1月20日に東京大学が秋入学への全面移行を検討すると発表しました。反響が大きく、マスコミで何度も報道されましたので、皆さんもよくご存じのことと思います。HRプロで企業側に調査したところ、「良いことだと思う」と回答したところが38%と最も多く、「これまでどおりの春入学で良いと思う」の12%を大きく引き離しました。特に1000人以上の大手企業では、6割以上の企業が秋入学を評価しており、日本の大学の国際化は待ったなしという認識が強いようです。
 一方、秋入学を全大学の統一ルールにすべきかどうかについては意見が分かれます。「全大学が統一ルールで運用すべき」が49%、「個々の大学の判断によって検討すればよい」が39%となっています。1000人以上の大手企業では63%が統一すべきと答えており、採用や入社時の対応を考えると、時期がバラバラではコスト・労力的負荷が高まると懸念しているようです。
秋入学が決まったとしても、初めて卒業生が出るのが10年くらい先なので、まだまだ先の話ですが、グローバル化の中での産学の対応が問われる重要な問題であり、この際、議論をしつくしたいものです。

 1月20日に東京大学が秋入学への全面移行を検討すると発表しました。反響が大きく、マスコミで何度も報道されましたので、皆さんもよくご存じのことと思います。HRプロで企業側に調査したところ、「良いことだと思う」と回答したところが38%と最も多く、「これまでどおりの春入学で良いと思う」の12%を大きく引き離しました。特に1000人以上の大手企業では、6割以上の企業が秋入学を評価しており、日本の大学の国際化は待ったなしという認識が強いようです。
 一方、秋入学を全大学の統一ルールにすべきかどうかについては意見が分かれます。「全大学が統一ルールで運用すべき」が49%、「個々の大学の判断によって検討すればよい」が39%となっています。1000人以上の大手企業では63%が統一すべきと答えており、採用や入社時の対応を考えると、時期がバラバラではコスト・労力的負荷が高まると懸念しているようです。
 秋入学が決まったとしても、初めて卒業生が出るのが10年くらい先なので、まだまだ先の話ですが、グローバル化の中での産学の対応が問われる重要な問題であり、この際、議論をしつくしたいものです。

12月スタートへの変更により「母集団不足」が顕在化

さて前回は、①2013年度の新卒採用数が回復傾向にある(特に技術系採用)、②3月までに選考を開始する企業が約半数ある、③短期集中化の影響で苦戦を予想する企業が多い、④そのような中で大学のターゲティング(特定大学対象に採用活動を強化すること)が増えている――といったことを述べました。
 さて、このような動きの中で、3~5月の動きはどのようになっていくのでしょうか。採用担当者と学生のコメントを見ながら、全体的な予測と、その対策を考えてみたいと思います。

年明けからの具体的な採用課題を企業に聞いたところ、「ターゲット層の選考への誘導方法」が44%で1位ですが、昨年(12年度採用)と比べると11ポイントも下がっています[図表1]。逆に大きく上がっているのが、「ターゲットとしている大学の母集団が不足している」が31%で3位となり、昨年より15ポイントも上がっています。10月から12月へと採用広報のスタートが遅れたことで、母集団そのものが不足している企業が大幅に増えていることが分かります。
第11回 採用担当者が見通す今年の選考ピーク時の動き(2012年3月)
最近、企業の採用担当者からよく聞くのは、「12月後半以降、最初のプレエントリーの勢いは落ちてきて、今現在、昨年の半分以下の母集団で、非常に不安」といった声です。一部の超大手企業以外は、同じような状況の企業が多いようです。

 一方、学生に年明けから何をしたいかを聞いたところ、「面接対策をしたい」「自己分析をさらに深めたい」「エントリーシートを提出したい」「試験対策をしたい」などが60%以上で並びます[図表2]。近づいてくる選考試験に向けて対策をとっている学生が多いことは間違いありません。学生の面接対策講座は大流行のようで、有料で数万円するものもざらにあるようです。それだけ不安心理が強いのでしょう。
 次に「社員と直接話をしたい」「OB/OG訪問をしたい」が続きます。学生も社員とのダイレクトなコミュニケーションを求めているので、会社説明会などで社員と会えることを前面に打ち出すことが効果的です。
第11回 採用担当者が見通す今年の選考ピーク時の動き(2012年3月)

選考開始を後ろ倒しする企業は少数派

前回も述べましたが、企業に選考面接開始時期を聞いたところ、4月以前に選考を開始する企業が約半数あり、昨年同時期の予測より数ポイントしか下がっていません[図表3]。広報開始時期が遅れた分、選考開始時期をずらそうとする企業はわずかしかないようです。
 学生の方も「なるべく早く面接を受けたい」が43%あります。先日(2月上旬)学生向けの講演で、現在選考試験を受けている人に挙手してもらったところ、半分くらいが手を挙げました。意識の高い学生が多いセミナーだったからと思いますが、動きの早い学生はかなり進行しているようでした。一方で、1月下旬に訪問した地方の国立大学では、選考どころか何の準備もできていない学生が一定数おり、この差は大きいと感じました。
第11回 採用担当者が見通す今年の選考ピーク時の動き(2012年3月)

