アベノミクスの成長戦略と雇用政策
昨年末に誕生した安倍政権が、困難な問題が山積する日本で、持続的な新たな成長戦略に挑戦しようとしています。そして政権誕生からわずか半年で経済環境は大きく変わり、日本企業は元気を取り戻しつつあります。雇用問題に関して安倍政権が示している方向を整理してみましょう。まず雇用の流動化が挙げられます。成長産業へのシフトが必要という点では妥当な政策です。
次に若年者、シニア、女性などの人材力強化を掲げています。これも少子高齢化が進む日本にとって喫緊の課題です。
また多様な働き方についても提示を行い、今回は見送られましたが解雇規制の緩和にも踏み込んでおり、本気度が伝わってきます。
しかし政府が本気でも、国を支えている企業が変わらなくては強い日本は実現しません。
唯一生き残るのは、変化できる者である
戦略立案には、経営環境の正しい認識が必要です。競争戦略で有名なマイケル・ポーターは「名経営者は有事に動く」と述べていますが、世界人口は爆発、世界経済が一体化する中で、少子高齢化に起因する難題が山積する現在は、まさしく「有事」です。しかし有事の大胆な戦略がどんなに優れていても、実行するのはつねに「人」です。
自社の組織・人材能力を把握し、経営者の戦略を自社で実行可能な戦略に落とし込み、あるいはその変化に対応する組織に変革することで、戦略実行が可能になるのです。
ところでルイス・ガースナーという人をご存じでしょうか。ガースナーはアメリカンエキスプレス、ナビスコを経てIBMのCEOになった経営者です。
IBMは1990年に最高益を記録したのですが、3年後の1993年に1兆円もの巨額赤字を出し、復活は不可能と言われました。そのIBMを再建したのです。
IBM時代のガースナーがダーウィンの「種の起源」から「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である(It is not the strongest of the species that survive, nor the most intelligent, but the one most responsive to change.)」という一節を引用したことがあります。もっとも「種の起源」にはこの言葉通りの文言はないそうです。それはともかく、環境の変化に応じて自ら変化できる者が生き残る、というのは企業にも妥当する真理だと思います。