リスキリングの必要性を感じる企業が8割に増加、実施企業は3割にとどまる
まず、企業がリスキリングの推進に取り組む必要性についてどのように認識しているかを見てみると、「取り組む必要がある」が80%となっており、8割の企業が取り組む必要性を認識していることが分かる。前回(2023年9月20~27日)の調査では、「取り組む必要がある」は72%となっており、8ポイントの増加となった。企業のリスキリングの必要性への認識はさらに高まっていることが分かる(図表1‐1)。
【図表1‐1】リスキリングに取り組む必要性に対する認識
実際の社員のリスキリングへの企業の取組み状況について見てみると、「既に取り組んでいる」は29%、「現在は取り組んでいないが今後取り組み予定である」は15%となっており、前回調査時点とほぼ同じ割合となった。「今後も取り組む予定はない」は30%と前回調査時点から6ポイント減少し、「現在取り組むことを検討している」は32%と、前回から5ポイント増加した。取組みの必要性に関する意識は高まっている一方で、実際に取り組んでいる企業の割合は前回からそれほど増加していないことが分かる(図表1‐2)。
【図表1‐2】社員のリスキリングへの取り組み状況
また、リスキリングへの企業の取組み状況について、企業規模別に見てみると、「既に取り組んでいる」の割合は1,001名以上の大企業では49%であるのに対し、301~1,000名の中堅企業では15%、300名以下の中小企業では21%となっており、大企業で顕著に取組みが進んでいることが分かる。「今後も取り組む予定はない」は、大企業では11%であるのに対し、中堅企業・中小企業では30%と3割が取り組む必要性を感じていない、もしくは必要性を感じていながらも優先順位が低く取り組めない状況にあることが分かる(図表1‐3)。
【図表1‐3】企業規模別 社員のリスキリングへの取り組み状況
リスキリングの目的、中小企業では「業務効率化」が5割超
「社員のリスキリングに取り組む目的」について、企業規模別に見てみると、全ての企業規模において「社員のスキル向上・キャリア開発支援」が最多となっており、大企業で64%、中堅企業で67%、中小企業で70%となっている。企業規模ごとの差が大きい項目としては、「業務効率化のため」が中堅企業で49%、中小企業で52%と高い割合を示す一方、大企業では30%と3割にとどまっている。また、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」については、大企業で38%、中堅企業で42%である一方、中小企業では27%にとどまっている。これらの結果から、企業規模に関わらずスキル向上とキャリア開発が最重視されている一方で、リスキリングの目的には明確な企業規模による違いが存在することがうかがえる。大企業ではDXの推進のような中長期的な変革を重視する傾向があるのに対し、中小企業では即効性のある業務効率化に、より重点を置いていることがうかがえる(図表2‐1)。
【図表2‐1】企業規模別 社員のリスキリングに取り組む目的
次に、「リスキリングの推進体制」について、企業規模別に見てみると、大企業では「人事部門が主導し、各事業部門と連携して推進している」が最多で60%、次いで「各事業部門が主体となって推進し、人事部門がサポートしている」が23%となっている。中堅企業でも同様に「人事部門が主導し、各事業部門と連携して推進している」が最多で71%を占めている。一方、中小企業では「経営トップ直轄のプロジェクトチームが全社的に推進している」が52%と最も高く、大企業・中堅企業とは異なる傾向を示している。大企業・中堅企業では人事部門が主導的な役割を果たす一方で、中小企業では経営トップが直接関与する形での推進が主流となっていることが分かる。
【図表2‐2】企業規模別 リスキリングの推進体制
学習機会の提供は4割で実現も、組織横断の取り組みは3割未満
次に、社員のリスキリングの取組み状況について、いくつかの観点から見てみる。まず、オンライン学習プラットフォームや研修などの「学習機会の提供」については「できている」(11%)と「ややできている」(29%)との合計が40%となっている。同様に「学習時間の確保」では「できている」(13%)と「ややできている」(27%)の合計も40%となっており、基本的な学習環境の整備については、4割の企業が何らかの対応ができていることが分かる。一方、「学習コミュニティの形成」は「できている」(7%)と「ややできている」(20%)の合計が27%、「部門を超えたノウハウ共有」も「できている」(7%)と「ややできている」(23%)の合計が30%と、組織的な取り組みについては3割程度にとどまっている(図表3‐1)。
