早いもので経団連の指針による面接選考解禁まで1カ月を切りました。採用広報解禁について書いたのはつい先日のことのように思われ、あらためて今回のスケジュールの短期化を実感しています。今回は、前回に引き続き、HR総研が3月末に企業の採用担当者を対象に実施した「2017年新卒採用動向調査」の結果と併せて、同時期に楽天『みんなの就職活動日記』会員の就活生を対象に実施した「2017年卒就職活動動向調査」の結果を見てみたいと思います。
3割以上の企業でプレエントリーが前年よりも減少
3月末時点でのプレエントリー数の状況を聞いてみたところ、全体では半数の企業が「前年並み」と回答している一方、「前年よりも多い」とする企業は16%なのに対して、「前年よりも少ない」とする企業はその倍の33%にも及びます[図表1]。「前年よりも少ない」とする企業の半数近くが「前年よりも3割以上少ない」と回答しています。プレエントリーの段階ですでに苦戦している企業の様子が浮かんできます。一方、「前年よりも多い」とする企業の内訳を見ると、そのうち4分の1の企業では「前年よりも2倍以上多い」と回答しています。8割以上の大企業がエントリーシートを活用
エントリーシートの導入状況を見ると、全体では「webエントリーシート」32%、「紙エントリーシート」28%で、「webエントリーシート」の利用企業のほうが多くなっています[図表3]。リクルートキャリアが提供する「Open ES」の利用企業が年々増えていることも、「webエントリーシート」の増加につながっています。かつては、学生が書く「文字」を見るために、わざわざ手間のかかる「紙エントリーシート」を利用する企業のほうが多くありましたが、それよりも効率を重視する企業が増えてきたようですね。エントリーシートによる書類選考の有無では、エントリーシート導入企業の53%が「選考あり」としています。「紙エントリーシート」利用企業では、「選考あり」と「選考なし」は同数となっていますが、「webエントリーシート」利用企業では「選考あり」の企業のほうが多くなっています。
6月の選考開始を順守する企業は2割
次に、面接選考をいつから開始するかを聞いたデータが [図表5] です。2月までに面接を開始している企業が1割以上あるのをはじめ、6月の面接選考解禁を待たずして面接選考を開始する企業が79%にも達します。中でも多いのが、「4月」に面接を開始する企業の28%、次いで「3月」が21%、「5月」が19%で続きます。面接選考解禁が8月だった昨年よりも、当然のごとく前倒しとなっています。企業の採用意欲は依然として高く、優秀人材の採用のための危機感は強く、早期化に拍車がかかっています。「面接」とは言わずに選考する大企業
大企業では、面接選考開始は「6月」とする企業が4分の1ありましたが、あくまでも「面接」開始であり、実質的な選考はすでに始まっている企業が少なくありません。それはどういうことでしょうか? 大企業では、面接選考解禁日以前の選考には「面接」という表現を使用しないことが多いからです。学生の中には「選考」だと知らずに臨んでいるものもいるでしょう。大企業が「面接」の代わりに使用している表現を挙げてみると、多くの企業で使用されているのは、「面談」「模擬面接」「ジョブマッチング」「質問会」ですが、これ以外にも、
・キャリアデザイン面談 ・グループディスカッション ・プレミアムセミナー
・マッチング面談 ・リクルーター面談 ・ワールドカフェ ・学生意見交換会
・学校推薦相談会 ・技術討論会 ・交流会 ・個別説明会 ・座談会 ・社員懇談会
・就職相談会 ・討論会 ・特別面談
――など、さまざまな表現が使用されています。中には「お話会」という例もあります。企業がネーミングで苦労していることがうかがえますね。
私が面白いと感じるのはこれらの表現だけでなく、大企業はこれらの表現を使用することで、実質的な面接行為をコソコソと実施するのではなく、「面談会場はこちら」と本社受付に堂々と表示してオープンに実施していることです。一部のメガベンチャーのように、「指針を順守しません。4月から選考開始します」と宣言して、正々堂々と「面接」を実施すればいいのにと思わずにはいられませんが、経団連の手前、そう簡単なことではないのでしょうね。
過半数の企業が5月までに内々定出し
内々定出しをいつから開始するのかを聞いたところ、全体でも最も多いのは「6月」の30%で、次いで「5月」22%、「4月」20%と続きます[図表7]。「3月」は4%と少ないですが、「2月」以前に内々定を出し始めた企業を合計すると9%と1割近くになります。「2015年10月以前」とする企業が5%もあるのには驚きます。インターンシップからそのまま選考につなげてしまう例だと思われます。面接選考解禁の6月前に内々定を出し始める企業の合計は55%と過半数となります。プレエントリー数が減少している文系学生
ここからは、学生側の調査結果を見ていきましょう。まずは文系のプレエントリー社数の状況です[図表9]。グラフは、昨年のデータと比べられるようにしてあります。最多区分は「21~40社」であることは昨年と変わりありませんが、その割合は昨年の26%から32%へと6ポイント増えています。このほか、「41~60社」が昨年19%→23%、「1~20社」が同23%→25%へと、比較的少ない社数区分の割合がいずれも増えている一方、「61~80社」は同15%→8%とほぼ半減しているのをはじめ、「81~100社」「101社以上」の区分もともに減少しています。理系は文系と異なり、昨年データとの差異は小さくなっています[図表10]。最多区分は文系よりも少ない「1~20社」となっており、昨年の43%から46%へと3ポイント増えています。「0社」とする学生も同1%から3%へと微増しており、その分「21社」以上の区分の割合が減少しています。理系においてもプレエントリー社数はやや減少傾向にあるようですが、文系ほどの差はないようです。
「マイナビ」と「リクナビ」の競争激化
就職ナビの活用状況についても、文系・理系別に確認しておきます。まずは文系学生です[図表11]。活用している就職ナビ(逆求人型含む)を複数選択で回答してもらったところ、「マイナビ」95%、「リクナビ」93%と、今年も2強の状態が続いています。また、「JOBRASS」(20%)、「Offer Box」(12%)といった逆求人型サイトが、「ブンナビ!」など一部の就職ナビ以上に活用されている点も注目したいところです。これまでの就職ナビとは別の就職活動ツールとして、逆求人型サイトは今後ますます伸びていくものと思われます。
次に「最も活用している就職ナビ」を単一選択してもらったデータが[図表12]です。2強となっている「マイナビ」と「リクナビ」のパワーバランスの変遷を確認できるように、過去4年間のデータを一覧にしてみました。2015卒採用までは「リクナビ」が「マイナビ」をリードしていましたが、昨年初めて「マイナビ」が「リクナビ」を逆転しています。今年は「リクナビ」が情報掲載社数を大きく伸ばしたこともあり、昨年17ポイントもあった「マイナビ」とのポイント差はわずか4ポイントにまで詰め寄っています。ちなみに、2016年5月6日現在の情報掲載社数は、「リクナビ」2万3312社、「マイナビ」1万8013社と、「リクナビ」のほうが5000社以上も多くなっています。
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