採用担当者が見通す今年の選考ピーク時の動き

では、3~5月の選考ピーク時には、どのような動きになると企業の採用担当者は考えているのでしょうか。
 まずは、1000人以上の大手企業の代表的なコメントを見ていきましょう。
・ 昨年より応募者が減るのは確実。その代わり、5月以降の応募者が増えると予測している(電子)
・ 短期間での集中した採用選考期間となるため、学生としては複数の企業を受ける機会が少なく、学生が安全志向に走って(必ず採用してくれると考える)企業への応募が増えそうに思う(医薬品)
・ 選考日が重なった結果、選考当日(もしくは直前)の「選考辞退」が増加する(通信)
・ 前年のような外部要因(震災)がない中でも、選考は長期化するのではないか(化学)
・ 内定辞退が多いので、内定の出し方に苦慮していると思います(機械)
・ 認知度の低いBtoBの企業は学生の集客に難航し、採用スケジュールの長期化が予想される(専門商社)
 1000名以上の企業と言えども、かなり厳しい予想をしていることが分かります。応募が減る、短期集中化でバッティングする、選考辞退者が増える、採用しきれず長期化する――というのが平均的な予測です。
 次に、300~1000人規模の企業を見ていきましょう。
・ 理解不足による学生の質の低下。大手志向・人気業界への集中(その他サービス)
・ 他社とのバッティングが多そうである(ため、時期を遅らせる) (百貨店・ストア・専門店)
・ われわれ中小は大手の動向に振り回され、いつまでたっても内定者からの受諾回答を得られない状態が続くと思われる(鉄鋼・金属製品・非鉄金属)
・ 大手企業の選考スケジュールが例年より遅くなる可能性あり。中堅企業としては選考辞退者が増える可能性あり(化学)
・ 大手に集中するので予約できない学生が多数発生。仕方なく、志望していない中小へ。しかし、志望も研究も足りないため面接で残れず、さらに苦戦。当社目線でも、なかなかよい学生(志望度含む)と出会えず、本番は5月後半からになると予想(情報処理・ソフトウェア)
 大手企業でも長期化を予測する企業が多く、大手企業が終わらないと意思決定できない学生が多いため、中堅企業は一層の長期化を予測しています。ピークの4月を避けて選考を開始する企業が、本番になるとさらに増えることが予測されます。
 最後に、300人以下の企業を見てみます。
・ 企業研究ができていない状態で選考に入っているので内定辞退が増加する(百貨店・ストア・専門店)
・ 学生が回りきらないので必然的に長期化する。中小企業の採用がさらに難しくなる(300名以下、その他サービス)
・ 併願応募してくる学生の本気度をいかに正確に把握するかを見極めることが大事で、場合によっては、内定出しのタイミングをずらさなければならないかもしれない(専門商社)
・ 来年は、極端な二極化が起こるのではないかと思われる。2カ月遅れによる焦りから集中した前半と、落ち着きを取り戻す後半(商品取引)
・ 特に変わらないのではないか。あるいは意外と静かかもしれない。次のヤマが5~6月にきそう(精密機器)
・ あまり変化はないのではないかと考えている(人材サービス)
・ 他業種とバッティングするのかなとも思うが、そこはあたふたする問題ではないと思っています(マスコミ)
 300名以下の中小企業では、中堅企業と同じようなコメントが一定数見られるのですが、これまでとそれほど変わらないという意見も少なからず見られます。大手企業の長期化の影響をもろに受けるのは、そのすぐ下の規模の中堅企業で、かなり規模が小さい中小企業にとってみれば直接的な影響は大きくないかもしれません。言い方を変えれば、これまでも大変だったので、その大変さは変わらないということでしょう。
 全体的に見れば、短期集中化で志望動機の希薄な学生と対峙する前半戦が、特にこれまでにない状況を生んでいます。優秀層を採り合う大手企業の多くはこの時期を避けるわけにはいかず、必然的に大学ターゲットを絞り、コミュニケーション密度を高める作戦をとらざるを得ないでしょう。
 一方で、中小企業はこれまでどおりその時期を避け、大手企業が落ち着いた時期に選考を開始する企業が多くなるでしょう。もちろん4月以前に開始して学生をグリップする自信のある企業は先に始めています。企業規模だけでなく採用グリップ力のあるなしで、適切な採用時期は当然変わってきます。
 一番難しいのは中堅企業かもしれません。学生の中でも早くから大手企業に見切りをつけ中堅企業に目を移す層が今年は増えそうですから、どのタイミングで学生に切り込んでいくかで戦略は大きく変わるでしょう。タイミングが早すぎると、多くの学生の内定辞退を招きます。タイミングが遅れると、ライバル企業層にターゲット学生をさらわれてしまいます。大手企業の動向、学生の心理変化をつぶさに見ながら、臨機応変に打ち手をとるようにしておかなければなりません。
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