組織横断的な学習コミュニティの形成や部門を超えたノウハウ共有を進めることで、個人のスキル向上だけでなく、異なる視点や経験の交換による革新的なアイデアの創出や、ベストプラクティスの水平展開による組織全体の能力向上、といった相乗効果も期待できる。今後は、単なる学習機会の提供にとどまらず、個人の学習意欲の向上にも繋がり得る学習コミュニティの形成・活性化や部門間の知識・経験の共有を促進し、組織全体の学習効果を高める仕組みづくりが求められるだろう。
【図表3‐1】リスキリングの取組み(学習環境の整備・コミュニティ形成)
次に、社内人材のスキル可視化やキャリア支援の観点から見てみる。
「社内人材のスキル可視化」については「できている」(5%)と「ややできている」(26%)との合計が31%と、3割にとどまっている。多くの企業において、社内人材のスキルの現状把握自体が十分にできておらず、計画的・効果的なリスキリング施策の立案・実行へのハードルとなっていることがうかがえる。また、「社員の長期的なキャリア支援」や「習得スキルを活かす機会の提供」についても「できている」と「ややできている」との合計は3割程度にとどまっており、たとえスキルを可視化し学習機会の提供ができたとしても、習得したスキルを活かす機会や社員がキャリアを描くためのサポートまで提供できる企業はそれほど多くないことが分かる(図表3‐2)。
【図表3‐2】リスキリングの取組み(社内人材のスキル可視化・キャリア支援)
続いて、事業戦略との連動や、経営陣の関与の観点から見てみる。
「事業戦略との連動」については「できている」(11%)と「ややできている」(29%)との合計が40%と約4割なっている一方、「経営層からの発信」は「できている」(5%)と「ややできている」(18%)との合計が23%と約2割にとどまっている。また、「人事評価・報酬への反映」は「できている」(4%)と「ややできている」(23%)の合計が27%と約3割となっている(図表3‐3)。
この結果から、事業戦略におけるリスキリングの位置づけはある程度明確化されているものの、従業員の主体的な行動を引き出すためのコミュニケーションや意識改革は十分に進んでいない企業が多いことが示唆されている。事業戦略との連動に加えて、経営層による積極的な発信を通じた従業員の当事者意識の醸成と、それを支える評価・報酬制度の整備を、バランスよく推進していくことが求められる。
【図表3‐3】リスキリングの取組み(人事戦略・評価との連動・経営陣の関与)
リスキリング実施企業の半数以上で業績・生産性向上の成果を実感
次に、リスキリングの成果について見てみる。まず、リスキリング施策が個人にもたらす変化に関して見てみると、「個人のスキル向上」については「成果が出ている」(8%)と「やや成果が出ている」(35%)との合計が43%となっている。「個人の新業務・新技術への対応力」は「成果が出ている」(11%)と「やや成果が出ている」(37%)との合計が48%と、やや高い成果を示している。「自主的な学習習慣」は「成果が出ている」(11%)と「やや成果が出ている」(33%)の合計が44%となっている。「キャリア自律の意識向上」については「成果が出ている」(11%)と「やや成果が出ている」(40%)との合計が51%と、最も高い成果を示している。
「キャリア自律の意識向上」や「個人の新業務・新技術への対応力」で比較的高い成果が出ていることから、リスキリング施策が従業員の意識改革に、ある程度効果的に作用していることがうかがえる(図表4‐1)。
【図表4‐1】リスキリングの成果(個人としての変化)
「組織としての変化への対応力」については「成果が出ている」(13%)と「やや成果が出ている」(33%)との合計が46%となっており、新しい業務や役職への登用のしやすさなどの「人材配置への好影響」は「成果が出ている」(8%)と「やや成果が出ている」(32%)との合計が40%となっている(図表4‐2)。
いずれの項目も成果に関する肯定的な評価が否定的な評価を上回っており、リスキリングに取り組んでいる企業においては、個人レベルの変化だけでなく、組織的な変化についても実感している企業が多いことが分かる。
【図表4‐2】リスキリングの成果(組織としての変化)
