ProFuture代表の寺澤です。
いよいよ経団連の「指針」による面接選考が解禁となりました。解禁前の新聞、テレビ等のマスコミ報道では、「今年も守られない選考スケジュール」「5月に早くも内定率○%」と騒がれますが、かつての「就職協定」と違って、現在の採用スケジュールと称される「指針」は、あくまでも経団連の自主的なルールでしかなく、そもそも経団連傘下の企業以外は守る必要はありません。「守る・守らない」という表現自体が間違っています。多くのマスコミは、「就職協定」と「指針」の根本的な違いを理解していないようですね。
さて、今回はHR総研が6月3日(金)~7日(火)に緊急アンケートとして実施した、「6月上旬現在の2017年新卒採用状況調査」の結果から読み取れる、企業の最新情報をいち早く紹介したいと思います。
いよいよ経団連の「指針」による面接選考が解禁となりました。解禁前の新聞、テレビ等のマスコミ報道では、「今年も守られない選考スケジュール」「5月に早くも内定率○%」と騒がれますが、かつての「就職協定」と違って、現在の採用スケジュールと称される「指針」は、あくまでも経団連の自主的なルールでしかなく、そもそも経団連傘下の企業以外は守る必要はありません。「守る・守らない」という表現自体が間違っています。多くのマスコミは、「就職協定」と「指針」の根本的な違いを理解していないようですね。
さて、今回はHR総研が6月3日(金)~7日(火)に緊急アンケートとして実施した、「6月上旬現在の2017年新卒採用状況調査」の結果から読み取れる、企業の最新情報をいち早く紹介したいと思います。
大手は「6月前半」、中小は「7月以降」に内定出し開始が最多
採用広報が解禁された3月時点での企業の採用活動の「予定」と、実際に採用活動が進む中での「現実」には、幾つかの変化が見られます。「内定(内々定)出し」のタイミングについて比べてみると、大企業では予定よりも5月・6月に集中し、中堅企業は予定よりも前倒しに、中小企業では予定よりも後ろ倒しになっているようです[図表1]。
大企業では「6月」から内定を出し始めるとする企業が48%と半数近くに及び、「5月」とする企業も19%から28%へと増加し、両方を合わせると8割近くにもなります。大手企業の内定出しタイミングは極めて集中した時期に行われたことになります。中堅企業では、「4月以前」が29%→35%、「5月」が25%→37%と増え、逆に「6月」は35%→14%へと減少しています。3月末時点では、大企業と同様に「6月」が最多で35%もありましたが、結果的には14%にとどまりました。「7月以降」は、12%→14%とほぼ横ばいです。当初は大企業に合わせるかのように多かった「6月」ですが、「4月以前」「5月」へと前倒しされています。
大きく変わったのは中小企業です。中小企業では、「5月」「6月」の割合はほとんど変化がありませんが、「4月以前」が37%→23%へ減少したのに対して、逆に「7月以降」は20%から32%へと大きく増えています。この変化は、「4月以前」を想定していた企業が「7月以降」になったわけではなく、「4月以前」→「5月」、「5月」→「6月」、「6月」→「7月以降」へとそれぞれが少しずつ後ろ倒しになったものと推測されます。それも意識的に後ろ倒しにしたのではなく、プレエントリーの減少、4月以降の合同企業セミナーへの参加学生の減少、自社説明会・セミナーへの参加者の減少等により、当初計画したような採用活動がかなわず、結果として後ろ倒しにせざるを得なかった企業が多いのでないでしょうか。
もちろん、大企業(人気企業)の選考・内定出しが6月には落ち着くのを見越して、それ以降に内定出しをしたほうが、内定受諾率は高くなる(=無駄の少ない採用活動ができる)と考えた企業もあるでしょう。昨年はそうしたくても、大企業の選考が落ち着くのが8月末となると、それからの選考では時間がなさすぎると考え、仕方なくそれ以前に選考活動を展開した企業が少なくありませんでした。ただ、結果はご存知のように、後から大企業に内定者を奪われることになってしまったのですが。
大きく変わったのは中小企業です。中小企業では、「5月」「6月」の割合はほとんど変化がありませんが、「4月以前」が37%→23%へ減少したのに対して、逆に「7月以降」は20%から32%へと大きく増えています。この変化は、「4月以前」を想定していた企業が「7月以降」になったわけではなく、「4月以前」→「5月」、「5月」→「6月」、「6月」→「7月以降」へとそれぞれが少しずつ後ろ倒しになったものと推測されます。それも意識的に後ろ倒しにしたのではなく、プレエントリーの減少、4月以降の合同企業セミナーへの参加学生の減少、自社説明会・セミナーへの参加者の減少等により、当初計画したような採用活動がかなわず、結果として後ろ倒しにせざるを得なかった企業が多いのでないでしょうか。
