年の70%から大幅にアップし、大学間格差が縮小しています。理系は軒並み9割以上の内定率となる中、「中堅私大」のみ8割で苦戦。これは自由応募での大手企業志望者が苦戦したことが要因だと推測されます。また、内定保有率では大学間格差が減少していますが、内定先企業の従業員規模で見てみると、大手企業からの内定取得率では大きな差があるなど、依然として大学間格差が見られました。「その他私大」等が前年よりも大幅に内定保有率を上げたのは、中堅・中小企業でも内定を出した企業が、前年よりも大幅に増えたことが理由です。かつて、4月が面接選考解禁であった時代には、「早慶クラス」と「その他私大」の内定保有率には30ポイント程度の開きがありました。大手企業の選考が落ち着くのを待って、遅れて選考を開始する中堅・中小企業が多かった時代だったからです。

次に内定者の就活継続意向を見てみると、文系の内定取得者の就活継続意向は前年と傾向が変わりませんでしたが、理系は内定取得者の86%が就活終了予定と答えています。

続いて、内定辞退の連絡の有無について聞きました。重複内定保有者のうち、辞退連絡が完了しているのは文系で6割、理系で8割。逆に言えば、残りの学生はまだ辞退を伝えていない企業があるようです。就活継続予定の学生では、今後新たに内定を取得する企業が出てきますので、内定辞退はさらに増えてきます。

再び企業側に目を向けて、6月末時点での内定充足率を調べたところ、内定充足率80%以上の企業は、大企業で54%、中堅企業で31%、中小企業で23%と、規模による差異が鮮明となりました。また、6月末時点での採用施策に関しては、選考活動を継続する企業が多く、既存のエントリー者だけでの選考で足りるとする企業は少なく、全体の50%の企業が「新たなエントリーを受け付ける」と回答しています。

トピックス——印象のよい説明会

ここで少し趣旨を変えて、学生の声をご紹介しましょう。印象のよかった説明会はどこか、文系と理系に分けてランキングを取りました。文系では、1位がみずほフィナンシャルグループ(48人)、2位が日本航空(38人)、同率で損害保険ジャパン日本興亜(38人)。理系では、1位がパナソニック(18人)、2位がライオン(16人)、3位が味の素(15人)という結果です。1位の企業に対する具体的な感想としては、みずほフィナンシャルグループについては、「職種毎にブースが分かれており、テーマパークを回っているようでワクワクしたから」、「佐藤社長が登壇なさって直接お話を聞く機会を得られたから」、「社員の方の実際の体験談を聞くことができて、実際の業務のイメージができた」、「何度も行員の方のお話を聞く機会があり、自分がどんな仕事をするのか、どんな環境でどんな人と働くのかイメージしやすかった」、「さまざまなセミナーを用意してくれ、企業を理解できた」といった声が聞かれ、一方のパナソニックについては、「OGが沢山くる。実質のリクルーター面談になるが技術面談をしっかりと見てもらえ、大いに役に立った」、「先輩社員の方、OBの方のサポートが手厚かった」、「少人数に分かれての質疑応答だったので質問がしやすく、知りたい情報を得られたから」、「細かい事業部ごとに説明者があり、説明を詳しくしてくれるから」といった声が聞かれました。

トピックス——印象のよい面接官

続いて、印象のよかった面接官のいる会社について聞いたところ、文系では、1位が損害保険ジャパン日本興亜(28人)、2位がみずほフィナンシャルグループ(25人)、3位が三菱東京UFJ銀行(23人)。理系では、1位が野村総合研究所(11人)、2位が日立製作所(10人)、同率でパナソニック(10人)という結果です。損害保険ジャパン日本興亜については、「フィードバックをたくさんくださり、その後の面接にも活かせた」、「和やかな雰囲気で、普通の会話のような形で面接を進めてくれたから」、「最後まで話を聞き、引き出してくれ、緊張を解いてくれた」、「圧迫面接がなく、私の話に合わせて質問をしてくれたから。物腰が柔らかく、同じ目線で話を聞いてくださったので話しやすかった」といった声が聞かれ、一方の野村総合研究所については、「今後の学生生活でのアドバイスを受けることができた」、「時間を延長してでもたくさん聞いていただいた」、「私の話した内容に対する質問が上辺のものではなく、本質をついた質問であると感じたため」といった声が聞かれました。

19卒採用動向予測(インターンシップ)

