また、正式内定開始は従来の10月1日から変更されませんので、選考期間がこれまでの6カ月間から2カ月間に大きく短縮されることになります。中堅・中小企業の多くは、大手企業の採用活動が落ち着き始めてから採用選考を本格化させるので、10月1日は内定開始日ではなく、選考開始日になる企業も少なくないでしょう。
HRプロでは、政府提言の採用スケジュールの後ろ倒しについて、3月に採用担当者を対象とした緊急アンケートを実施し、その結果については4月の本連載でご報告したとおりです。その後、スケジュール変更の対象は2016年卒からとなり、スケジュールの後ろ倒しがいよいよ現実味を帯びてきた4月末に、再度、採用担当者向けにアンケート調査を実施しました。その中で、新たに聞いたことが二つあります。一つは、「3月の解禁日前に何をするか」、そしてもう一つは、「8月選考開始に向けてどう動くか」です。
■早期施策は、「インターンシップ」と「キャリア講座」
採用広報解禁日が現在よりも4カ月遅い3年生の3月となった場合、企業はそれまで何もせずにいられるものでしょうか。「3月までは一切採用広報はしない」と回答した企業は全体の30%にとどまり、「インターンシップなどでの学生との接触機会を増やす」44%、「大学のキャリア講座等への講師派遣」33%、「その他」が14%となりました(複数回答)[図表1] 。「その他」の内容としては、「オンラインセミナーなど採用ホームページの充実」「Facebook採用ページの活用」「キャリアセンターとの関係強化」「研究室訪問」などが挙がっています。もう一つのキーワードである「キャリア講座」とは何でしょうか。それは、1年生から3年生を対象とするキャリア教育の一環として、「業界研究」「職種研究」等をテーマとして開催されるキャリア支援講座のことです。対象学年向けの学内企業セミナーの開催は採用広報解禁日以降という制約を受けるのに対して、キャリア支援講座は、採用・就職活動とは異なるとの理由から開催時期に特段の制約がありません。解禁日前であろうが開催が可能なわけです。
この手のキャリア支援講座は多くの大学で開講されていますが、その講師はさまざまです。学内の教授・職員が務めることが基本ですが、就職情報会社等の採用関連サービスを提供している会社の担当者が務めることや、各業界の企業人(人事担当者、OB/OG等)が務めることなどもあります。受講後の学生に聞くと、評価が高いのは、やはりリアルな事例や裏話などの話も聞くことができる企業人による講座です。ただ、これまで企業側からすると、聴講した学生の個人情報を入手できるわけでもなく、また自社のPRができるわけでもなく、講座への講師派遣協力はどちらかというとボランティア的な受け止められ方が強いものでした。しかし、採用スケジュールの後ろ倒しを考えた場合、早期に“合法的に”学生に対して業界認知、社名認知を図る絶好の機会であると見直されてきたわけです。
「業界研究」の場合、主要業界から1~2社の企業に大学から協力要請をする場合が多いようですが、中には同一業界で3社ほどの企業から打診があれば、その業界研究講座を開講するという大学もあります。キャリア支援講座への講師協力をしたいという場合には、大学にぜひご相談してみてください。
■8月選考開始を守る企業は2割程度?
選考期間が現在の6カ月から2カ月へ短縮化される中、企業は8月をどう迎えることになるのでしょうか。「8月選考開始に向けてどう動くか」を聞いたところ、「8月以前に選考は一切しない」と回答した企業は22%にとどまり、「8月以前に選考を実施する」34%、「8月以前に予備選考を実施する」33%、「リクルーターを強化する」18%、「その他」9%という結果になりました(複数回答可)[図表2] 。ちなみに、「8月以前に選考は一切しない」とする企業の割合は、大企業から中小企業に至るまで、どの企業群でも22~23%で差はほとんど見られませんでした。