~「良いチーム創り」VS「高業績を上げる」~の解
「エンゲージメント」に関するグローバルな大規模調査などで有名なADPリサーチ・インスティチュートによると、そもそも高業績チームとそうでないチームの比較調査を行ったところ、低・中業績チームに比べて高業績チームでは際立った「8つのエンゲージメント項目」が発見されたといいます。(※この「8つのエンゲージメント項目」については次回ご紹介してみたいと思います)その8つを括って大別してみますと、高業績チームでは
(1)チームまたは会社として使命や価値観を共有できていること
(2)私個人に期待されていること、強みの発揮機会、成長機会、承認機会があること
の2つを満たしていることが分かります。
ここまでで早速、今回の疑問である【「高業績の追求」と「良いチーム創り」は両立し得るのか?】についての、明確な回答が出ました。そう、この2つは二択ではなく、両立し得る。というよりも、「良いチーム創り」こそが「高業績の追求」に直結するのです。この点は、昨今のような戦々恐々としがちな職場環境において、上司の皆さんにはしっかり再確認、再認識頂ければと思うところです。
厳しい事業状況、商況となると、どうしても上司はピリピリしてきますし、目先の数字の達成状況にばかり気持ちがいきがちです。すると「おい、何とかしろ」、「のんびりしている場合じゃない」、「必死でやっているのか」と、追い込みモードに入ってしまうこともあるでしょう。それが不要ということではありませんが、その状態では、そもそも事業や商品・サービスの意味・意義・価値についてしっかり認識し、提供に動くという、業績作りの土台の部分をないがしろになってしまうことも考えられます。その結果、逆に足場がおぼつかない行動に振ってしまったり、メンバー個々人のやりがいやテーマ、成長などに基づくコミットメントを毀損するような行動管理に陥ってしまったりといったケースが非常に多いと思います。
こうした上司のマネジメントは、業績をテコ入れするどころか、むしろさらに悪化させる原因となっているのです。
最高のチームリーダーの「3つの仕事」
最高のチームリーダーをその他の凡庸なチームリーダーから際立たせているものは、メンバーが持つ先述の“2種類の欲求”を満たすことができる能力だということが、ADPリサーチ・インスティチュートなどの20年以上の研究から分かっています。これに基づいてさらに具体的に整理すると、チームリーダーの皆さんには、以下の「3つの仕事」があると言えます。
●チームメンバーが会社の目的と未来を自分のものと感じられるように手助けすること
●チームメンバーが集団として互いを理解し合い、支え合えるよう図ること
●チームメンバーが、「自分は期待され、一人の人間として認められている」と感じながら、「どうすれば今後ベストな仕事ができるか」を理解できるよう手助けすること
いかがでしょう? 経営幹部・上司である皆さんご自身が、自らも社長などご自身の上司に求めたいものだと思います。もちろん、上司の皆さんご自身もこれらを満たす働き方をしていることが非常に重要で、それと同じセットアップを自チームに組み込むことこそ、タフな状況を乗り越え高業績を上げ続ける要諦なのです。
先述のとおり次回にご紹介する予定ですが、ここで高業績チームのメンバーが持つエンゲージメント8項目をざっと共有しておきましょう。
「私は、会社が掲げる使命に対して心から貢献したいと考えている」
「仕事上で、自分に期待されていることを明確に理解している」
【卓越性の発揮機会と支援】
「所属チームのメンバーと価値観が共通している」
「仕事で毎日、強みを発揮するチャンスがある」
【チームとしての一体感】
「チームメイトが私をサポートしてくれる」
「優れた仕事をすれば、認められることがわかっている」
【未来を切り拓く】
「会社の未来は明るいと強く信じている」
「仕事では常に、成長が求められている」
これらを可能な限り満たすべく、「3つの仕事」に取り組みましょう!
“部下たちの「自分自身」、「チーム」、「会社」に対する意味・意義をしっかり持たせてあげることでこそ、業績は上がるのだ。良いチームと高業績は対立するものではなく両立するものだ。それ以上に密接に相関しているのだ”
こうしたことを常に携え、日々の事業、業務に当たる経営幹部の皆さんが、人的資本主義時代に求められる上司だと言えるでしょう。
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