BPOを利用企業は全体の4分の1
業務を外部の専門業者に任せるのがBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)だが、人事部門の利用状況を聞いたところ、BPOを利用しているのは全体の4分の1、25%にとどまった。そして検討中の企業は13%であり、合わせて38%である。2012年度の調査では利用企業20%、検討企業が8%だったから、利用は拡大している。しかし48%が「利用するつもりはない」と回答しており、普及期とは言えない。
規模別に見ると、大きいほど利用企業が多くなり、とくに非メーカー系の「1001名以上」では半数近い48%が利用している。サービス系では従業員管理が面倒なので、アウトソーシングしているのではないかと考えられる。
図表1:人事業務でのBPO利用状況(全体)
BPOを利用しない理由のトップは「社内スタッフで対応可能」
BPOを利用しない理由だが、いろいろある。最も多いのは「社内スタッフで対応できている」が54%と過半を占めている。続いて「コストが高そう」が44%、「外部に委託することが不安」は33%だ。そして「柔軟な対応ができなそう」が21%。
これらの理由はもっともなものだが、社内スタッフのコストをどう見るのか、その業務に要する時間・労力をどう考えるのか、再度見直してみてもよいのではないだろうか。
図表2:BPOを利用しない理由(全体)
利用するBPOサービスは「給与管理」、「社会保険管理」、「年末調整」
BPOでどのような業務をアウトソーシングしているのだろうか。全体で最も多いのは「給与管理(給与・手当・賞与・税金・振込)」で26%だ。続いて「社会保険管理(資格取得/喪失・給付・納付等)」が19%、「年末調整」は17%だ。
「勤怠管理」11%と「福利厚生管理(社宅/寮・財形・生保・慶弔・融資)」10%は1割台だが、他の「人事システム保守」「採用管理(新卒・中途・アルバイト)」「人事システム運用」「人事記録(考課・職務履歴)」「人事制度運用(昇格・考課管理)」「要員管理(入社・異動・出向・退職)」「退職者支援(アウトプレースメント)」などの業務は10%を切っており、低い。
「今後新たに利用したいBPOサービス」も合わせて質問したところ、全体的には現在の利用状況とほぼ同様の傾向となったが、「人事制度運用(昇格・考課管理)」「人事記録(考課・職務履歴)」のポイントが高くなっているのが目立つ。
図表3:利用しているBPOサービスと今後新たに利用したいBPOサービス(全体)
BPOベンダー選定基準は、人事業務への精通度と価格
BPOベンダーの選定基準では、「人事部門の業務への精通度」55%と「価格競争力」50%が飛びぬけて多い。次いで、「法令改正対応力」33%、「コンサルティング力」32%が続いている。「サービス内容」22%、「品質・精度」20%が2割を超えているが、他の項目は10%台だ。簡単に言えば「人事の仕事を知っているんだろうね」「適正な価格じゃないとダメ」「労働関連法案に精通している人」ということになる。そしてそういう根本的なこと以外は、あまり期待していないように見える。
図表4:BPOベンダー選定基準(全体)
BPOの利用拡大にはまだまだ時間がかかる?
最後に人事担当者のフリーコメントを紹介したい。下記のような課題から利用が進んでいないようだ。
まず問題になるのはコストだ。
「給与計算や勤怠管理などは、アウトソーシングした方がコスト高になる」(101名~300名、食品)
「本体の業務をアウトソーシングする際には、現在のシステム運用(社内サーバー)ではなく、クラウド型に変更する方がセキュリティの面で安心だが、その移行コストがばかにならない」(301名~500名、フードサービス)などの声がある。
また社内体制が未整備であることもBPOが進まない原因だ。
「社内で業務の洗い出しが出来ておらず個人依存で作業を進めているため、何を外注すべきで、何は自社で運用するべきかの選定が困難」(301名~500名、化学)
「現在内製化しているため、どの部分をBPOできるのかがいまいち理解できない」(51名~100名、情報処理・ソフトウェア)
これらのコメントを読むと、BPOが一般的に利用されるまでには、まだ時間がかかりそうである。
【調査概要】
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年3月25日~4月3日
有効回答:182社(1001名以上48社, 301~1000名54社, 300名以下80社)
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