秋のキャンリクフォーラムが10月4日に開かれ、人気大学50校が集まり、大学の就職担当者と企業の採用担当者が1社15分の面談を行います。これは大学と企業が関係を構築する貴重な場のはずですが、単なる名刺交換に終わっているケースも見受けられます。
そこで学習院大学キャリアセンターにうかがい、キャンリクフォーラムの使い方について参加企業へのアドバイスをいただきました。キャリアセンター事務長・淡野氏のアドバイスを生かして、キャンリクフォーラムを正しく使ってください。
<Vol.1 学習院大学>キャリアセンター事務長・淡野健氏に聞く、キャリアセンターとの正しい付き合い方

キャリアセンターのホームページをチェック~大学ごとに異なるキャリアセンターの役割と活動を知る

採用戦略の柱として「大学との関係強化」を上げる企業は多いと思いますが、その際に気を付けてもらいたいことがあります。それは大学によってキャリアセンターの役割や活動がかなり異なると言うことです。

学生に積極的な働きかけをせず、学生が来るのを待っているキャリアセンターもあります。学生はそういうキャリアセンターはあまり利用しません。その一方で学習院大学のように熱心なキャリアセンターもあります。キャリア教育を「入学の初年度から卒業まで一貫して必要なもの」と位置づけ、多彩なプログラムを提供しています。その結果、95%の学生がキャリアセンターを利用しています。ゆえに、様々な学生の実態や情報が集まり、キャリアセンター⇔学生との距離が近くなります。それほどキャリアセンターの活動は活発です。

このような活動や方針はキャリアセンターホームページで知ることができます。キャンリクフォーラムでホームページに掲載していることについて質問される企業がありますが、「15分」という面談時間ですので、公開されている情報は事前収集をして参加をした方が効率的です。

学内で面談する時の本学キャリアセンターは、面談予定企業のホームページや、その企業の募集要項を読み、前年度の採用数や当年度の採用予定数も調べて面談に臨みます。互いに研究し合って面談すれば、大きな実りが期待できます。

「この大学」という採用志望動機を明確に~15分間の面談時間はプレゼンの場と考える

企業は学生に志望動機をたずねます。キャンリクフォーラムの場合は、企業がキャリアセンターに会いに来ますが、私たちは「本大学の学生がなぜ欲しいのか」という採用志望動機をプレゼンしてもらいたいと考えています。

ところがきちんと「欲しい理由」を語る企業は少なく、多くの企業はパンフレットを渡して説明するだけです。そして話題が途絶え、シーンとしてしまうことがあります。そうなると私たちは企業の熱意が感じられず、「学習院の学生が欲しい」理由がわからないまま面談が終わってしまいます。
そういう企業は「キャンリクフォーラムに参加するだけで大学と関係構築ができる」と漫然と考えて参加しているのではないでしょうか?参加理由が曖昧なままでは、キャリアセンターと良い関係は築けません。

採用志望動機はいろんな言葉で表現できるでしょう。「学習院キャリアセンターのホームページを見た。こういう姿勢なら学生は育っているはず」「OB社員がこんな仕事をして貢献している」などの現場情報を話してもらえれば、真の学生情報や課題なども情報共有できるかもしれません。

「初年度から4年までの学習院のキャリア教育に共感した」や「3月広報解禁、6月選考開始というスケジュールは学業を阻害しており問題を感じている。この問題を議論しながら若者を混乱させない方法を探したい」という企業などは私は大歓迎します。

また規模の小さい企業であっても「B to B企業ですが、この分野のこのシェアではトップ」と言ってもらえれば、そこから人材論議が始まるかもしれません。「若い世代には外を向いてもらいたいので、ひと味違う語学研修制度で人材育成しています」と聞けば、どんな語学研修なのかと興味が湧きます。

そして15分間の面談が終わったときに、「この企業から連絡を頂いたら会いたい」とキャリアセンターの人間が思っていたら、その面談は成功しているのです。

キャンリクフォーラムは出会いの場~継続的なキャリアセンターとの関係構築は訪問から始まる

キャンリクフォーラムでの面談や名刺交換は、大学と企業の関係構築の起点です。残念ながらフォーラム後も何の関係も構築されないことの方が多いのではないかと思います。キャンリクフォーラムで話し、名刺を交換してもその後に接点がないと忘れてしまいます。ところが1週間以内に「ありがとうございました」「改めて報告したい」というメールをいただけるのは3割程度ではないかと思います。

一方で、「ありがとう」だけでは関係は構築されません。そのメールで終わってしまいます。「ご連絡をお待ちしています」や「伺ってもいいでしょうか」もダメです。「キャリアセンターに伺って話したいのでお電話をさし上げます」と書くべきです。そしてアポを入れて訪問するのです。

本学では、企業から「伺いたい」と言われて拒むことはありません。アポイントさえ入れて頂ければ必ずお会いして、学習院大学独自の選考についてお話しして、イベントに参加していただくこともあります。

また企業が例えば、「就職ナビ経由で10名、大学経由で10名を採りたい」という採用戦略を持っているなら学習院キャリアセンターとして協力できる事があるかもしれません。本学では独自のプレミアム説明会があります。就職ナビ会社が運営する合同企業説明会は大規模で、知名度の低い企業は学生が来てくれるのかどうかを心配しなければなりません。その点を払拭して学習院のプレミアム説明会は午前1社、午後1社だけでやる説明会です。この説明会参加企業は、その場で一次選考をしていただきます。

さらに学習院大学は独自の学校推薦制度も持っています。本学では企業から相談を受けると、このような仕組みを用いて協力することができます。たとえば「あと一人か二人採用したい。しかし就職ナビでやるにはお金が足りない」というケースには学生を推薦することができるでしょう。

実際に私はキャンリクフォーラムで知り合った企業人事と付き合いがあり、学生を採用して頂いています。1回のキャンリクフォーラムの参加の後にキャリアセンターを訪問して、すぐに大学との強い関係が構築できるというものではありませんが、絆は積み重ねによって強くなっていくものであり、私たちは、2年、3年と長期的な信頼関係を積み上げていくことを望んでいます。
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