中小企業だけ異なる傾向のメーカー
2011年度に実施した「マネジメント系研修」を聞いたところ、メーカーの企業規模別で非常に大きな違いが出た。もともと研修の回数自体が、規模が大きいほど多いという理由が考えられる。「実施していない」を除く項目のパーセントの総和を計算すると、メーカーの「1001名以上」は391%、「301名~1000名」は223%、「1~300名」は140%になる。
非メーカーは「1001名以上」が220%、「301名~1000名」が294%、「1~300名」が159%と差は少ない。
メーカーから検証してみよう。全体で多い順は「評価者研修」34%、「メンタルヘルス研修」33%、「目標管理研修」30%、「コーチング研修」24%、「意識改革研修」20%、「ハラスメント研修」18%だ。
「1001名以上」のメーカーでは、「評価者研修」61%、「メンタルヘルス研修」48%、「目標管理研修」48%、「コーチング研修」43%、「モチベーション研修」30%、「ハラスメント研修」30%、「意識改革研修」30%、「チームビルディング研修」26%、「経営分析・戦略研修」26%である。
「301名~1000名」では順番が変わり、「メンタルヘルス研修」41%、「評価者研修」36%、「目標管理研修」27%、「コーチング研修」27%、「チームビルディング研修」18%、「意識改革研修」18%、「ハラスメント研修」18%だ。
「1~300名」になると、大幅に変わってくる。「目標管理研修」20%、「経営分析・戦略研修」17%、「メンタルヘルス研修」17%、「意識改革研修」14%、「危機管理研修」14%、「モチベーション研修」11%である。
大手企業と中堅企業は似通っているが、中小企業は様変わりの傾向を見せている。
メーカー、非メーカーを問わず「メンタルヘルス研修」が重要なテーマ
非メーカーの研修を見てみよう。全体の順番は「評価者研修」34%、「メンタルヘルス研修」33%、「目標管理研修」28%、「チームビルディング研修」18%、「コーチング研修」17%、「ハラスメント研修」17%、「意識改革研修」14%、「プロジェクト管理研修」14%だ。
「1001名以上」では「評価者研修」55%、「メンタルヘルス研修」45%が高く、以下に「目標管理研修」25%、「コーチング研修」20%、「ハラスメント研修」20%、「意識改革研修」15%、「経営分析・戦略研修」15%だ。
「301名~1000名」になるとトップと2位の順番が逆転する。「メンタルヘルス研修」49%、「評価者研修」43%だ。続いて「目標管理研修」34%、「コーチング研修」31%、「ハラスメント研修」26%、「チームビルディング研修」26%、「モチベーション研修」20%、「プロジェクト管理研修」17%、「意識改革研修」17%と続いている。
メーカーでは大手と中堅の企業が似通っていて、中小企業が異なる傾向を示しているが、非メーカーでも同じようだ。「1~300名」の企業の研修は、「目標管理研修」24%、「評価者研修」20%、「チームビルディング研修」19%、「メンタルヘルス研修」19%、で、「プロジェクト管理研修」「意識改革研修」「経営分析・戦略研修」「危機管理研修」「ハラスメント研修」がそれぞれ11%だ。
メーカー、非メーカーを問わず「評価者研修」の実施率が高いのは当然のこととして、「メンタルヘルス研修」が重要なテーマになっていることが読み取れる。ただし「1~300名」の中小企業ではあまり研修は行われていない。
「危機管理」への取り組みは薄いようだ。東日本大震災によってBCP(事業継続計画)の重要性が指摘されているが、取り組んでいる様子はこのアンケートからは読み取れない。
社員のやる気を引き出す研修が重視される
マネジメント研修の今後の方向性を聞いたところ、「メンタルヘルス研修」「目標管理研修」などは今後も重視されるが、「評価者研修」と「ハラスメント研修」は低下傾向にある。
逆に高い伸びを示したのは「意識改革研修」と「モチベーション研修」だ。「チームビルディング研修」と「コーチング研修」も伸びている。意識改革、モチベーション、コーチング、チームビルディングは、社員のやる気を引き出し、チームで業績を上げることを狙っており、共通した目的を持つ研修と言えるだろう。
中堅企業で目立つ実施した研修と強化する研修の「ずれ」
観点を変えて、「今後、より強化するマネジメント研修」で聞いてみた。実施した研修ではかなりバラツキがあったが、「強化する」ではバラツキが少なくなっている。メーカーから見ていこう。
メーカー全体の数字を見ると、順番が変わっている。「メンタルヘルス研修」31%、「目標管理研修」30%、「意識改革研修」29%、「評価者研修」24%、「コーチング研修」24%、「モチベーション研修」23%である。
2011年度に実施した研修では、「評価者研修」→「メンタルヘルス研修」→「目標管理研修」→「コーチング研修」→「意識改革研修」→「ハラスメント研修」だった。
