今どきの若者といえば,もう何年も前から,早期に退職してしまう者が一定割合で出る「七五三現象」が指摘されている。この現象は1990年代の後半から見られ,景気の波との相関関係はほとんどない。今後もしばらくは続くことだろう。こうした離職者を出さないために,会社はどこに留意すればよいか。
先輩たちがイキイキと 働いている職場か?
入社後1 ,2 年で離職した若者にヒアリングしたことがある。複数の者から,「その会社での将来ビジョンが描けなかった」という表現を耳にした。“25歳,30歳と年数を重ねていったとき,自分の働いている姿がイメージできなかった”というのだ。これはキャリアプランニングの問題ではなく「働いている姿」の問題である。離職者たちに大きな影響を及ぼしたのは,日々目にする上司や先輩のうしろ姿ではなかったか。「部下は上司のうしろ姿に学ぶ」という。上司が下す指示命令や訓話などより,働いているうしろ姿からさまざまな教訓を読み取るという意味だろう。
インタビューの一部を紹介する。
「5 年,6 年と勤めたらどうなるか。その見本が周りにいっぱいいるわけです。それがもう,みんな疲れている。新人と大して変わらない仕事を毎晩遅くまでやっているわけです,つまらなそうに。見ていてゾッとしました」
「やっぱり職場環境って大事じゃないですか。元気な人がいるな,こういう人になりたいなって目標があれば,それに向かってがんばれるし,実際に成長するのも早いと思います」
目標にできるような元気な人がいないということが,元気に働いている自分の姿が見えない,ということに重なる。
皮相な話と笑ってはいけない。見かけは想像以上に大切なのだ。それが事柄の本質を表していることがよくあるからだ。見るからに元気そうな職場,見るからにやりがいがありそうな仕事。それは,実に単純である。働いている人が元気そうで,イキイキしているということだ。そういう職場にいれば自分もよい刺激が受けられる,と若者は感じる。
3年先輩の人たちの働きぶりを見ていれば, 3年先の自分の姿がおぼろげに見える。10年先輩の働きぶりを見ていれば,自分がこの先どう成長していくか,成長していかなければならないかが察せられる。若者が口にする将来ビジョンとは,そういうものだ。重要なのは,上司や先輩がイキイキと働いているかどうかなのである。