企業規模が大きいほどメンター制度を導入
メンター(Mentor)の意味は、助言者、相談相手。新入社員や後輩を指導、助言する役割を担う先輩社員を指している。1980年代にアメリカで人材育成の手法として制度化され、日本でも導入が進んでいる。
似たような制度としてエルダー制度があるが、メンター制度は業務にとどまらず、人間関係、身内の悩みなど個人的な問題まで広く相談に乗る。リテンション政策の一環として導入することが多い。メンター制度を何らかの形で取り入れる企業は増加している。
今回の調査でOJTにメンター制度を取り入れているかどうかを問うたところ、「取り入れている」、「近いことを実施している」、「取り入れていない」は拮抗し、全体で3分の1ずつになっている。
ただ企業規模別では違いがある。「取り入れている」と「近いことを実施している」を合算すると、どの企業規模でも3分の2になっているが、制度としてメンター制度を取り入れている企業比率は「1001名以上」で48%と半数近くだが、「301名~1000名」では35%、「300名以下」では29%と減っていく。
【図表1】OJTへのメンター制度の導入状況(全体、規模別)
業種でも企業規模でも明確な差異がある「OJT指導員の設置」
メンターを昔ながらの用語に置き換えると「OJT指導員」になる。「新入社員が配属される各職場にOJT指導員を配置しているか」という設問に対しては業種でも企業規模でも明確な差異があった。非メーカー系が配置している比率が高く、企業規模が大きいほど比率が高い。
「1001名以上」のメーカー系では41%だが、非メーカー系の「1001名以上」では56%と15ポイントの差がある。「301名~1000名」でも「300名以下」でもメーカー系と非メーカー系では大きなポイント差がある。
また企業規模が大きいほど、OJT指導員を配置する率が高い。大企業ほど職場の人数も多く、特定の社員を指導員として決めておかないと、誰かが指導するだろうと皆が無関心になるか、逆に皆がそれぞれバラバラの指導をして新人を困惑させてしまうとの懸念があるのだろう。また、OJT指導員を務める若手社員にとっても育成の一環となると考えている企業も多い。
【図表2】新入社員が配属される各職場にOJT指導員を配置しているか(メーカー系、規模別)
【図表3】新入社員が配属される各職場にOJT指導員を配置しているか(非メーカー系、規模別)
OJT研修の悩みのほとんどは、指導員のばらつき
人事は他の部署の社員に協力を仰ぐことがある。採用では、リクルーターや面接官を依頼する。しかし事前のリクルーター教育、面接官教育を実施する企業は少数派だ。
OJT指導員に対する教育については、リクルーターや面接官に対する教育ほど実施率は低くはないが、やはりまだ足りない。
「実施している」のは、メーカー系「1001名以上」の企業が48%、非メーカー系「1001名以上」が60%とかなり高いが、「300名以下」はメーカー系、非メーカー系ともに20%台に止まっている。
OJTの課題をフリーコメントで聞いたところ、悩みのほとんどはOJT指導員のばらつき。新入社員は指導員を選べないが、人事のコメントによれば「指導員のレベルが異なりすぎている」という趣旨のコメントが大多数を占めている。であれば、なおさら指導員教育が必要であるが、各職場の理解を得て、その時間を捻出することが難しいのだろう。
【図表4】OJT指導員に専用の研修・勉強会の実施状況(メーカー系、規模別)
【図表5】OJT指導員に専用の研修・勉強会の実施状況(非メーカー系、規模別)
ゆとり世代は受け身的で真面目、意外にコミュニケーション力はある
ゆとり世代とは、2002年度学習指導要領による教育(ゆとり教育)を受けた世代を指す。狭義には、第1世代を1987年4月2日~1988年4月1日生まれとし、現役入学の場合、大卒では2010年入社がゆとり第1世代になる。
先行世代と有意な資質の違いがあるとされることが多い。さてHR総研の調査では、どのような結果が得られただろうか?
「特に変わらない」とする意見も7%あるが、ほとんどの人事はこの世代に共通する特徴があると考えている。
6割近い人事は「受身的である」(59%)、「まじめである」(58%)と考えている。
次いで多いのは、「精神的に弱い」(37%)、「他者との争いを好まない」(34%)、「失敗を恐れる」(31%)、「すぐ答えを求める」(30%)だ。
採用でもっとも重視されるのはコミュニケーション能力だが、「コミュニケーションが下手」という意見は22%と少ない。「堅実である」(19%)と「グループを好む」(12%)も少ない。
総じて言えば、前に踏み出さないがまじめ、もろくて他者と争わない、失敗を恐れて答えを求める、意外にコミュニケーション力はある、というのがゆとり世代の特徴のようだ。
【図表6】近年入いわゆる「ゆとり世代」の新卒新入社員の特徴
学力というより、精神年齢が幼いゆとり世代
ゆとり世代に対する人事のフリーコメントから、ゆとり世代を形容する言葉を抜き出してみよう。
「他責的」「小学生を相手にしている感覚」「素直・謙虚でない」「柔軟性に欠ける」「覇気がない」「保守的」「貪欲さがない」「ふて腐れた態度」「反省がない」。
ゆとり世代は、ゆとりカリキュラムによって学力が低下した世代とされることが多いが、学力よりも精神年齢が幼いという印象を受ける。
対処には各社とも苦労しているようだ。「指示する時は必ず理由も言う」「実習で競争原理を入れる」「褒める」「マインドセット研修」「メンタルヘルスを強化」「人事面談の回数を増やす」「相手の考えを理解するように努める」と苦労している。また研修を強化し、メンター制度を取り入れる企業が多い。
また、「マネジャークラスがゆとり世代の特徴を理解する機会を作っている」という声もある。これも重要な取り組みだ。
大企業ほど早く新入社員研修の内容を検討する
最後に翌年入社の新入社員研修の内容を企画検討する時期のデータを紹介しよう。
全体では4月入社を3カ月後に控えた1月が多く、続いて12月が多いが、規模によって差が大きい。
「1001名以上」の企業では、12月までに企画検討を始める企業が85%もあり、10月に検討を開始する企業が20%で最も多い。しかし「301名~1000名」では12月までに企画検討を始める企業は64%になり、「300名以下」では52%に過ぎない。いずれも1月に検討する企業が27%で最も多くなっている。
【図表7】翌年入社の新入社員研修の内容を企画検討する時期
【調査概要】
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:WEBアンケート
調査期間:2012年7月9日~19日
有効回答:329社(「300名以下」136社、「301~1000名」122社、「1001名以上」71社)
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