株式会社グロービス マネージャー 加藤 剛広 氏
VUCA と呼ばれる変化の激しい時代において、活躍できるのはどんな人材か。また企業は採用時に何を重視し、採用した人材を早期に戦力化するために、どんなスキルや能力を身につけさせればよいのか。テクノロジーを使って社会人の人材育成にイノベーションを起こす株式会社グロービス・加藤剛広氏に、将来のリーダー人材の採用時の見極めと育成について語っていただきました。
今、世の中はVolatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)というVUCAの時代に突入しています。日本は2005年をピークに人口減の時代となり、マーケットの縮小、さらには労働人口の減少が加速。2010年時点で約8, 100万人いる労働人口は、2030年には約6,700万人、2050年には約5,000万人まで減少し、もはや日本国内で採用すること自体が困難な、まさに採用難の時代を迎えるのです。それを表すように求人倍率も上昇の一途を辿っています。新卒採用における有効求人倍率は、18卒で1. 78倍まで高まり、産業別に見ると300人未満のベンチャー企業で6. 2倍、サービス業では11倍を超えてしまっています。そこで考えがちなのが、海外から人材を誘致することでしょう。しかし、日本の国際競争力は決して高い評価を得られていません。2014年のランキングを見ても、日本は21位で、アジアの中でさえ7位となっており、海外の優秀な人材にとって、日本は魅力的な労働市場とは言えなくなってきています。
ではVUCAの時代でも活躍できるのは、どのような人材でしょうか。活躍できる人材を定義する前に、まずは質問 をさせてください。この1 〜 2年の間に、採用の人材要件定義を見直して変えたという会社の方はいらっしゃいます か?本日、私がお伝えしたいのは、「ぜひ変えませんか?」ということ。これだけ変化の激しい時代の中で、同じ要件 で採り続けることは、変わらないということを意思表示しているのと同じだと思います。そして変えるべき年が、まさに来年なのです。
リーダー育成やMBAの教育を多く実施しているグロービスが定義するリーダーのモデルとは、「経営の定石」、「考える力」、「巻き込む力」…この3つを根幹にしながら、その中心 に「志」を持っている方です。しかしこの数年、これだけでは足りないという議論が起こったため、まずはグローバルのほうに視点 を広げました。それが「語学力」、「世界的視野」、「異文化コミュニケーション」の3つです。さらにテクノロジーにも視点を広げ、 「テクノロジーの定石」、「テクノロジーで競争優位を考える」、「テクノロジーを使ったコミュニケーション/リーダーシップ」という 3つの能力を加えました。またもう一つ、新卒社員の早期戦力化を考える上で重要な視点となるのが、ProfessionalとManagementのPM 軸です。それぞれのキャリア(期待)をPM の2軸で整理し考え、どちらの力をどのように身につけてもらうか、育成と業務付与の2つの視点で考えることが求められています。
加藤 剛広氏株式会社グロービス マネージャー
大学院卒業後、メーカーにて携帯通信の研究開発を経て立ち上げ直後のネットベンチャーに参画。経営陣の一人として、事業統括、人事制度構築、新規事業の立ち上げなどに従事。 現在は株式会社グロービスにて、デジタルプラットフォーム事業の統括リーダーとして、デジタルコンテンツやアセスメント等のプロダクト事業や学習環境(プラットフォーム)の構築などの業務を兼務。またグロービス経営大学院の講師として、主にネットビジネス、ベンチャー戦略のコンテンツ開発や講師も務める。(グロービス経営大学院 専任教員/創造ファカルティ所属)