静かなる職場の罠
私たちコンサルタントが会社から仕事を請け負うときは、経営者や幹部から説明を受けるだけでなく、自分の目で社内の様子を視察させていただく。会社の実情について多くのことが分かるからだ。
風向きが悪い時代ではあっても、求心力の高い会社からは活気が感じられるもので、これは誰が見ても察しがつく。学級崩壊になぞらえて「職場崩壊」というほどの無秩序が支配しているのでない限り、組織は少し騒がしいくらいのほうがよい。今月号の本誌特集記事になぞらえていえば「ご機嫌な職場」である。
私たちコンサルタントが会社から仕事を請け負うときは、経営者や幹部から説明を受けるだけでなく、自分の目で社内の様子を視察させていただく。会社の実情について多くのことが分かるからだ。
風向きが悪い時代ではあっても、求心力の高い会社からは活気が感じられるもので、これは誰が見ても察しがつく。学級崩壊になぞらえて「職場崩壊」というほどの無秩序が支配しているのでない限り、組織は少し騒がしいくらいのほうがよい。今月号の本誌特集記事になぞらえていえば「ご機嫌な職場」である。
逆に、静かな職場にはリスクがひそんでいる。その静けさの理由を分析してみると、かなりの確率で深刻な問題を抱えていることが判明する。そういう職場で、「ずいぶん静かですね」と水を向けてみると、「ウチは大人しい社員が多いんです」あるいは「みんなまじめですから」といった返事がよく返ってくる。そのことに経営者や管理者が問題意識を感じていることは少ない。
静かな職場の中には、適度な緊張感と目に見えない活気に満ちた職場もないわけではない。そういうところは2 、 3 分も観察していれば、すぐにそれと分かる。社員の表情や動作に生気が感じられ、仕事の手応えのようなものがこちらにも伝わってくるからだ。
しかし現実には、この種の「静かな職場」はあまりお目にかからない。一般にどんな状況にあるかというと、
● 与えられた仕事を皆が機械的にこなしている
● 仕事に創意工夫を働かせる余地がない
● コミュニケーションが介在していない
● 管理者の無言の圧力が職場を支配している
● 社員の不満や怒りなど負の感情が鬱積している
仕事そのものに魅力が感じられないというのは、珍しいことではない。ではどうすれば少しでも魅力を高めることができるか?
静かな職場の中には、適度な緊張感と目に見えない活気に満ちた職場もないわけではない。そういうところは2 、 3 分も観察していれば、すぐにそれと分かる。社員の表情や動作に生気が感じられ、仕事の手応えのようなものがこちらにも伝わってくるからだ。
しかし現実には、この種の「静かな職場」はあまりお目にかからない。一般にどんな状況にあるかというと、
● 与えられた仕事を皆が機械的にこなしている
● 仕事に創意工夫を働かせる余地がない
● コミュニケーションが介在していない
● 管理者の無言の圧力が職場を支配している
● 社員の不満や怒りなど負の感情が鬱積している
仕事そのものに魅力が感じられないというのは、珍しいことではない。ではどうすれば少しでも魅力を高めることができるか?
反省する人・しない人
創意工夫の余地があれば、それに応じて働く意欲も高まる。肝心なのは、上司と部下との間にコミュニケーションが介在しているかどうかだ。病んでいる職場には、それがない。ほとんどの部下が不平不満を感じているのだが、きちんと対処してくれる上司がいない。過去に不満を述べたり提案をしたりしたことがあっても、上司が聞く耳を持たなかったので、言っても仕方がないと「あきらめモード」に入っているのだ。
やや図式的な説明だが、思い当たるところのある読者もいるのではないか。「静かな職場」を透視してみると、仕事への不満、上司への不満、さらには会社への不満が、モヤモヤと煙のように漂っている。
このように指摘すると、一応、納得する管理者もいないではない。自分が部下とのコミュニケーションが苦手なことを自覚している管理者だ。誠実な対話をすれば収拾がつかなくなる危険性があるために、高圧的な態度でのぞむしかないことを当人がよく知っている。そういう上司であれば、改善の余地はある。部下とのコミュニケーションのとり方について助言すれば、それなりに聞く耳を持つからだ。
問題なのは、全くマイナスの自覚症状がない鈍感な上司のほうである。
「自分の部下はみんなまじめに働いている。コミュニケーションだってそんなに悪くない」と胸を張る。あるいは、「誰だって多少の不満はあるものだ。そんなのをいちいち聞いていては仕事にならない」と突っぱねたりする。
人から指摘されても、現状に対して問題意識を持とうとしないのだ。こういう上司に対しては、根本的な治療を施さなければならない。職場を管理するとはどういう意味か、部下は上司のどういう態度にヤル気を失うのかを、一から教えなければならない。
「それは面白い」と応じる姿勢を
部下の言うことに耳を傾けない上司は、仕事に関しても「アイデアキラー」となっていることが多い。直接的な企画について、あるいは業務の改善について、部下がアイデアを出すと反射的に警戒心を募らせる。それが習性のようになっているのだ。「前にも同じような意見が出たが、うまくいかなかった」「思いつきでものを言うな。自分で責任がとれるのか?」
部下の意見を採用するかどうかは別として、部下たちにアイデアキラーと見なされては上司失格だ。画期的なアイデアが生まれる可能性は百に一つだとしても、それが提案される可能性そのものがゼロになっては、何も生まれない。
自分にアイデアキラーの要素が少しでもあると感じる上司は、こんな言葉を口癖にするとよい。
「それは面白い」-部下の前で言わなくてもよい。部下が何か提案しようとしたとき、反射的に心の中で唱えるようにする。
そう思っていても上司は、部下の言うことに猜疑心を向けがちなものだ。特に「できの悪い部下」と見なしている相手の言葉には、舌打ちしてかかる。上司の側にその自覚がなくても部下は敏感に察知し、以後は言うべきことも言わなくなってしまう。こうして静かな職場はますます静かになっていく。
「それは面白い」という気持ちで部下に接しようとすると、自然と傾聴の姿勢になる。その効果は非常に大きい。
● 真剣に聞いてもらえていると部下に分かる
● 双方向のコミュニケーションの場ができる
● 結果として提案を受け入れなくても反感は生じない
● また新たな提案をしようという気持ちが残る
かつて私が仕えた上司は、相談や提案などで「今よろしいですか?」とうかがうたびに、こう言ったものだ。
「今、君の話を聞く以上に重要な仕事などない。何でも話してください」
そして身を乗り出すようにして耳を傾けてくれた。何か良い話が聞けるのではないかという期待感を示してくれたのだ。
こういう上司のもとには、率先して部下が訪れる。良好なコミュニケーションの場が自然にできるのである。良い話を聞けるかどうかは、その人の態度次第といっても決して過言ではない。
(2011.02.07掲載)
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