ある人材会社との連携により全国6カ所で大学就職部・キャリアセンターの担当者に最近の新卒採用に関する講演を行ってきました。私にとっては、講演の後の交流会で参加された皆さんのお話を聞くことが大変勉強になりました。
地方によって、大学の置かれている環境は大きく異なりますが、多くの場合、就職状況は昨年より厳しいようです。2カ月遅れの採用広報開始の影響により、ただでさえ就職意識が高まりにくい地方では学生の出遅れ感が強く、就職支援担当者は懸命にサポートをされているとのことです。
地方によって、大学の置かれている環境は大きく異なりますが、多くの場合、就職状況は昨年より厳しいようです。2カ月遅れの採用広報開始の影響により、ただでさえ就職意識が高まりにくい地方では学生の出遅れ感が強く、就職支援担当者は懸命にサポートをされているとのことです。
また、これは地方に限りませんが、発達障害やうつ症状の学生が最近増えており、その対処にも多くの方が頭を悩ませているようです。大規模大学であれば専門の担当者を置けるのでしょうが、中小規模だと置けないケースも多く、外部の適切なサポートが必要だと感じました。
私などは、データ分析を基に「今の日本の大学の就職支援は変わらなければならない」と偉そうに言っていますが、こうして現場で就職支援をされている方の真摯(しんし)な活動があるからこそ変革が可能になると信じています。
さて、今回のテーマは、そのキャリアセンターを相手にする「学校対策」です。私たちの調査では、新卒採用においてターゲット大学を設定する企業はここ数年で増え続けており、すでに5割近い数字になっています[図表1]。また、ターゲット大学を設定している企業は、年々施策を強化しています[図表2]。前回のデータで就職ナビへの依存度が下がっていると書きましたが、それに呼応する動きと言えます。
私などは、データ分析を基に「今の日本の大学の就職支援は変わらなければならない」と偉そうに言っていますが、こうして現場で就職支援をされている方の真摯(しんし)な活動があるからこそ変革が可能になると信じています。
さて、今回のテーマは、そのキャリアセンターを相手にする「学校対策」です。私たちの調査では、新卒採用においてターゲット大学を設定する企業はここ数年で増え続けており、すでに5割近い数字になっています[図表1]。また、ターゲット大学を設定している企業は、年々施策を強化しています[図表2]。前回のデータで就職ナビへの依存度が下がっていると書きましたが、それに呼応する動きと言えます。
しかし、「学校対策を強化したいが、何をすれば良いのか分からない」「キャリアセンターに通ってはいるが、成果に結びついていない」などといった話もよく聞きます。そこで今回は、当社で行った企業アンケートの結果を交え、どのような学校対策が行われているのかを見ていきたいと思います。
■就職部・キャリアセンターとの関係構築
何よりもまず、就職部・キャリアセンターとの信頼関係を構築しなければなりません。たまに訪問するだけでは忘れられるだけです。では、どのようなことが行われているのでしょうか。・担当者との定期的な連絡。学生の傾向に合わせ、アピール内容を変化(1001~5000名、百貨店・ストア・専門店)
・就職課が知らない選考の情報を提供する(501~1000名、輸送機器・自動車)
・卒業生による研究室、キャリアセンター訪問(101~300名、百貨店・ストア・専門店)
・こまめに情報交換をすること(101~300名、鉄鋼・金属製品・非鉄金属)
・セミナーの告知を優先的に行う(101~300名、情報処理・ソフトウエア)
・キャリアセンター・就職部との関係強化および継続。人事異動等により大学側の責任者、担当者が変わると顔つなぎをして関係構築を継続しなければ、いざという時に親身になってもらえない可能性もあるので、機会があれば訪問し情報交換に努めている(51~100名、運輸・倉庫・輸送)
・採用には直結しませんが、模擬面接講師等、大学側にとってメリットとなる関わりを積極的に引き受けるようにしています。採用担当者と大学関係者同士の関係構築にも一役買っているのではないかと思います(501~1000名、専門商社)
・頻繁にコミュニケーションをとること。就職採用に限らず、大学側のニーズに極力応えること(501~1000名、医療・福祉関連)
定期的な訪問は必須です。実績校に加え、ターゲットにしたい大学を決めたら、定期的に訪問するようにします。時期にもよりますが、年に数回通うようにしたいところです。また、訪問だけでなく、メールや電話でこまめに情報交換できる関係を作ることができればなお良いでしょう。
そして、重要なのは、提供・交換する情報の中身です。「(自社の)公開されていない選考情報を知らせる」「セミナーの告知を優先的に行う」「求人情報を定期的に配信し続ける」など、まずは自社の採用に関する情報をリアルタイムに提供することです。学校側は「生きた求人」を求めています。
また、訪問時にOB・OG社員を伴うことにより、社員として大切にされているという印象を与えることも効果的でしょう。
■研究室・教授との関係構築
理系採用の場合、研究室対策、教授との関係作りが非常に重要です。・役員レベルの人間による就職担当教授訪問(301~500名、通信)
