「学生の心情への配慮が足りなかった」という言葉の背景にあるものは?
去る8月26日に行われた、リクルートキャリアの記者会見のライブ中継をネットで観ていたのですが、ここで小林大三社長は「学生の心情への配慮が足りなかった」という言葉を再三使っていらっしゃいました。私はこの発言を聞いて、すごくもやもやしてしまいました。小林社長は、マイナビとシェアを二分し、エントリーゲートとして就活生がみな利用するツールを運営する立場として、「道義的にそうしなければならない」という思いをもって発言されていたのだと思います。しかし冷めた見方をすると、それはつまり学生に嫌われると、ビジネスモデルそのものが立ち行かなくなってしまうということでしょう。極論すると、「学生のため」でなく、「自社の事業存続のために」このような言葉を繰り返したとことになりますよね。
これに関連して、思い出したことがあります。数年前、本学の学内合同説明会の開始日と、リクルートが北陸で開催する合同企業説明会の日程が重なったことがありました。それも確か、前年の7月か8月ぐらいには判明したと記憶しています(それまではできるだけ同じ日にならないように、事前にリクルート側から相談があって日程を調整していました)。ですが、この時はリクルートの担当者から私宛に「貴学の“学生のために”、ぜひ学内合説の日程をずらしてください!!」という電話があったのです。
その時の「学生のために」と、今回の社長の「学生のために」が同じ意味で使われているとすると、組織風土がかなり歪んでしまっているのかも知れないなあ、と感じます。「自社のサービスを学生に利用させることが、学生のためになる」ということを、何のためらいもなく言い切るのは、やはり異様ですよね。ちなみにこの件では、本学説明会の日程は変更せず、そのまま開催しました。
いずれにしても、今回の件はいろいろと考えさせられる事件だったと思います。大学も学生も、そしてリクルートも、今後どうあるべきかをよく考える必要があるのではないでしょうか。リクルート社およびそのOB・OGの方々には知人も多く、尊敬できる素晴らしい方々も大勢いらっしゃるので、今後の新卒採用の新しい扉を開いてくれることを期待しています。
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