次に、リスキリングの取組みが事業上の成果にどの程度つながっているかを見てみる。「製品・サービスの質向上」については「成果が出ている」(8%)と「やや成果が出ている」(30%)との合計が38%となっている。「業務効率化・外部人材依存度低下」は「成果が出ている」(8%)と「やや成果が出ている」(21%)の合計が29%にとどまっている。「新規事業・新サービスの立ち上げ」では「成果が出ている」(11%)と「やや成果が出ている」(27%)の合計が38%となっている。また、「企業の業績向上・生産性向上」は、「成果が出ている」(17%)と「やや成果が出ている」(35%)の合計が52%となっており、品質向上による顧客満足度の向上、新規事業による収益源の多様化、業務効率化によるコスト削減など、様々な経路を通じて、最終的に業績向上・生産性向上の成果を実感している企業が半数以上に上っていることが推測される(図表4‐3)。
【図表4‐3】リスキリングの成果(事業上の成果)
「経営層からの発信」や「部門を超えたノウハウ共有」がリスキリングの成果と高い相関
社員のリスキリングの成果と取組み状況との相関関係を見てみる。
相関関係とは、二つ以上の事象について一方の数値が増加すると、もう一方の数値が増加または減少するような関係のことである。一方の数値が増加したときに、もう一方の数値も増加する関係にある場合、「正の相関がある」といい、反対に減少する関係にある場合には「負の相関がある」という。相関関係を数値で表す「相関係数」(r)は-1.0~1.0の範囲で値をとり、この相関係数の値が大きいほど強い正の相関があり、0に近づくほど相関が弱い関係であることを表している。
図表5-1は、図表3-1~3-3で示した取組み項目と、図表4‐1~4‐3で示した成果項目との相関関係を示した表である。相関係数の値が大きいほど濃い赤色で示し、相関係数の値が小さいほど濃い青色で示している。例えば、成果項目の「自主的な学習習慣」と、取組み項目の「経営層からの発信」との相関係数は、0.72となっている。「経営層からの発信」は他の取組み項目と比べて、「自主的な学習習慣」の成果との相関関係が最も強いことが分かる(図表5-1)。
【図表5‐1】社員のリスキリングに関する取組み状況と成果の相関関係
「個人のスキル向上」に関する成果と各取組み項目との相関について分析すると、「経営層からの発信」との相関係数が0.68と最も高く、次いで「人事評価・報酬への反映」が0.55、「部門を超えたメンバー共有」と「学習コミュニティの形成」がともに0.50となっている。一方で、「学習機会の提供」は0.08と最も低い相関を示している(図表5‐2)。
個人のスキル向上には、経営層による明確なメッセージの発信や、スキル向上を人事評価や報酬に結びつける制度設計が特に効果的であることがうかがえる。また、部門横断的な人材交流や学習コミュニティの形成といった、組織的な学習環境の整備も重要な要素となっていることが示唆される。また、従来型の単なる学習機会の提供だけでは、スキル向上への効果は限定的であることがうかがえる。
【図表5‐2】「個人のスキル向上」に関する成果との相関
「組織としての変化への対応力」に関する成果と各取組み項目との相関を分析すると、「部門を超えたノウハウ共有」との相関係数が0.67と最も高く、次いで「経営層からの発信」が0.63、「学習コミュニティの形成」が0.62と、いずれも強い正の相関を示している。一方で、個人に焦点を当てた施策である、「学習機会の提供」(0.16)や「社員の長期的なキャリア支援」(0.33)、「人事評価・報酬への反映」(0.36)は比較的低い相関にとどまっている(図表5‐3)。
組織としての変化対応力向上のためには、個人レベルの施策は直接的な効果が限定的であり、部門横断的なナレッジシェアの促進や、経営層との連携による組織学習の場づくりにも重点を置いた施策の展開が求められる。
【図表5‐3】「組織としての変化への対応力」に関する成果との相関
「人材配置への好影響」と各取組み項目との相関を分析すると、「習得スキルを活かす機会の提供」との相関係数が0.67と最も高く、次いで「社内人材のスキル可視化」が0.65、「人事評価・報酬への反映」が0.62となっている。一方で、「学習機会の提供」(0.19)や「学習時間の確保」(0.26)は、相対的に低い相関となっている(図表5‐4)。
