社内コミュニケーションに課題を感じつつも、どのような取組みがあるのか、どのような効果が得られるのかなどの疑問も多く、対策が後回しになっている企業も少なくないのではないだろうか。
HR総研では、社内コミュニケーションの実態を明らかにし、コミュニケーション促進のために効果がある施策は何かを探るアンケートを実施した。フリーコメントを含め、調査結果を以下に報告する。

コミュニケーション不足が業務障害になると9割近くが回答、エンゲージメントとの関連性は?

まず、自社において「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になると思うか」については、53%が「大いにそう思う」として圧倒的に多く、次いで「ややそう思う」が33%で、これらを合計した「そう思う」とする割合は86%となり、9割近くの企業において「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になる」と捉えていることが分かる(図表1-1)。

【図表1‐1】社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になると思うか

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

自社において「社内コミュニケーションに課題があるか」については、「ややあると思う」が50%で最も多く、「大いにあると思う」の13%と合計して「あると思う」が63%と6割を超えている。また、昨年調査(2024年調査)の結果(65%)から大きな変化は見られず、依然として社内コミュニケーションに対する課題感が強い企業が多いことがうかがえる(図表1‐2)。

【図表1‐2】自社における社内コミュニケーションの課題の有無

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

社内コミュニケーションの課題感別に従業員エンゲージメントの状態を見ると、社内コミュニケーションに「課題がない」企業群では従業員エンゲージメントが「非常に高い」(27%)と「やや高い」(41%)を合計した「高い」の割合が68%と約7割にも上る。同様に、社内コミュニケーションの課題感が「どちらとも言えない」企業群と「課題感がある」企業群ではともに26%と4分の1程度にとどまっている。また、「課題感がある」企業群では、「非常に低い」と「やや低い」を合計した「低い」の割合が31%と3割に上り、「課題がない」企業群の10%より21ポイントも高くなっている。したがって、社内コミュニケーションに課題感がない企業ほど従業員エンゲージメントが顕著に高いことが分かる(図表1‐3)。

【図表1‐3】社内コミュニケーション課題の有無別 従業員エンゲージメント

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

部門間コミュニケーションに課題を抱える企業が6割超

「社内コミュニケーションに課題がある関係間」については、「部門間」が最多で65%、次いで「経営層と社員」が61%、「部署内のメンバー同士」が43%などとなっている。上位2項目は6割を超えており、部門や階層を横断する関係間について、課題を抱えている企業が多いことが分かる。特に「部門間」については、昨年調査においても全ての企業規模で最多となり、大企業に至っては7割以上にも上り、継続して課題感の強い項目であることが分かる。その他、部署内でも「メンバー同士」(43%)、「部長とメンバー」(35%)、「課長とメンバー」(34%)と比較的高い数値を示している(図表2‐1)。

【図表2‐1】社内コミュニケーションに課題がある関係間

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

「コミュニケーション不全による業務の障害」については「迅速な情報共有」が最多で62%、次いで「目指す方向への認識の統一」と「部門間・事業所間の連携」がともに52%、「部署内のチームビルディング」が45%などとなっている。また、「業務へのモチベーション維持向上」(41%)や「エンゲージメント向上」(38%)といった項目も比較的高い数値を示しており、コミュニケーション不全が、情報伝達の遅延や部門間連携不足といった直接的な障害を引き起こしているだけでなく、従業員のパフォーマンスや心理面についてもマイナスの影響を及ぼしていることがうかがえる(図表2‐2)。

【図表2‐2】コミュニケーション不全による業務の障害

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

コミュニケーション不全の原因、「管理職のコミュニケーション力」がトップ

「自社における社内コミュニケーション不全の原因」について企業規模別に見ると、1,001名以上の大企業では「管理職のコミュニケーション力」が最多で41%、次いで「組織風土・社風」が36%、「社員のコミュニケーション力」が35%などとなっている。301~1,000名の中堅企業では「管理職のコミュニケーション力」と「組織風土・社風」がともに最多で48%となっている。300名以下の中小企業では「経営層のコミュニケーション力」が最多で39%、次いで「社員のコミュニケーション力」が34%となっている。
全ての企業規模で「管理職のコミュニケーション力」が最多となる一方、企業規模による顕著な違いとしては、中堅企業では「組織風土・社風」や「管理職のコミュニケーション力」といった組織全体に関わる要因が高い割合を示しているのに対し、中小企業では「経営層のコミュニケーション力」が他の規模と比較して高く、社内コミュニケーション状況に対する経営層の影響力の大きさがうかがえる。また、大企業では「働き方の多様化(フレックス、テレワーク等)」が33%と高い割合を示しており、多様な働き方が可能となる制度の導入が進む大企業ならではの社内コミュニケーション課題が顕在化していることが推察される(図表3‐1)。