では、19卒の採用動向予測のほうに進んでいきたいと思います。今回、経団連によるインターンシップの扱いが5日間以上の縛りが解かれ、1Dayも認められるようになったため、インターンシップに対する注目度がさらに高まっています。そうしたこともあり、19年卒採用でより重要になると思われる施策について聞いた結果、「インターンシップ」が初めてトップとなりました。また、「学内企業セミナー」や「キャリアセンターとの関係強化」、「理系研究室訪問」などの大学対策も依然上位につけています。実際のところ、19卒採用向けのインターンシップに関しては、「未定」企業がまだ残っているものの、中堅企業で16%、中小企業でも17%が新たに実施すると答えており、この傾向はさらに拡大するでしょう。

次に実施予定のインターンシップタイプについて聞いたところ、「5日間以上」の制約がなくなったことを受け、1Dayインターンシップ実施企業が圧倒的多数となりました。大企業では、1Dayインターンシップ実施企業のうち36%が今年から実施すると答えています。また、インターンシップ実施予定時期に関しては、現時点では「8月」が最多となっているものの、「未定」企業は後半しか実施できないことを考えると、18卒と同様に「2月」に実施する企業が最多となる見込みです。

19卒採用動向予測(面接・内定)

続いて、面接開始時期について見てみましょう。昨年の調査では、面接開始時期は「4月」が26%、「3月」が23%でしたが、今年は「3月」が30%で最多となっており、「4月」は20%に減少しました。大企業でも「3月」が29%で、26%の「4月」を上回っています。面接開始時期を前年と比較した場合、「早くなる」と答えた企業は28%となっており、昨年の調査では22%だったことから、さらに早期化に拍車がかかっているようです。また、内定出し開始時期に関しては、「5月」が24%と最多ではありますが、「4月」までに内定出しを開始する予定の企業も45%あります。内定出し開始時期の前年比較では、「早くなる」と答えた企業が28%ある一方、「遅くなる」と答えた企業はわずか2%のみとなりました。サマーインターンシップによる早期接触者が大幅に増えることを考えると、前倒し傾向はこの程度では済まなくなると予想しています。

本日のまとめ

18卒採用に関しては、売り手市場で、応募者が減少、重複内定が増加し、内定辞退者が増加するでしょう。インターンシップは大幅に増加し、1Dayタイプに関しては、実質的には早期セミナーと変わりません。学生は応募を絞り込む傾向にあり、学生の半数以上が2社以上から内定(学校レベルに関係なく)を得ています。またインターンシップから内定を得る学生が増加。インターンシップ事前選考の不合格者のケアが重要。企業の内定充足率は企業規模で明暗を分けます。

一方、19卒採用の予測に関しては、インターンシップ(特に1Day型)が急増。夏も1Day型が主流になる。採用活動は18卒採用よりさらに早期化。面接、内定出しもさらに前倒し傾向となり、3月の就職ナビオープン以前の刷り込み活動が活発化すると予想されます。また、逆求人型サイトの活用など、マス型から個別型へと転換し、さらにAIを活用した選考元年になるでしょう。

それでは最後にここでアンケートを実施したいと思います。ここだけの話、エントリーシートや面接の合否連絡を、合格者のみに連絡して、不合格者には連絡しないことはありますか?
いわゆる「サイレント」というものですね。お手元にあるボタンを押してください——。


結果を見てみましょう。「はい」が7%、「いいえ」が93%となりました。
今回は非常に誠意のある企業が多いようです。実は学生に聞いた「企業に改善してほしいことは?」というアンケートで、最も多かったのは、
「サイレント通知をやめてほしい」ということでした。今日お集まりいただいた企業様では少なかったですが、世の中的にはサイレント通知の企業がもっと多いのではないでしょうか。
「はい」とお答えになった企業様も7%ほどいらっしゃいましたが、ぜひ来年からは、サイレントではない形で通知していただけたらと思います。
本日はお忙しい中、ご来場いただき誠にありがとうございました。

講演者プロフィール

松岡 仁ProFuture株式会社 事業推進室 室長 HR総研 主席研究員

85年大学卒業。文化放送ブレーンで大手から中小まで幅広い企業の採用コンサルティングを行う。ソフトバンクヒューマンキャピタル、文化放送キャリアパートナーズで転職・就職サイトの企画・運営に携った後、2009年より現職。各種調査の企画・分析を担当し、「東洋経済オンライン」「WEB労政時報」に連載中。

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