もちろん、大企業(人気企業)の選考・内定出しが6月には落ち着くのを見越して、それ以降に内定出しをしたほうが、内定受諾率は高くなる(=無駄の少ない採用活動ができる)と考えた企業もあるでしょう。昨年はそうしたくても、大企業の選考が落ち着くのが8月末となると、それからの選考では時間がなさすぎると考え、仕方なくそれ以前に選考活動を展開した企業が少なくありませんでした。ただ、結果はご存知のように、後から大企業に内定者を奪われることになってしまったのですが。
6月に入って一気に選考が進む大企業
HR総研では、今回の緊急調査で現時点(6月上旬現在)での「内定充足率」についても聞いてみました。内定充足率とは、採用計画数に対する内定者数の割合のことです。採用計画数が100人の企業で、内定を出した人数が70人いれば70%となります。厳密にいえば、「内定受諾した人数」を分子とすべきでしょうが、内定を出したばかりの企業も多いことから、ここでは内定受諾の有無は問わず、あくまでも内定を出した人数を前提としています。全体では、まだ内定出しを「1人も行っていない」企業が32%、「50%以下」が38%、つまり内定充足率が5割以下の企業が7割です[図表2]。「51~90%」が17%、すでに内定充足率が「91%以上」の企業が14%もあります。
企業規模別に見ると、「0%(まだ内定出しをしていない)」企業は、中小企業では42%もあるのに対して、中堅企業では27%、大企業に至っては17%にとどまります。「5月」までに内定出しを始めた大企業は5割未満だったにもかかわらずです。一方、大企業では内定充足率が「51%以上」の企業が34%もあります。6月上旬のたった数日で、大企業ではいかに選考がスピーディーに進んでいるかが分かります。大企業の多くは、表向きは6月1日を選考開始日としつつも、先月のこの項で取り上げたように、5月までは「面接」とは呼ばず、「面談」「質問会」「ジョブマッチング」「模擬面接」といった呼び方でカモフラージュしての選考を実施していることも多いのです。つまり、実質的な面接選考は行っているが、「正式な面接」は6月1日からというわけです。
大手人気企業の場合、採用で競合する他社に負けないようにするために、6月初旬に一気に内定・内々定を出し、優秀学生の抑え込みにかかります。数日で大量の内定・内々定を出し切り、選考を終了させるのは一見乱暴なように見えますが、それまでに内定・内々定を出す準備を十分に行っているからこそできることなのです。
大手人気企業の場合、採用で競合する他社に負けないようにするために、6月初旬に一気に内定・内々定を出し、優秀学生の抑え込みにかかります。数日で大量の内定・内々定を出し切り、選考を終了させるのは一見乱暴なように見えますが、それまでに内定・内々定を出す準備を十分に行っているからこそできることなのです。
まだまだ重要視されていない学業成績
今年の経団連の「採用選考に関する指針」の手引きには、「3.選考活動について」の項の中に、「(3)選考活動における留意点」として、「また、大学等の履修履歴(成績証明書等)について一層の活用を検討することが望ましい」との一文が新たに追加されています。「就職活動においては学業成績が重視される」との風潮を作り上げることで、学生をより学業に向かわせようとの趣旨で、文部科学省や大学からの意向を反映したものといえます。では果たして、企業側は採用選考活動において、学生の成績をどの程度重視しているものでしょうか。二つの聞き方をしてみました。一つは、選考方法として「成績証明書」を含めて10個の選択肢を用意し、複数選択で回答してもらうもの[図表3]。そしてもう一つは、ストレートに「大学での成績を選考でどの程度重視するか」を択一で回答してもらうもの[図表4]。
前者の結果を見ると、全体では34%と、3分の1の企業が選考方法として「成績証明書」を選択しましたが、経団連傘下の企業が多い大企業では半分の17%にとどまります。中堅企業では41%、中小企業では36%の企業が「成績証明書」を選択しており、大企業より中堅・中小企業で重視されていることが分かります。大企業では、「成績証明書」「卒業見込み証明書」「健康診断書」の提出タイミングが、正式応募時ではなく、最終面接前や内定後のことが少なくありません。これでは「成績証明書」を選考の材料にするのは土台無理な話です。
成績そのものの重視度合いを尋ねた後者の結果でも、大企業で「成績による明確な選考基準がある」とする企業はわずか3%しかなく、「成績は加味する程度」41%、「成績は参考程度」21%、そして「成績はほとんど関係ない」とする企業が34%で、他の企業規模(中堅企業:29%、中小企業:19%)よりも多くなっています。
大学による評点の違いはもちろんのこと、同一大学内においても担当教授により評点の違いまであることを考えると、選考の際の客観的な指標として「成績証明書」を用いることは妥当性を欠くと判断されても仕方ありません。[図表3]にあるように、「成績証明書」よりも「学力検査」の活用率のほうが高いことは納得できます。「成績証明書」のより一層の活用に向けては、まだまだ課題が山積みのようです。
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