【図表3‐1】企業規模別 自社における社内コミュニケーション不全の原因

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

社内コミュニケーションを阻害している原因について、フリーコメントで得られたものの中から主な意見を抜粋して、以下に紹介する(図表3‐2)。

【図表3‐2】社内コミュニケーションを阻害している原因

社内コミュニケーションを阻害している原因従業員規模業種
離職率が高く、即戦力を求めがちなため、人を育てて、チームビルディングするという風土が希薄になってしまっている1,001名以上サービス
世代間ギャップ1,001名以上サービス
「何でも言ってね」と言いつつ、ほぼ上位者だけが話すという聞く姿勢のなさ1,001名以上メーカー
1on1が各役職者に任されたままになっている、他部署を含む業務ライン以外の役職者との1on1ができない、オンラインミーティングでカメラオフがデフォルトになっている1,001名以上情報・通信
人員不足で役職者も現場業務が忙しく、コミュニケーションをとる時間がない301~1,000名サービス
コロナ禍以降、それまで対面で実施していたことが、オンライン及びメールがメインになってしまった301~1,000名メーカー
管理職が部下教育にかける時間が少ない。 世代間ギャップ301~1,000名メーカー
ハラスメントに関する正しい認識に自信が持てないため、遠慮がちになっている部分がある300名以下サービス
リモートワーク、フレックスなど柔軟な働き方ができるために、他の社員とのコミュニケーションは意識的に機会を作らないと優先度が下がりがちになる300名以下サービス
対面コミュニケーションの減少により全てのシチュエーションでの対応スキル継承ができていない300名以下メーカー
内向的な若手社員が多いため、ベテラン・経営層から見ると育てにくく感じる部分がある300名以下メーカー

社内コミュニケーションが活性化している企業が取り組んでいる施策は?

自社における社内コミュニケーション状況について、一年前からの変化を見てみる。「変化なし」が最多で64%と6割以上に上っており、「非常に活性化している」(3%)と「やや活性化している」(25%)との合計が28%で3割近くとなっている。一方、「非常に悪化している」(1%)と「やや悪化している」(7%)との合計は8%となっており、活性化していると感じている層の割合の方が20ポイント高いことが分かる(図表4‐1)。

【図表4‐1】一年前からの社内コミュニケーションの変化

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

「利用の多い社内コミュニケーションの手段」について企業規模別に見てみると、大企業では「オンライン会議ツール」の利用率が78%と8割近くで最も高く、中堅企業(57%)や中小企業(47%)と比較して顕著に高いことが分かる。「対面」については、大企業(57%)に比べて中堅企業(75%)や中小企業(75%)のほうが高い割合を示している。大企業ではデジタルツールを活用して対面とのハイブリッドな社内コミュニケーションが進んでいる一方で、中堅・中小企業では対面コミュニケーションがメインであることが分かる。大企業では働き方の多様化が進むとともに、複数拠点や広範囲にわたる組織体制を持つことが多く、効率的なコミュニケーションのためにオンラインツールの導入が進みやすいといった事情も推察される。「電話」についてはいずれの企業規模でも4割程度以下にとどまっている。2020年1月調査の結果では、「電話」の割合は全体で半数近くに上っていたことを踏まえると、コロナ禍の影響もあり急速なオンラインツールの普及によって、「電話」のニーズが低下していることがうかがえる(図表4‐2)。