「1001名以上」では、「目標管理研修」30%、「評価者研修」22%、「危機管理研修」22%、「メンタルヘルス研修」22%、「コーチング研修」22%だ。続いて「チームビルディング研修」、「意識改革研修」、「ハラスメント研修」が17%で並んでいる。
「1001名以上」が2011年度に実施した研修では、「評価者研修」→「メンタルヘルス研修」→「目標管理研修」→「コーチング研修」→「モチベーション研修」・「ハラスメント研修」・「意識改革研修」→「チームビルディング研修」・「経営分析・戦略研修」だった。あまり変化はなさそうである。
「301名~1000名」では、「モチベーション研修」と「意識改革研修」がともに41%だ。「コーチング研修」36%、「メンタルヘルス研修」32%、「目標管理研修」27%、「チームビルディング研修」23%、「評価者研修」18%という順番だ。
「301名~1000名」の企業が2011年度に実施した研修では、「メンタルヘルス研修」→「評価者研修」→「目標管理研修」・「コーチング研修」→「チームビルディング研修」・「意識改革研修」・「ハラスメント研修」だったから、大きく変わっている。
「1~300名」では、「メンタルヘルス研修」37%、「目標管理研修」31%、「評価者研修」と「意識改革研修」は29%だ。続いて「危機管理研修」23%、そして「チームビルディング研修」、「モチベーション研修」、「コーチング研修」が17%で並んでいる。
「1~300名」の企業が2011年度に実施した研修では、「目標管理研修」→「経営分析・戦略研修」・「メンタルヘルス研修」→「意識改革研修」・「危機管理研修」→「モチベーション研修」だ。「301名~1000名」と比べれば変化は少ない。
「メンタルヘルス研修」で目立つ企業規模によるブレ
非メーカーの全体を見てみよう。強化したいマネジメント系研修は、「メンタルヘルス研修」30%、「評価者研修」と「意識改革研修」28%、「目標管理研修」27%、「モチベーション研修」26%、「コーチング研修」24%、「チームビルディング研修」23%である。
非メーカーの全体が2011年度に実施した研修の順位は、「評価者研修」→「メンタルヘルス研修」→「目標管理研修」→「チームビルディング研修」→「コーチング研修」・「ハラスメント研修」だったから、内容は似ている。
非メーカーの「1001名以上」が強化したいのは、「意識改革研修」35%、「モチベーション研修」30%、「コーチング研修」25%、「評価者研修」20%であり、「目標管理研修」、「チームビルディング研修」、「経営分析・戦略研修」、「ハラスメント研修」がそれぞれ15%だ。「メンタルヘルス研修」は10%と低いのが目立つ。
2011年度に実施した研修は、「評価者研修」→「メンタルヘルス研修」→「目標管理研修」→「コーチング研修」・「ハラスメント研修」→「意識改革研修」・「経営分析・戦略研修」だった。「メンタルヘルス研修」のポイントが低いのは、すでに実施率が高く、同程度でいいという評価なのだろうか。
非メーカーの「301名~1000名」が強化したいのは、「評価者研修」37%、「メンタルヘルス研修」34%、「目標管理研修」29%、「意識改革研修」と「コーチング研修」が23%、「プロジェクト管理研修」と「危機管理研修」が20%だ。
実施した研修の順位は、「メンタルヘルス研修」→「評価者研修」→「目標管理研修」→「コーチング研修」→「ハラスメント研修」・「チームビルディング研修」→「モチベーション研修」→「プロジェクト管理研修」・「意識改革研修」だった。強化したい研修と大差ない。
非メーカーの「1~300名」が強化したいのは、「メンタルヘルス研修」35%、「チームビルディング研修」31%、「目標管理研修」、「モチベーション研修」、「意識改革研修」がそれぞれ30%、「評価者研修」、「プロジェクト管理研修」、「コーチング研修」はそれぞれ24%だ。
「1~300名」の非メーカーが実施した研修は、「目標管理研修」→「評価者研修」→「チームビルディング研修」・「メンタルヘルス研修」、そして「プロジェクト管理研修」「意識改革研修」「経営分析・戦略研修」「危機管理研修」「ハラスメント研修」だった。あまり大きな違いはない。
実施した研修と強化したい研修を比較し、興味深く思えたのは「メンタルヘルス研修」だ。実施した研修では、メーカー、非メーカーともに「1001名以上」と「301名~1000名」では40%台と高く、「1~300名」では10数%と低かった。
ところが強化する研修では、メーカー、非メーカーともに「301名~1000名」と「1~300名」の企業が30%であるのに対し、「1001名以上」の企業はメーカーで22%、非メーカーに至っては10%ときわめて低くなっている。同程度の回数、内容でいいという評価なのかもしれない。
メーカーが非メーカーより10ポイント以上高い「語学研修」と「営業研修」
