様々な産業の分野でデジタル化が進む中、その変化にスムーズに対応し、事業やサービスを構築していくことは多くの企業にとって急務であると言える。
そのためにも、時代の流れを見据えて今後必要とされるスキルや、知識を新たに習得する「リスキリング」の取り組みは重要性を増している。
特に、近年DX推進に取り組む企業が増える中、高度な専門性を持ったデジタル人材を獲得する戦略として、「リスキリング」が語られることが多くなっている。
こういったDX人材を育成するためには社内での研修のみでなく、社外の研修プログラムの活用や、他社・外部機関との連携等、多方面からの取り組みが必要となる。
HR総研は、「リスキリング」に関する企業の取り組み方針や取り組み実態について最新動向を調査した。調査結果をフリーコメントも含めて以下に報告する。

<概要>
●リスキリングに「取り組む必要がある」大企業では8割以上
●イノベーション創出を重視する企業はリスキリングの取り組みに積極的な傾向
●リスキリングに関する投資・育成の具体的計画の作成、大企業でも実施は2割
●デジタル・IT関連で習得してほしいスキルは「データ分析・統計」が最多で6割
●リスキリングを進めるうえでの課題「教育の時間の確保ができない」が最多
●社員のリスキリングに関する自由意見

リスキリングに「取り組む必要がある」大企業では8割以上

まず、企業がリスキリングに取り組む必要性についてどのように認識しているかを見てみる。
企業規模別に見てみると、従業員数1,001名以上の大企業では「取り組む必要がある」が86%となっており、301~1,000名の中堅企業では71%となっている。300名以下の中小企業では、「取り組む必要がある」は64%となっており、企業規模が大きいほど取り組む必要性があると感じている企業が多いことが分かる(図表1-1)。

【図表1-1】企業規模別 リスキリングに取り組む必要性に対する認識

HR総研:リスキリングに関するアンケート 結果報告

本調査では各企業の経営スタイルや事業方針に対する質問も設けており、これらの方針と各設問とのクロス集計も行った。ここでは、「新規事業の開拓を重視する」という方針と「既存事業の継続・拡大を重視する」という方針のどちらにより近いかという観点で企業を分け、それぞれのリスキリングの取り組みに対する意識を見ていく。
「新規事業の開拓を重視する」と回答した企業と「既存事業の継続・拡大を重視する」と回答した企業ともに、「取り組む必要がある」が73%となっており、両者の間に傾向の差は見られなかった。新規事業と既存事業のどちらを重視するかにかかわらず、リスキリングの取り組みが必要であると認識している企業が多いことが分かる(図表1-2)。


【図表1-2】事業方針別 リスキリングの取り組みの必要性に対する認識

HR総研:リスキリングに関するアンケート 結果報告

次に、「非連続的な成長につながるイノベーションを重視する」という方針と「堅実な改善活動を重視する」という方針のどちらにより近いかという観点で企業を分け、リスキリングの取り組みに対する意識を見ていく。
リスキリングに「取り組む必要がある」との回答は、「イノベーションを重視する」と回答した企業の78%に対して、「堅実な改善活動を重視する」と回答した企業では73%と、「イノベーションを重視する」と回答した企業の方が5ポイントと僅かに多いものの、ここでも顕著な傾向の差は見られなかった(図表1-3)。後述するが、リスキリングの目的として「業務効率化」を挙げている企業が多く、日頃の堅実な改善活動を推進するためにも、社員の学び直しが必要であると感じている企業が多いということだろう。


【図表1-3】経営スタイル別 リスキリングの取り組みの必要性に対する認識

HR総研:リスキリングに関するアンケート 結果報告

リスキリングに「取り組む必要はない」と回答した企業は、どのような理由でそう考えているのだろうか。
「取り組む必要がないと考える理由」については「他の優先課題ある」が最多で39%、次いで「事業戦略上特に必要がない」が30%、「取り組みを進められる人材が社内にいない」が26%などとなっている。「取り組む必要がない」と回答した企業は、リソースの有無や配分の問題で、相対的に取り組みの優先順位が下がっているケースも多いことが分かる(図表1-4)。

【図表1-4】社員のリスキリングに取り組む必要がないと考える理由

HR総研:リスキリングに関するアンケート 結果報告

「リスキリングに取り組む目的」については、「業務効率化のため」が最多で60%、次いで「社内のITリテラシーの底上げ」が42%、「既存事業のビジネスモデルの見直しのため」が40%などとなっている(図表1-5)。こういった「業務効率化」や「ITリテラシーの底上げ」といった目的から見ても、リスキリングの取り組みは、新しい分野に進出する企業や、イノベーションによる非連続的な成長を志向する企業に限らず、既存事業の中で成長を志向する企業にとっても、重要な取り組みであることが分かる。

【図表1-5】社員のリスキリングに取り組む目的

HR総研:リスキリングに関するアンケート 結果報告

イノベーション創出を重視する企業はリスキリングの取り組みに積極的な傾向

次に、実際の社員のリスキリングへの企業の取り組み状況を見てみる。
企業規模別に見てみると、大企業では「すでに取り組んでいる」が34%であるのに対し、中堅企業では「すでに取り組んでいる」が18%、中小企業では12%となっており、企業規模が大きいほど取り組みが進んでいることが分かる。「今後も取り組む予定はない」は、大企業では20%であるのに対し、中小企業では45%となっており、中小企業の半数近くが取り組む必要性を感じていないか、優先順位が低い、もしくは必要性を感じていながらも取り組めない状況にあることが分かる(図表2-1)。

【図表2-1】企業規模別 社員のリスキリングへの取り組み状況

HR総研:リスキリングに関するアンケート 結果報告

「新規事業の開拓を重視する」と「既存事業の継続・拡大を重視する」の方針別で見ると、「新規事業の開拓を重視する」方針の企業では、「すでに取り組んでいる」は20%、「現在は取り組んでいないが今後取り組む予定である」は19%となっているのに対し、「既存事業の継続・拡大を重視する」方針の企業では「既に取り組んでいる」は17%、「現在は取り組んでいないが今後取り組む予定である」は10%となっている。図表1-2で示したとおり「必要性の認識」については両者の差は見られなかったが、実際の取り組み状況については、「新規事業の開拓を重視する」企業の方がやや先行しているとともに、今後の取り組みに積極的であることがうかがえる(図表2-2)。

【図表2-2】事業方針別 社員のリスキリングへの取り組み状況

HR総研:リスキリングに関するアンケート 結果報告

「イノベーション重視」と「堅実な改善活動重視」の方針別で見ると、「イノベーション重視」の方針の企業では、「すでに取り組んでいる」は29%、「現在は取り組んでいないが今後取り組む予定である」は16%となっているのに対し、「堅実な改善活動重視」の方針の企業では「既に取り組んでいる」は13%、「現在は取り組んでいないが今後取り組む予定である」は12%となっている。こちらは両者の差がより顕著であり、「イノベーション重視」の企業の方が実際の取り組みが進んでいるとともに、今後の取り組みに対して積極的な意向を示していることが分かる(図表2-3)。

【図表2-3】経営スタイル別 社員のリスキリングへの取り組み状況

HR総研:リスキリングに関するアンケート 結果報告

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【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「リスキリング」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2022年8月29~9月5日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・担当者
有効回答:240件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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