ProFuture代表の寺澤です。
経団連の「指針」による面接選考解禁から1カ月が過ぎ、学生の内定率は日に日に高まっているようです。7月5日にマイナビが発表した「2017年卒マイナビ大学生就職内定率調査<6月>」によれば、6月末時点での内々定率は前年同月比+21.1ポイントの65.3%に達しています。
経団連の「指針」による面接選考解禁から1カ月が過ぎ、学生の内定率は日に日に高まっているようです。7月5日にマイナビが発表した「2017年卒マイナビ大学生就職内定率調査<6月>」によれば、6月末時点での内々定率は前年同月比+21.1ポイントの65.3%に達しています。
同月比では大幅アップになっているものの、解禁日が2カ月前倒しになっていることを考えると、本来は8月の数字と比べるべきかもしれません。ちなみに、昨年の解禁月である8月末の内々定率は69.1%でしたから、それよりは低いことになります。また、昨年8月末の平均内々定保有社数は2.1社、複数内々定保有率は54.7%だったのに対して、今年の6月末時点では平均内々定保有社数は2.0社、複数内々定保有率は53.3%と、いずれも昨年8月末時点での数字よりも下回っています。ほぼ採用活動を終えた大手企業もある一方、規模的には大企業の部類に入りながらも、採用活動では苦戦している企業もあるなど、企業側の採用活動の進捗の遅れがこの数字に表れていると思われます。
今回は、HR総研が6月下旬に実施した「2017年新卒採用 最新動向調査」の結果から、企業の現状を見ていきたいと思います。
今回は、HR総研が6月下旬に実施した「2017年新卒採用 最新動向調査」の結果から、企業の現状を見ていきたいと思います。
文系学生への内定出しの開始は「6月前半」がピーク
まずは、内定出しの開始時期を文系学生と理系学生に分けて見てみましょう。文系学生に対しての内定出しは、「4月後半」10%、「5月前半」14%、「5月後半」16%と増えていき、「6月前半」が21%でピークを迎え、「6月後半」には8%と大きく落ち込みます。「7月前半」3%、「7月後半」2%とさらに減少し、「8月以降」になって10%と再度増える見込みです[図表1]。
「8月以降」と回答している企業は中小企業が大半で、大企業の採用活動が落ち着いてから選考活動を本格化しようと考えている層になります。大企業だけに限って見てみると、ピークの「6月前半」は38%に達し、次いで「5月後半」が28%と、この1カ月間で66%、およそ3分の2の企業が内定を一斉に出し始めたことになります[図表2]。
一方、理系学生への内定出しの開始時期は、文系学生とは異なります[図表3]。「6月前半」は15%で最も多くなっていますが、「4月後半」「5月後半」も同じく15%で並んでいます。「5月前半」でいったん落ち込んでいるのは、ゴールデンウィークにより、メーカーを中心に稼働日が少なかったことが影響しているものと思われます。文系学生向けの内定出しが増え始めたのは「4月後半」からですが、理系学生では「3月後半」8%、「4月前半」9%と早い時期から内定出しが行われています。
企業規模別に見てみると、大企業では文系学生同様に「6月前半」33%、「5月後半」27%と6割の企業がこの1カ月に集中しており、先に見た「3月後半」、「4月前半」の数字を引き上げているのは中堅企業です[図表4]。中堅企業では、「3月後半」14%、「4月前半」14%と続き、「4月後半」が21%でピークを迎えます。
文系、理系のいずれのデータを見ても、多くの大企業がほぼ時期を同じくして選考活動をしていることが分かります。
文系、理系のいずれのデータを見ても、多くの大企業がほぼ時期を同じくして選考活動をしていることが分かります。
内定出しのピークは「6月前半」「6月後半」
上記では、「いつから内定出しを始めるか」を見てみましたが、次に「内定出しの期間」を確認してみましょう。実際に学生へ内定を出した(または出す予定の)時期を、選択肢に挙げた中から複数回答ですべて選んでもらい集計したものです。まずは文系学生です[図表5]。内定出しの時期としては、「6月前半」49%、「6月後半」48%とほぼ半数の企業がこの時期に内定を出しています。「5月後半」も40%と多くなっていますが、「5月前半」は27%にとどまり、「4月後半」になると19%と2割弱の企業が内定を出しているだけになります。
企業規模別に見ると、大企業では「6月前半」「6月後半」に内定出しをした企業はともに68%にも及びます[図表6]。逆にいえば、6月に内定出しをしなかった大企業は3割しかなかったということです。いかに集中していたかということです。「5月後半」は36%で、43%が予定している「7月前半」のほうが内定出しの企業は多くなる見込みです。中堅企業では、過半数の企業が「5月後半」に内定出しを行い、6月からの大企業よりも先行しようとの意図がうかがえます。
理系学生はというと、「6月前半」54%、「6月後半」52%と過半数の企業が6月に内定出しを行っています[図表7]。次いで「5月後半」が48%となるなど、それぞれの時期において文系学生よりもやや高い数字となっています。ただ、7月以降は逆にわずかながら文系よりも低い数字となっており、理系の採用活動の方が文系よりも早く進んでいることがわかります。
