新卒採用はポテンシャル採用と言われ、就業経験を持たない学生の可能性に期待して採用する。大学・学部名で大学入学時の学力偏差値はわかる。しかし応募学生がどれだけの伸び代を持ち、自社人材としてマッチしているのかどうかは、面接官がいくら質問に工夫を凝らしてもわからない。
 面接で測れるのは、面接時のビジネスマナーや、コミュニケーション力で、未来のビジネス力ははっきりしない。「面接ではできるヤツと思ったのに」と落胆することは多いはずだ。人が行う選考は、印象に支配されるから当然だ。
 そこで科学的根拠のある選考プロセスとして利用されているのが適性検査だ。日本では1990年頃から利用が広まり、今日では多数の適性検査が存在している。

9割弱の企業が適性検査を実施

HR総合調査研究所が4月末に行った調査によれば、適性検査を利用していない企業は全体の12%で、8割強の企業が利用している。企業規模が小さいほど利用しない企業が多く、規模が大きいほど利用率が高い。
 もっとも多い用途は、学生のスクリーニングだ。4割近い企業が1次面接前に実施している。面接資料として適性検査を実施するケースも多い。
 適性検査の回数は、1回が46%と最多だが、2回が28%、3種類が9%とかなり多くの企業が複数回実施している。
 適性検査には総合型もあれば専門型もあるが、HR総研の調査で最多は性格・気質判断で6割に達している。続いて多いのは適職判断(32%)だ。ストレス・メンタルヘルス診断25%と行動特性診断23%もかなり多い。タフで行動特性にすぐれた学生を採用したいという企業の意向が見える。

戦略人事を可視化する適性検査

旧来は受け身の秩序維持型の人事が主流だったが、現在は変化に対応する戦略人事への切り替えが求められている。そして戦略人事は、自社の人材資源のタイプや質について分析することから始まる。その武器が適性検査だ。
 適性検査は、一過性の採用プロセスでの資料として使われることが多く、戦略的な人材分析に使われることは少なかった。
 しかし入社後の履歴と照合すれば、適性検査で表れる人材タイプと自社の職種のマッチングがあるはずだし、成長するタイプと早期退職するタイプも統計的に割り出せるはずだ。適性検査ベンダー企業も、採用選考だけでなく、育成プログラムとしても提供している。適性検査を人材育成のツールとして使ってもらいたい。
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