ProFuture代表の寺澤です。
2015年卒採用までの倫理憲章では「12月1日 採用広報開始」となっていましたので、今ごろはすでに就職ナビも正式オープンし、毎日、大学キャリアセンターでの学内企業セミナーや、就職ナビ主催の合同企業セミナーに駆け回っていたタイミングです。16年卒採用からは、「学生の学修時間の確保」を旗印に、「3月1日 採用広報開始」へと後ろ倒しになったわけですが、11月15日に発表された経団連加盟企業の「2016年度 新卒採用に関するアンケート」では、興味深い結果が報告されています。
2015年卒採用までの倫理憲章では「12月1日 採用広報開始」となっていましたので、今ごろはすでに就職ナビも正式オープンし、毎日、大学キャリアセンターでの学内企業セミナーや、就職ナビ主催の合同企業セミナーに駆け回っていたタイミングです。16年卒採用からは、「学生の学修時間の確保」を旗印に、「3月1日 採用広報開始」へと後ろ倒しになったわけですが、11月15日に発表された経団連加盟企業の「2016年度 新卒採用に関するアンケート」では、興味深い結果が報告されています。
根強い旧スケジュール復活待望論
選考開始が2カ月前倒しとなった2017年入社者の採用スケジュールについて、2016年入社者採用時の「3月1日 広報開始、8月1日 選考開始」との比較では、「非常に良かった 」15.0%、「どちらかといえば良かった」54.4%と、合わせて7割近い企業が肯定的な感想を持っています。その反面、2015年入社者向けの倫理憲章だった「12月1日 広報開始、4月1日 選考開始」と今回との比較では、「非常に良かった」2.3%、「どちらかといえば良かった」17.6%と肯定的な意見は合計しても2割にも満たず、逆に「非常に悪かった」24.6%、「どちらかといえば悪かった」53.5%と否定的な声が8割近くにも及んでいます。結果もさることながら、わざわざこの質問を設けていること自体に、旧スケジュールに戻したいという経団連の本音が見え隠れしています。また、同アンケートでは2018年4月入社対象の「指針」の在り方についても意見を聞いています。「見直すべき」とする企業が63.2%なのに対して、「見直す必要はなく、2017年入社対象の内容を維持すべき」とする企業は35.5%にとどまります。さらに、「見直すべき内容」としては、「広報活動の開始時期」83.5%、「選考活動の開始時期」83.9%と、両方の開始時期について見直すべきとの意見が圧倒的となっています。
経団連がアンケート結果を発表した1週間後の11月22日には、大阪商工会議所からも10月に実施した「新卒採用スケジュール等に関する調査」結果が発表されました。それによると、全体の40.5%が「前々年度(12月説明会開始、4月選考開始)が良い」と回答しています。中でも従業員数500人以上の企業では、7割以上(73.3%)が「前々年度が良い」と回答するなど、経団連に限らず大企業ほどかつての倫理憲章時代のスケジュールを望んでいるようです。
ところが、経団連はすでに発表されている2018年新卒採用同様、2019年以降も「3月1日 広報開始、6月1日 選考開始」の採用スケジュールを数年は続ける意向だとの報道がありました。来年1月には正式な方針が出るそうです。毎年のようにスケジュールが変更されると混乱を招くとの判断のようです。先のアンケートで見た企業の意向とは正反対の方針となるわけですが、「3月1日 広報開始」の流れはもともと安倍政権の要請から始まっており、さらに長期政権継続が確実視されていることを考えれば、過去のスケジュールへ戻すことで現政権に背くようなことは避けようとの思惑が働いてのことなのでしょう。会員企業との板挟みとなりながらの苦渋の選択と言えそうです。
なお、今回、インターンシップは5日以上という規制を解き、1日からでも良しとする方向で検討が進むようです。半日や1日だけのものをインターンシップと呼んでいいのかとの議論もあった中で、インターンシップは採用とは切り離して考えるというスタンスを経団連は崩さないでしょうが、実質的にはインターンシップが採用に活用されることを追認したということでしょう。
売り手市場の中、採用に苦戦する企業
今回は、HR総研が11月15~22日に実施した「2017年新卒採用&2018年新卒採用動向調査」の結果をご紹介します。まず、この調査時点での2017年新卒採用活動の継続状況からです[図表1]。全体で3割(29%)の企業が、まだ採用活動を継続していると回答しています。大企業に限っても24%の企業が継続しており、規模別では中堅企業(32%)、中小企業(29%)と比較した継続率は低いとは言え、4分の1の企業がまだ採用活動を継続しているということを考えれば、大企業でも苦戦している企業は少なくないことが分かります。