新しく習得したスキルを実践できる機会を意図的に創出している企業において、リスキリングを通じた人材配置・登用の柔軟性向上の成果が出ていることが分かる。また、社内人材の保有スキルを可視化し、新たに獲得したスキルを評価・報酬に反映する仕組みの整備などの動的なスキルマネジメントも、配置転換や新役職への登用を促進するためには重要であることがうかがえる。
【図表5‐4】「人材配置への好影響」に関する成果との相関
「自主的な学習習慣」の定着の成果と各取組み項目との相関を分析すると、「経営層からの発信」との相関係数が0.72と最も高く、次いで「部門を超えたノウハウ共有」が0.70、「学習コミュニティの形成」が0.64と、いずれも強い正の相関を示している。一方で、「学習機会の提供」は0.12と最も低い相関となっている。(図表5‐5)。
トップメッセージの発信による学びの意義づけと、現場での学び合いの仕組みづくりを両輪として推進することで、個人のスキル・能力強化が組織開発に必要であることが社員に意識づけられ、社員同士で情報交換や学び合う場があることで学習習慣化に向けた刺激を受け合い、自律的な学習文化の確立には重要であることがうかがえる。
【図表5‐5】「自主的な学習習慣」に関する成果との相関
「企業の業績・生産性向上」の成果と各リスキリング施策との相関を見てみると、「経営層からの発信」との相関係数が0.64と最も高く、次いで「習得スキルを活かす機会の提供」が0.56、「事業戦略との連動」が0.55と、中程度の正の相関を示している。一方で、「学習機会の提供」は0.02と相関がほとんど見られず、「社員の長期的なキャリア支援」(0.35)も相対的に低い相関にとどまっている(図表5‐6)。
単なる学習機会の提供やキャリア支援といった個別施策だけでは、業績・生産性向上への直接的な効果は極めて限定的であることが分かる。人事部門としては、経営戦略との整合性を確保しつつ、習得したスキルの実践機会を意図的に創出するなど、より統合的なアプローチが求められる(図表5‐6)。
【図表5‐6】「企業の業績向上・生産性向上」に関する成果との相関
成果が出ている企業は「ビジネス構想力」と「業務プロセス設計力」を重視する傾向
「リスキリングにより社員に習得してほしいスキル」について、企業規模別に見てみると、全規模で「IT・デジタルリテラシー・スキル」が最も高い割合を示しており、大企業では75%、中堅企業では70%、中小企業でも61%と、デジタル技術への対応が最優先課題となっていることが分かる。また、中堅企業において、「財務・会計関連スキル」(46%)、「マーケティングスキル」(46%)、「営業スキル」(42%)といった実務的スキルについて、大企業や中小企業と比べて顕著に高い割合となっている(図表6‐1)。
中堅企業は、大企業のような充実した専門部署や教育体制を持たない一方で、中小企業より比較的規模が大きく、より専門的かつ高度な業務遂行が求められる過渡期にある。そのため、既存社員の能力向上を通じて、専門性の確保と業務の高度化を同時に実現する必要性が高いことがうかがえる。
【図表6‐1】企業規模別 リスキリングにより社員に習得してほしいスキル
次に、「企業業績・生産性」について、「成果が出ている層」と「成果が出ている層以外」(「どちらともいえない」を含む)の2つに企業群を分割して「リスキリングにより社員に習得してほしいスキル」について見てみる。どちらの企業群においても上位3項目は「IT・デジタルリテラシー・スキル」「ロジカルシンキング」「リーダーシップ」となっているが、「ビジネス構想スキル」や「業務プロセス設計スキル」などの項目については、「成果が出ている層」の方が重視している割合が高くなっていることが分かる(図表6‐2)。
企業の成果創出には、基本的なIT・デジタルリテラシーに加えて、それらを実務に活用・展開するためのスキルの習得が重要であることがうかがえる。
【図表6‐2】企業業績・生産性に関する成果別 社員に習得してほしいスキル(IT・デジタル関連 )
次に、IT・デジタル関連に限定して「リスキリングの取組みにより社員に習得して欲しいスキル」を見てみる。企業規模別で見てみると、大企業においては「データ分析・統計」が最多で59%であるのに対し、中堅企業・中小企業では「ITリテラシー」が最多となっている。また、生成AI活用のスキルについては、企業規模を問わず比較的高いニーズが見られ、今後の業務変革に向けた期待の高さがうかがえる(図表6‐3)。
【図表6‐3】企業規模別 リスキリングにより社員に習得してほしいスキル(IT・デジタル関連 )
社員が自主的に学ぶ企業で重視されている取組みは?