・学生を推薦してくれる教授との信頼関係の構築(1001~5000名、医薬品)
・教授推薦などによる、内定辞退やミスマッチの防止(301~500名、輸送機器・自動車)
・研究室は、業務に関係する研究室をまずターゲットとし、教授との距離を縮める(501~1000名、輸送機器・自動車)
・採用担当だけではなく、現場スタッフを伴い、研究室を訪問(301~500名、情報処理・ソフトウエア)
・キャリアセンターや教授との接点を増やすこと。それによって学生の良さも見えてくることがある(301~500名、情報処理・ソフトウエア)
教授にお願いしたからと言って学生を寄こしてくれる時代ではありませんが、理系学生と教授の関係は文系よりはるかに強いものがあり、影響も強く受けます。学生が教授に相談した時に、教授に知っておいてもらうことは意味があります。
通常は人事部課長が訪問するケースが多いようですが、技術系の役員クラスなどが教授訪問すると、いかにその大学に力を入れているかが伝わるでしょう。また、企業の中で自分の教え子がどのように活躍しているか、情報提供すると良いでしょう。内定者の研究室には、推薦を受けていない場合でも、採用後にはあいさつをしておくべきです。
また、文系のゼミの教授にも、学生への影響力が強い場合は、あいさつをしておくと次につながる可能性があります。
■学内合同セミナー
企業の大学対策として最も多いのは学内合同セミナーですが[図表3]、これは一部の上位企業は別として、前記したような就職部・キャリアセンターとの関係構築が前提となります。毎年呼ばれる関係になればしめたものです。情報収集をまめに行い、募集タイミングを逃さないようにしたいものです。
学内合同セミナーに参加すると、どうしても知名度が高い企業に学生がなびいてしまいます。会社にとってやり方は違うでしょうが、学生を惹きつける手立てが必要です。
ある企業の採用担当者は、ブースに少しでも多くの学生を入れることを目標とせず、毎年一人ひとりの学生の相談に親身に乗っていたところ、学生の口コミもさることながら、キャリアセンターの人が学生にこの企業のブースを積極的に薦めてくれるようになったそうです。
ある企業の採用担当者は、ブースに少しでも多くの学生を入れることを目標とせず、毎年一人ひとりの学生の相談に親身に乗っていたところ、学生の口コミもさることながら、キャリアセンターの人が学生にこの企業のブースを積極的に薦めてくれるようになったそうです。
■インターンシップ参加
大学の多くはインターンシップを強化しようとしていますが、受け入れ側の企業が足りていないのが現実です。大学側は大手企業の受け入れ先だけを求めているのではありません。中堅・中小企業でも、学生にとってためになる体験ができるのであれば大歓迎です。・インターンシップの受け入れにより、直接弊社を知ってもらう機会を作りました(101~300名、その他メーカー)
・特定の大学との取り決めの中で、毎年インターンシップ学生を受け入れています。期間は10日間で、営業部門で仕事をしていただきます(101~300名、専門商社)
・大学主催の海外インターンシップ支援や大学主催プロジェクトのスポンサーなどキャリアセンター、特定研究室との協調構築(501~1000名、石油・ゴム・ガラス・セメント・セラミック)
・制作系は、実際の現場でアシスタントとして現場実習を経験してもらう(大学との関係強化がメインなので、必ずしも採用に直結しているわけではない)(501~1000名、マスコミ関連)
インターンシップは学校との関係構築のためにも使えますが、同時に採用成果につなげていくことも可能です。実は、大学側にはインターンシップを採用に結びつけることに否定派が多いどころか、肯定派の方が多いのです。関係構築と採用成果への直接貢献を兼ねて、インターンシップをあらためて検討してみてはいかがでしょうか。
■OB・OG社員の活用
学校対策にその大学のOB・OG社員が有効であることは言うまでもありません。・学内企業説明会に参加し、OB・OGも同席させる(101~300名、百貨店・ストア・専門店)
・OBに仕事をリアルに語らせる(101~300名、精密機器)
・若手社員を出身母体の研究室に訪問させ、会社理解を深めていただく(301~500名、精密機器)
・OB・OGの活躍をアピール(101~300名、その他メーカー)
・OB・OGの多い学校であれば、就職部の後押しなどもあり、学生が確保しやすい。今社内で活躍しているOB・OGの話を積極的にするようにしている(101~300名、機械)
特別なことがあるわけではないのですが、人事が語るよりその学校のOB・OG社員が語る方が、相手にとってより真実味があるように思われるのでしょう。OB・OG社員を活用できるように現場の協力を得られる関係を保っておくことが重要です。
以上、いかがでしたでしょうか。
特別なことは何もなかったかもしれませんが、学校との信頼関係の構築は一朝一夕では成らず、地道な努力を積み重ねる必要があります。それでも創意工夫によって、より強固で新しい独自の関係が結べるはずです。それが採用力強化の非常に大きな一歩なのです。
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