継続している大企業の業種を見ると、不人気業種と言われるフードサービスだけでなく、機械メーカー、電機メーカー、流通、旅行・ホテル、情報処理、不動産など幅広い業種にわたっています。また、驚くべきことに、採用活動継続中と答えたうちの半数近くを東証1部上場企業が占めています。
継続中企業の採用計画数に対する現時点での内定充足率を見てみると、さすがにこちらは大企業とその他の規模の企業では差が出ています[図表2]。中堅企業では充足率「20%未満」9%、「20~50%未満」14%、中小企業に至っては「20%未満」15%、「20~50%未満」18%と、充足率がまだ半数に満たない企業が2割から4割近くもあるのに対して、大企業では内定充足率が「50%未満」の企業はありませんでした。ただ、大企業でも3分の1の企業はまだ内定充足率は「80%未満」となっており、すぐに充足することは難しそうです。
継続中企業の採用計画数に対する現時点での内定充足率を見てみると、さすがにこちらは大企業とその他の規模の企業では差が出ています[図表2]。中堅企業では充足率「20%未満」9%、「20~50%未満」14%、中小企業に至っては「20%未満」15%、「20~50%未満」18%と、充足率がまだ半数に満たない企業が2割から4割近くもあるのに対して、大企業では内定充足率が「50%未満」の企業はありませんでした。ただ、大企業でも3分の1の企業はまだ内定充足率は「80%未満」となっており、すぐに充足することは難しそうです。
過半数の企業が年内で採用活動を終了
現在採用活動を継続中の企業が、いつまで採用活動を継続する予定なのかを聞いたグラフが[図表3]です。最も多い回答は「2016年12月まで」で43%、「2016年11月まで」の10%と合わせて、半数以上の企業は年内に採用活動を終了する予定だとしています。
企業規模別に見ると、「2016年12月まで」とする企業は中堅企業が圧倒的に多く、大企業と中小企業はいずれも30%そこそこなのに対して、中堅企業は61%と倍近くになっています。
内定充足率では他の企業規模よりも進んでいた大企業ですが、終了予定時期ではかえって苦戦を予想しているようです。「2017年2月まで」「2017年3月まで」とする回答は44%に達し、中堅企業(17%)や中小企業(37%)よりも多くなっています。中堅・中小企業のほうが楽観視しているというわけではなく、逆に早めに見切りをつけてしまうということなのかもしれません。
内定充足率では他の企業規模よりも進んでいた大企業ですが、終了予定時期ではかえって苦戦を予想しているようです。「2017年2月まで」「2017年3月まで」とする回答は44%に達し、中堅企業(17%)や中小企業(37%)よりも多くなっています。中堅・中小企業のほうが楽観視しているというわけではなく、逆に早めに見切りをつけてしまうということなのかもしれません。
採用終了企業にも多い採用計画未達企業
次に、すでに採用活動を終了したという企業についても見てみましょう。まずは内定充足率です[図表4]。「100%以上」の内定者を確保しているのは、大企業で59%、中堅企業で37%、中小企業で47%にとどまり、残りの企業は採用計画数に対して未達の状態にもかかわらず、採用活動を終了したことになります。大企業では、残りの41%の企業は「80~100%未満」となっており、ほぼ採用計画に近い内定者を確保できているようですが、中堅企業では「20~50%未満」「50~80%未満」がともに9%あり、中小企業に至っては「50~80%未満」の企業が11%、さらに「20%未満」という企業が13%もあります。採用活動を終了していると言っても、採用計画を達成あるいはほぼ達成している企業ばかりではなく、中には採用計画を大きく下回っている企業もあるということです。
近年の新卒採用では、「厳選採用」という言葉がよく使われます。売り手市場といわれる中で、仮に採用計画が未達に終わろうとも、自社の採用基準を下げてまで無理に採用することはしない考え方です。超売り手市場であったバブル期に、採用計画を達成することを第一に考え、それまでの自社の採用基準を大きく下回る人材まで目をつぶって採用したことの反省によるものです。採用数が多かったことから年齢ピラミッドがいびつになっているだけでなく、他の年代との能力差も課題となっています。今年も「厳選採用」の流れに変わりはなく、無理してまで採用計画を達成しようとする企業は多くありません。