【図表4‐2】企業規模別 利用の多い社内コミュニケーションの手段

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

「社内コミュニケーション活性化のために実施している取組み」については、「1on1(個人面談)」が最多で49%、次いで「従業員アンケート」が36%、「管理職対象のコミュニケーション研修」が26%などで、多くの企業が個別対話の機会を重視し、従業員の意見を収集する施策を取り入れていることがうかがえる。特に「1on1(個人面談)」は約半数の企業が実施しており、対話によって従業員の考えや悩みを把握する手法が広く活用されていることが分かる。また、「一般社員対象のコミュニケーション研修」(22%)の実施も比較的多く、管理職だけでなく、全社員のコミュニケーション能力向上を重視する企業が一定数存在することが読み取れる(図表4‐3)。

【図表4‐3】社内コミュニケーション活性化のために実施している取組み

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

次に、1年前と比較した社内コミュニケーションの変化に基づき、「非常に活性化している」「やや活性化している」を合わせた「活性化している層」(以下同じ)と、「変化なし」「やや悪化している」「非常に悪化している」を合わせた「活性化していない層」(以下同じ)に分け、両者の取組みを比較する。活性化している層と活性化していない層の間で特に差が大きいのは、「経営層との定期面談・ミーティング」で、活性化している層では31%であるのに対し、活性化していない層では14%にとどまり、その差は17ポイントにも及ぶ。また、「1on1(個人面談)」についても活性化している層では59%に対し、活性化していない層では46%と、両者で13ポイントの差が見られる。いずれも双方向の対話を促進する仕組みであり、単に情報発信を増やすのではなく、経営層や管理職が現場の声を直接受け止める仕組みを構築することが、社内コミュニケーションの活性化に寄与するものと推察される(図表4‐4)。

【図表4‐4】社内コミュニケーション活性状況別 社内コミュニケーション活性化のために実施している取組み

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

部門間コミュニケーションが活性化している企業、オンライン会議ツールの活用率が27ポイント高い

自社における部門横断のコラボレーションの状況について、一年前からの変化を見てみる。「どちらとも言えない」が最多で48%と半数近くになっており、「非常に活発化している」(3%)と「やや活発化している」(26%)との合計が29%となっている。一方、「まったく活発化していない」(8%)と「あまり活発化していない」(15%)との合計は23%となっており、活発化していると感じている層の割合のほうがやや高いことが分かる(図表5‐1)。

【図表5‐1】一年前からの部門横断のコラボレーションの変化

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

「部門間コミュニケーション活性化のための取組み」については、「特になし」が最多で33%、次いで「社内勉強会や情報共有会の実施」が21%、「飲み会、食事会の推奨、補助」および「従業員アンケート」がともに19%などとなっている。前述のとおり、部門間の社内コミュニケーションに課題感を持つ企業が最多となる中、多くの企業では特に明確な施策を講じていない実態もある一方、情報共有や勉強会の実施、社員間の交流を促すイベントや制度が一定の割合で採用されていることが分かる(図表5‐2)。

【図表5‐2】部門間コミュニケーション活性化のための取組み

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

次に、1年前と比較した部門横断のコラボレーションの変化に基づき、「非常に活発化している」「やや活発化している」を合わせた「活発化している層」(以下同じ)と、「どちらとも言えない」「あまり活発化していない」「まったく活発化していない」を合わせた「活発化していない層」(以下同じ)に分け、両者の取組みを比較する。
活発化している層と活発化していない層の間で特に差が大きいのは、「部署横断型プロジェクトの推進」で、活発化している層では34%であるのに対して活発化していない層では9%にとどまり、その差は25ポイントとなっている。また、「社内勉強会や情報共有会の実施」についても活発化している層では39%なのに対し、活性化していない層では14%と、同じく25ポイントの差となっている(図表5‐3)。
いずれも単に情報を共有するだけでなく、部門を超えた共同作業の機会を提供し、相互理解や関係性の強化につながる取組みである点が特徴的である。

【図表5‐3】部門間コラボレーション状況別 部門間コミュニケーション活性化のために実施している取組み

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

次に、「利用の多い社内コミュニケーションの手段」について、部門横断のコラボレーションが活発化している層と活発化していない層に分けて見てみる。「オンライン会議ツール」については、活発化している層では78%と約8割となっているのに対し、活発化していない層では51%であり、両者の差は27ポイントとなっている。また、「対面での会議・ミーティング」に関しても、活発化している層の73%に対し、活発化していない層では57%にとどまり、16ポイントの差がある(図表5‐4)。
部門間のコラボレーションを促進するには、単に対面の機会を増やすだけでは十分とはいえず、柔軟かつ効果的な手段の組み合わせが求められる。デジタルツールを活用して距離や時間の制約を超えた円滑なコミュニケーションを図るとともに、必要に応じて対面の機会を適切に確保することが重要といえるだろう。