「2011年度に実施したビジネススキル系研修」でもっとも多いのは「ビジネスマナー研修」だった。メーカー全体では49%、非メーカー全体では41%ともっとも高い。ただし中堅社員向けの「ビジネスマナー研修」がそんなに多いとは思えないので、おそらく新入社員向けの「ビジネスマナー研修」が大量に混じっているのだと思われる。
「ビジネスマナー研修」を除くと、他のビジネススキル研修はメーカーと非メーカーでかなり異なっている。
メーカーの順位は、「営業研修」33%、「語学研修」と「ロジカルシンキング研修」が29%、「コンプライアンス研修」26%、「コミュニケーション研修」24%、「リーダーシップ研修」23%。
非メーカーは、「プレゼンテーション研修」と「ロジカルシンキング研修」が28%、「コミュニケーション研修」と「リーダーシップ研修」が27%、「コンプライアンス研修」24%、「語学研修」と「営業研修」が17%だ。
ほぼ数値が同じなのは「コミュニケーション研修」、「ロジカルシンキング研修」、「コンプライアンス研修」、「リーダーシップ研修」の4つ。「語学研修」と「営業研修」はメーカーが10ポイント以上高い。
メーカーは海外に輸出しているか、これから進出するかは別としてグローバル化の波に洗われるから「語学研修」が多いのだろう。また今回の調査では「営業研修」のポイントが高い。非メーカーは「営業研修」を人事部門ではなく、現場に委ねている例が多いのかもしれない。非メーカーは内需型が多く、「語学研修」が少ないのはうなずける。
今後に重要なのは「リーダーシップ研修」と「コミュニケーション研修」
「ビジネススキル系研修の今後の方向性」で、現在より数値が大きくなって目立つのは「リーダーシップ研修」(25%→33%)だ。「コミュニケーション研修」も25%→30%と増えている。
「キャリア開発研修」は13%→17%、「グローバル人材研修」は9%→11%、「面接官研修」は6%→10%と増えている。
減っているものの代表は「コンプライアンス研修」(25%→15%)だ。他の研修は能力開発につながるが、コンプライアンス(法令遵守)は成果に直結するものではないし、繰り返し受講する必然性が薄いからだろう。
強化するのは「リーダーシップ研修」。マネジメント人材の育成が急務
強化したいビジネススキル系研修では、メーカー、非メーカーともに「リーダーシップ研修」が1位だ。メーカーが33%、非メーカーが34%と高い。「今後の方向性」でも「リーダーシップ研修」はトップだった。しかし「実施したビジネススキル系研修」では5位程度だった。リーダーシップ研修を受講するのは中堅社員だろうから、マネジメント人材の育成が急務と人事担当者が認識しているのではないかと思う。
2位は「コミュニケーション研修」だが、メーカーは25%と比較的に低いが、非メーカーは33%と高い。非メーカーの方が他者との協同作業の機会が多いということだろう。3位は「ロジカルシンキング研修」で、メーカー23%、非メーカー25%だ。
4位はメーカーが「語学研修」(21%)であるのに対し、非メーカーでは「プレゼンテーション研修」(23%)だ。メーカーは海外とのコンタクトに語学力が必要であり、非メーカーでは提案能力が重視されている。
メーカーと非メーカーで差の大きい項目を見ると、「グローバル人材研修」はメーカー15%、非メーカー7%と2倍も違う。「語学研修」と合わせ、メーカーの方が明らかにグローバル志向が強い。
他の項目でメーカーが目立って高いのは「ファシリテーション研修」「ネゴシエーション研修」だ。海外の顧客や取引先との交渉には、国内取引先以上にこれらの能力が求められているのではないかと思われる。
非メーカーが高いのは「コミュニケーション研修」と「プレゼンテーション研修」以外では「ビジネスマナー研修」だ。
人材育成に関する新たな取り組み・施策
最後に人材育成に関する新たな取り組み・施策に関するフリーコメントを紹介しよう。
◇研修形式
・研修内容を座学から、アクションラーニング的な形式への転換を検討し始めた。
◇経営との関係
・戦略人事、人事・人材育成部門が経営に積極的に参画すること。
・人事・人財育成部門の直接的経営参加、いわゆる戦略人事。
◇語学・海外
・20代の社員の語学力の底上げ(TOEICスコア600点以上)をしようとしている。
・海外研修生を増やし、グローバルに活躍できる人材を育成。
・外国人社員に特化した研修。
・入社2-3年目を海外トレーニーとして海外拠点に派遣する。
・海外人材の研修を通じた日本人社員との交流による活性化。
◇選抜・キャリアパス
・今後ジョブローテーションやキャリアパス制度の構築を図り、定着させていきたいと考えている。
・一律研修から指名選抜方式による研修参加者の絞込みと動機付け。
・選抜施策と不活性人材研修を1年がかりで進めていく。
◇資格
・プロフェッショナル認定制度の施行、スキルインベントリの実施。
・資格手当を拡充し、資格取得を促進しております。
・ビジネスコーチング、ビジネスマナーの認定資格を持った人財を増やしてくこと。
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