企業規模別に見ると、大企業では73%の企業が「6月前半」に内定を出しており、「6月後半」も63%と高くなっています[図表8]。全体の進行度合いもさることながら、大企業においては理系の選考を極めて短期間に行っています。こちらは大学推薦・教授推薦による応募者の存在が大きいでしょう。一般的に推薦応募の学生のほうが自由応募の学生よりは、選考ステップが少ないことや、内定までの選考期間が短くなっていることが多いからです。実質的な選考は5月末までに終えておき、6月に入って推薦状の提出をもって内定という例もあるようです。
6月下旬時点で内定充足率8割以上の大企業は3割
6月下旬現在での採用計画に対する内定充足率を見てみましょう[図表9]。全体では、内定充足率が8割以上の企業は26%と、約4分の1ほどです。内定者がまだゼロの企業が19%、「20%未満」11%、「20~40%未満」11%、「40~60%未満」17%、「60~80%未満」16%と、状況はバラバラです。
企業規模別に見ると、内定者がゼロの企業は大企業6%、中堅企業14%、中小企業28%と規模が小さくなるほど多くなっており、大企業での選考が進んでいることが分かります[図表10]。ただし、それを除くと規模による差異は意外と少ないのが実情のようです。例えば、内定充足率が8割以上の企業の割合では、大企業31%、中堅企業27%、中小企業24%といった具合です。
「インターンシップ経由の内定者あり」の企業が4分の3
次に、年々実施企業が増えているインターンシップと内定者の関係について見てみましょう。インターンシップを実施した企業を対象にして、内定者に占めるインターンシップ参加者の割合を聞いた結果が[図表11]です。採用選考直結型のインターンシップに限らず、結果としてインターンシップに参加した学生だったという例も含めてのものになります。全体では、内定者の中にインターンシップ参加者が1人もいないという企業は25%にとどまります。逆にいえばインターンシップ実施企業の4分の3は、インターンシップが採用に寄与したともいえます。インターンシップ参加者の割合に関して、最も多かったのは「20%未満」の41%、次いで「20~40%未満」14%、「40~60%未満」13%ですが、まだまだ企業の選考活動は続いており、今後内定者が増えていけば、この割合はさらに増えることも十分考えられます。
企業規模別に見ると、採用人数の多い大企業でも内定者のうち「40~60%未満」がインターンシップ参加者という企業が11%あり、中小企業の中には「全員(100%)」がインターンシップ参加者という企業も13%と少なくありません[図表12]。ただし、インターンシップ参加者からの内定者がゼロという企業の割合も、大企業では11%にとどまるものの、中堅企業23%、中小企業に至っては38%と4割近くもあります。インターンシップをうまく採用につなげられている企業と、そうでない企業の二極化も起きているようですね。
すでに内定辞退は昨年よりも多い傾向に
最後に、内定辞退の状況について確認してみましょう[図表13]。この設問で対象としている企業は内定出しをすでに始めている企業だけで、内定出しがまだこれからという企業は除いています。全体では、「前年と変わらない」とする企業が49%と最も多く、「前年より少ない」は17%なのに対して、「前年よりも多い」は34%と2倍にもなっています。
企業規模別に見ると、「前年よりも多い」と回答している企業は中堅企業で最も多く、47%と半数近くにもなります[図表14]。大企業は内定辞退が少ないかというとそうでもなく、37%の企業が「前年よりも多い」と回答しており、「前年より少ない」とする企業はわずか9%しかありません。一方、中小企業では「前年よりも多い」とする企業は23%と、規模別では最も少なくなっています。
昨年は大企業の面接選考、内定出しが8月と遅かったため、中小企業が大企業の選考を待たずに内定出しを行い、後からひっくり返される例が多々ありましたが、今年は大企業の選考も5月頃より活発化しており、中小企業の選考時期がずばぬけて早かったわけではないことが、内定辞退がそれほど増えていない理由でしょう。逆に中堅企業は、先の内定出しのタイミングを見ても分かるように、大企業に先行して内定出しを行っていたために、6月に入って大企業にひっくり返される例が多くなったものと思われます。また、選考・内定出し期間が集中していた大企業では、学生との強い関係性を構築できていない状況での内定出しが行われ、業界内での上位企業、人気企業に重複内定者を奪われてしまった企業が多くなっています。
6月に入ってからの慌ただしい選考スケジュールの中で、企業に振り回され続けた学生は、重複内定企業からの絞り込み局面において、深く考えることなく就職先企業を決めてしまった学生も少なくないと思われます。入社後のミスマッチによる早期リタイアが懸念されるところです。
6月に入ってからの慌ただしい選考スケジュールの中で、企業に振り回され続けた学生は、重複内定企業からの絞り込み局面において、深く考えることなく就職先企業を決めてしまった学生も少なくないと思われます。入社後のミスマッチによる早期リタイアが懸念されるところです。
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