「社員のリスキリング推進のために実施している施策」については、「社内での研修の実施」と「外部のe-learningプログラムの利用」が同率で最多の70%、次いで「自己啓発・資格取得支援(費用補助)」が63%、「面談などによる本人のキャリア意向の把握」が48%などとなっている(図表7‐1)。
【図表7‐1】社員のリスキリング推進のために実施している施策
次に、「個人のスキル向上」について、「成果が出ている層」と「成果が出ている層以外」の2つに企業群を分割し、それぞれの取組み状況を見てみる。成果が出ている層では、「社内での研修の実施」(70%)、「自己啓発・資格取得支援(費用補助)」(63%)が上位を占めている。一方、成果が出ている層以外では、「外部のe-learningプログラムの利用」(81%)が最も高い実施率を示している。また、「評価項目として設定」「配置転換によるスキル向上」「副業・兼業の容認」において、「成果が出ている層」と「成果が出ている層以外」で顕著な差が見られる。「成果が出ている層」では、これらの施策の実施率が13~17ポイント程度高くなっている。効果的に個人のスキルを向上するためには、e-learningの提供だけでなく、評価制度との連携や社員の主体性を尊重した実践的な学習機会の創出を含めて、より包括的なリスキリング支援策の検討が求められる(図表7‐2)。
【図表7‐2】個人のスキル向上の成果別 社員のリスキリング推進のために実施している施策
続いて、「自主的な学習習慣」に関する成果別に、企業のリスキリング推進施策の取組み状況について見てみる。「成果が出ている層」では、「外部のe-learningプログラムの利用」(75%)、「社内での研修の実施」(68%)、「社外の研修・スクールへの派遣」(61%)が上位を占めている。一方、「成果が出ている層以外」では、「自己啓発・資格取得支援(費用補助)」(74%)、「社内での研修の実施」(71%)、外部のe-learningプログラムの利用(66%)が上位となっている。特筆すべき差異として、「社外の研修・スクールへの派遣」について、「成果が出ている層」では61%であるのに対し、「成果が出ている層以外」では34%と27ポイントの差がみられた(図表7‐3)。
社外との接点を持つことで、業界の最新動向や新しい知見に触れる機会が増え、それが従業員の知的好奇心を刺激するとともに、職場以外の学習プログラムに身を置くことで社外の受講者とも刺激し合い切磋琢磨する機会を得て、自主的な学習習慣の形成につながっていることがうかがえる。
【図表7‐3】自主的な学習習慣の成果別 社員のリスキリング推進のために実施している施策
社員のリスキリングに関する自由意見
最後に、社員のリスキリングに関する意見のフリーコメントから代表的なものを抜粋し以下に紹介する(図表8)。
【図表8】「社員のリスキリング」に関する自由意見(一部抜粋)
「社員のリスキリング」に関する自由意見 | 従業員規模 | 業種 |
---|---|---|
企業として再教育の環境を作ることは不可欠なことだと思います。リスキリングの個人が感じるメリットを明確にすることがスムーズに導入させる第一歩だと考えます | 1,001名以上 | サービス |
自らの現状が可視化出来て、理想とのギャップが見えて初めて必要なものが見える。それを飛ばしてリスキリングという言葉だけが先行し、対策を実施しがちである | 1,001名以上 | メーカー |
リスキリングは学び直しとは異なり、企業の事業戦略に合わせて会社側から提示した方が、戦略に合致した人材育成につながる | 1,001名以上 | メーカー |
自発的に取り組まないと実にならないものだと感じるが、そもそもその意義を会社側が伝えられていないような気がしている | 1,001名以上 | 情報・通信 |
総合職が多い職場であれば必要性を感じますが、業界の特性上、現場での社員にはそこまで必要性を感じません | 301~1,000名 | サービス |
言葉に踊らされている感がある。現状業務に更に追加してリスキリングをやれと言っても社員のやる気は起きない。また方向性も曖昧なため迷走するだけ | 301~1,000名 | メーカー |
トップがメッセージを出し、社員に必要性を理解させ自分事として取り組むようにすることが重要 | 301~1,000名 | メーカー |
会社が示す能力パッケージ・要件のためにスキルをつけてもらうという思想自体に、限界があると感じる。従業員が自律的に学びたくて学ぶような環境づくりを行いたい | 301~1,000名 | 運輸・不動産・エネルギー |
社員の社会人基礎能力は、原則として、社員が自主的に行い、会社業務に必要な専門能力は会社において計画的に行うことが望ましいと思います | 300名以下 | サービス |
現在の職務に関するブラッシュアップが優先 | 300名以下 | メーカー |
やらなければいけないとは感じているが、他の研修も乱立しており、なかなか手がつけられていない。評価との連動もできていない。 | 300名以下 | メーカー |
【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】「社員のリスキリング」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2024年9月20~27日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・担当者
有効回答:221件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当調査のURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
・引用元名称(調査レポートURL) と引用項目(図表No)
・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp
※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。
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