能力育成よりもモチベーションマネジメントが大好きな日本

その一方で大学や社会人教育を軽視しているのが日本です。大学・大学院への社会人入学率は欧米で20%に達し、韓国でも10%くらいです。ところが日本は1.8%と微々たるものです。低い理由は簡単。社会人になっての研修はつまらないが、その前に大学自体がつまらないからです。
PISAはOECDが実施する小学生・中学生の学力到達度テストですが、科学などの点数はいいんです。ところが「数学が面白いですか、自分の将来に役立ちますか」という設問に対するスコアは最低です。つまり言われたから勉強しているだけなんです。
また日本がトリッキーなところは、能力よりもやる気に収斂しやすいところです。昔の仕事は確かにやる気とある程度のスキルでできたでしょう。しかしやる気からはソリューションは生まれません。ところが日本企業は能力を育成するよりもモチベーションマネジメントが大好きなんです。

初期キャリアの段階で働きがいと成長機会を奪うブラック企業

日本のOJTを作り直す~人材育成企業の15要件~
自己実現に向けて成長するドライバーになる欲求を理論化したのがマズローの「5段階欲求説」ですが、5階層あるので複雑です。そこで今日はアルダフェのERG理論を紹介します。EはExistence、RはRelation、GはGrowthの頭文字です。Eは存在、働きやすさ、労働条件、所得を指しています。これがないと人間は生きていけません。
Rはつながり、絆、職場での人間関係を指しており、アルバイトとしては楽しいが「店長はいやだ」というのはRの要素だけだからです。つまりEとRを満たし、働きやすいことだけで人は満足しません。働きがいが必要なので。そして成長は最大の働きがいなのです。これがGです。
そして20代の初期キャリアでの成長経験が健全な自己肯定感、自己効力感を生み、良質な生涯キャリアにつながっていきます。だから初期キャリアの段階で働きがいを感じることがとても重要なのです。
そのように初期キャリアを捉えると、若者から働きがいとその後の成長機会を奪っているブラック企業の問題は深刻です。しかし確信犯的にブラックな企業は少数で、ブラックとされている企業の多くは、人材育成の方法を知らないだけなのです。とするならば、人材育成の方法論を確立し、育成マネジメントができる人材を育てることが必要になります。

政策によって解決できる労働問題

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