【図表5‐4】部門間コラボレーション状況別 利用の多い社内コミュニケーションの手段

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

次に、従業員の出社率について、部門横断のコラボレーションが活発化している層と活発化していない層に分けて比較した。活発化している層では「30%~50%未満」のハイブリッドワークが最多で20%となっているのに対し、活発化していない層では、「100%」(フル出社)が最多で30%となっている。
部門間コラボレーションが活発な企業ほど、柔軟な出社形態を取り入れていることが分かる(図表5‐5)。

【図表5‐5】部門間コラボレーション状況別 従業員の出社率

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

高エンゲージメント企業では1on1を月1回以上実施する割合が4割超

社内コミュニケーション活性化施策として「1on1」が最も多く挙がる中、「上司と部下の1on1の実施頻度」について見てみる。
企業規模別に1on1の実施頻度を見てみると、大企業では「四半期に1回程度」が最多で27%、次いで「月に1回程度」が22%となっている。一方で、「半年に1回程度以下」(22%)や「実施を推奨していない」(7%)の割合は相対的に低い。中堅企業では「半年に1回程度以下」が最多で43%、次いで「実施を推奨していない」が25%と、大企業に比べて1on1の実施頻度が低い傾向が見られる。中小企業でも「半年に1回程度以下」が22%と多く、「実施を推奨していない」は23%に上る。「四半期に1回程度」(20%)や「月に1回程度」(22%)の割合も見られるが、大企業と比べると実施頻度のばらつきが大きい。大企業では1on1の実施が比較的高頻度で行われる傾向がある一方、中堅企業や中小企業では1on1の実施頻度が低く、実施自体を推奨していない割合も高いことが分かる(図表6-1)。

【図表6‐1】企業規模別 上司と部下の1on1の実施頻度

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

「1on1で話している内容」については、「業務の進捗確認と困り事」が最多で81%、次いで「モチベーションや健康状態の確認」が43%、「部下のキャリア支援に関する内容」が40%などとなっている。
戦略的な議論や組織課題に関する対話の割合は低く、個別の業務フォローが話題の中心であることが分かる(図表6‐2)。

【図表6‐2】1on1で話している内容

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

次に、「上司と部下の1on1の実施頻度」について、高エンゲージメント企業と高エンゲージメント企業以外に分けて見てみる。月に1回以上実施している企業(「月に1回程度」「月に2回程度」「週に1回程度以上」の合計)の割合は、高エンゲージメント企業では42%であるのに対し、高エンゲージメント企業以外では24%となっており、高エンゲージメント企業ほど、上司と部下の1on1を頻繁に実施する傾向となっている(図表6‐3)。

【図表6‐3】エンゲージメント状態別 上司と部下の1on1の実施頻度

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

次に、「1on1で話している内容」について、高エンゲージメント企業と高エンゲージメント企業以外に分けて見てみる。
特に差が大きかったのは「モチベーションや健康状態の確認」で、高エンゲージメント企業では54%と過半数に上るのに対し、高エンゲージメント企業以外では37%で、17ポイントもの差異が生じている。また、「チーム内の人間関係や組織課題」、「プライベートの相互理解」についても、ともに高エンゲージメント企業の方が16ポイント上回っている(図表6‐4)。
このように、高エンゲージメント企業では業務進捗の確認にとどまらず、部下のモチベーションや健康状態、組織課題、プライベートの相互理解など、幅広いテーマについて1on1を実施している傾向がうかがえる。とはいえ、必ずしも最初から幅広いテーマでの対話ができるわけではなく、1on1を継続する中で、上司と部下の間で何でも話せる強い信頼関係が構築されるという相乗効果も得られることが期待される。

【図表6‐4】エンゲージメント状態別 1on1で話している内容

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2025 結果報告

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「社内コミュニケーション」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2025年1月29~2月7日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・担当者
有効回答:284件

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