10月以降でも新規エントリーの門戸を開けていれば、中には自社の採用基準に見合う学生も現れるかもしれません。他社に内定したものの何がしかの理由で迷い始めた学生や、不器用で採用スケジュールの波にうまく乗れなかった学生、公務員や教員試験に失敗して民間企業へと軌道修正した学生などなど。ただし、企業の中には学生の「能力」や「ポテンシャル」と同じくらいに、「自社への思い入れ」を厳しく問う企業があります。仮に自社の採用レベルであったとしても、この時期になって初めて応募してくるということは、他社でうまくいかなかったため仕方なく応募してきている面は否定できない。早期から自社へ一途に応募してくれた学生とは「熱意」「動機」「思い入れ」が全く異なり、ひとまとめに同じ内定者として考えづらいというもの。また、思い入れがなければ、入社後、何か壁にぶつかったら簡単に折れてしまうのではないか――とも考えるようです。これも「厳選採用」の一形態と言えます。
10月以降でも新規エントリーの門戸を開けていれば、中には自社の採用基準に見合う学生も現れるかもしれません。他社に内定したものの何がしかの理由で迷い始めた学生や、不器用で採用スケジュールの波にうまく乗れなかった学生、公務員や教員試験に失敗して民間企業へと軌道修正した学生などなど。ただし、企業の中には学生の「能力」や「ポテンシャル」と同じくらいに、「自社への思い入れ」を厳しく問う企業があります。仮に自社の採用レベルであったとしても、この時期になって初めて応募してくるということは、他社でうまくいかなかったため仕方なく応募してきている面は否定できない。早期から自社へ一途に応募してくれた学生とは「熱意」「動機」「思い入れ」が全く異なり、ひとまとめに同じ内定者として考えづらいというもの。また、思い入れがなければ、入社後、何か壁にぶつかったら簡単に折れてしまうのではないか――とも考えるようです。これも「厳選採用」の一形態と言えます。
採用活動終了時期はきれいに分散
すでに採用活動を終了した企業は、いつの時点で終了したのでしょうか。採用活動を終了した時期を月別に選択してもらったところ、6月以降、ほぼ均等に分散していることが分かりました[図表5]。「5月以前」とする企業は全体の4%にすぎず、「6月」16%、「7月」18%、「8月」17%、「9月」20%、「10月」22%といった具合です。10月は内定式の解禁月でもあり、「9月」「10月」に終了した企業がやや多いのは、それに関係しているものと思われます。
企業規模別に見てみると、大企業も全体とそれほど大きく違わないことが分かります。面接選考開始の6月1日をはじめ、6月初旬に内定ラッシュとなった超大手企業はかなりありましたが、大企業全体では「6月」で終了した企業は14%と、逆に全体(16%)よりも少なくなっています。内定式の10月を前に「9月」で採用活動を終えた企業は、全体よりも多い24%となっています。
意外と進まなかった女性採用
今年4月1日に施行された「女性活躍推進法」を受けて、今年の採用活動では変化があったのでしょうか。「女性活躍推進法」では、状況を把握し定量的目標を設定する項目として、①女性採用比率、②勤続年数男女差、③労働時間の状況、④女性管理職比率などを挙げています。法律で特定の数値を定めるのではなく、各企業の状況に応じて一つ以上の項目を選び、目標数値を設定した行動計画を届け出ることになっています。2017年新卒採用活動を終了した企業に対して、女性採用比率の増減を聞いてみたところ、全体の27%の企業では「女性比率が高まった」としたものの、「ほぼ変わらない」企業が65%、さらには「女性比率が下がった」企業が7%あったことが分かりました[図表6]。
企業規模別に見ても、「女性比率が下がった」企業の割合は、7~9%でほとんど差はありません。「女性比率が高まった」企業では、意外にも大企業が22%で最も少なく、中堅企業29%、中小企業30%という結果になりました。ただ、中堅企業では「意図的ではなく、結果的に女性比率が高まった」企業ばかりだったのに対して、大企業で女性比率の高まった企業の半数は、「意図的に女性比率を高めた」結果である点が異なっています。やはり大企業ほど、法令順守意識は高いようですね。
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