HR総研では、恒例の「人事のキャリアに関するアンケート」を2016年2月17日~2月25日に実施した。人事部門の組織としての役割の側面と、個人としてのキャリア意向の2つの側面から聞いてみた。

現在の役割は「人事管理を精密に行う(人材管理のエキスパート)」

“現在”人事部門はどのような役割を最も求めらていると思うかを聞いたところ、最多回答は「人事管理を精密に行う(人材管理のエキスパート)」で38%と4割近くに達した。次いで、「ビジネスの成果に貢献する(ビジネス戦略のパートナー)」が32%で続く。

[図表1]“現在”人事部門はどのような役割を最も求めらていると思うか

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

人事部門は「静」から「動」へ

では、“今後”人事部門はどのような役割を最も求められると思うかを聞いたところ、今度は「ビジネスの成果に貢献する(ビジネス戦略のパートナー)」が56%と過半数を占めただけでなく、次いで多いのは「組織・風土改革実行を中心的に担う(組織・風土変革のエージェント)」の28%で、現在最も求められているとする「人事管理を精密に行う(人材管理のエキスパート)」はわずか9%にまで減少してしまう。人事部門は、これまでの精密な管理部門という「静」のイメージから、「戦略」「変革」といった「動」のイメージへ変貌すると捉えられている。

[図表2]“現在”人事部門はどのような役割を最も求められると思うか

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

今後ますます高まる人事部門の役割

今後人事部門の役割は高まると思うかと聞いたところ、「大いに高まる」25%、「高まる」45%と7割の人事が高まると予想。フリーコメントを見ても、「人事スタッフに求めらる能力は、より専門化・高度化していく」「事業や部門を横串で刺すことができるのは、人事の特権」「ビジネス戦略に対応した人事戦略を打ち出せるか否かで会社の命運が分かれる」「組織が拡大する中で優秀な人材の確保と育成を主導的に行う必要がある」「あらゆるものがオートメーション化を進める中で、この分野だけは機械化やシステム化が難しい」など、人事部門が担うべき役割が変化しつつあることがうかがえる。

[図表3]人事部門の今後の役割

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

現在のパフォーマンスには厳しい評価

現在の人事部門のパフォーマンスの点数を聞いたところ、「70点以上」の及第点を付けた人事はわずか12%と少数派。最も多かったのは、及第点まであと一歩という「50~70点未満」の45%だが、中には「30点未満」という厳しい自己評価もある。厳しい評価の理由では、「経営者と従業員の期待に応えていない」「マネジメント力と大局観が不足」「人事主導のアクションが少ない」「問題が発生した後に後手後手で対処」「人員不足」といった声が挙がっている。

[図表4]人事部門のパフォーマンス

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

人事部門に必要なのは「コミュニケーション能力」「企画・戦略立案力」

人事部門の業務を遂行する上で必要な能力・スキルを複数選択してもらったところ、トップは「コミュニケーション能力」の79%、次いで「企画・戦略立案力」72%、「専門知識の高さ」63%と続く。また、「社内人脈」56%、「社外人脈」48%と「人脈」を重視する傾向がある。
今後、「ビジネスの成果に貢献する(ビジネス戦略のパートナー)」や「組織・風土改革実行を中心的に担う(組織・風土変革のエージェント)」へと役割が変わっていくとしたら、現在は低いポイントに甘んじている「リーダーシップ」(39%)、「プレゼン力」(30%)、「目標達成意欲」(25%)などを伸ばしていく必要があるだろう。

[図表5]人事部門の業務を遂行する上で必要な能力・スキル

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

現場を知らなくて人事管理はできない

人事部門のキャリアパスはどうあるべきかを聞いたところ、「人事の専門家としてずっと管理部門での経験を積むべき」とする考えは15%と少数派で、最も多かったのは「最初は現場に配属し、その後管理部門での経験を積むべき」(62%)で6割を超えている。現場を知らずして、マネジメントはできないというこどある。

[図表6]あるべき人事部門のキャリアパス

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

中堅メーカーで突出する「ライフキャリア」志向

今後も人事部門でキャリアを積みたいかを聞いたところ、「ライフキャリアとしたい」45%、「ある程度人事でキャリアを積みたい」42%と9割近い人事がさらにキャリアを高めることに意欲的であるという結果に。「ライフキャリアとしたい」としたいと声は特にメーカーで多く、メーカー全体では51%と過半数になる。中でも中堅メーカーの人事では「ライフキャリアとしたい」が65%と突出している。入社してからの異動パターンを見ると、メーカーの方が「異動せずずっと人事」というパターンが多くなっており、その影響もあるだろう。

[図表7]今後の人事部門でのキャリア

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

専門家としての能力向上に熱心な人事

人事分野の専門家として能力向上に努めているかを聞いたところ、「常に努めている」27%、「努めている方だと思う」55%と8割以上の担当者が能力向上に取り組んでいると回答している。「ライフキャリアとしたい」「ある程度人事でキャリアを積みたい」とする担当者が9割近いことと符合する結果となっている。こちらの設問でも、前向き派はメーカーの方が高いポイントとなっている。

[図表8]人事分野の専門家として能力向上

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

社外ネットワークは10名以下が8割

仕事上の情報交換ができる社外の人事担当者(経験者含む)のネットワークを聞いたところ、「3~5名」が32%で最も多く、中には「ネットワークはない(0名)」という人も11%いた。「10名以下」の合計は8割を超え、“活きた他社事例”情報の入手に苦労している姿が浮かぶ。何か新しいことを始めようとするとき、すでに経験している企業の情報は大いに参考になるものである。情報交換ができる社外の人脈・ネットワークの構築も、人事には極めて重要である。同業、異業種の分け隔てなく、人脈・ネットワークを作れそうな機会を自ら作り出す努力が必要であろう。

[図表9]仕事上の情報交換ができる社外の人脈・ネットワーク

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

半数の企業が「他社事例を収集できていない」

人事業務を遂行する上で他社事例を必要としているかを聞いたところ、「必要としており、(他社事例を)収集できている」(37%)を「必要としているが、(他社事例を)収集できていない」が48%と大きく上回っている。社外の人脈・ネットワークの少なさが起因している。

[図表10]他社事例の必要性

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

最も関心があるのは人材教育

他社事例として関心のある領域を聞いたところ、最も多かったのは「教育」の63%、次いで「人事企画」56%、「採用」51%と続く。過半数の企業が関心を寄せるのはこの3つである。
企業規模別にみると、他社事例に関心が強いのは中小企業に多く、「教育」68%、「採用」59%、「人事企画」58%となっている。

[図表11]関心のある他社事例の領域

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

半数が5千円以上を自己投資

自身のキャリアアップに向けた自己投資額の月平均を聞いたところ、5千円以上とする人が半数近く、1万円以上とする人も2割に達する。会社による支援だけでなく、自己投資する真面目さがうかがえる。

[図表12]キャリアアップに向けた自己投資月額

「人事のキャリアに関するアンケート」調査結果

【調査概要】

調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2016年2月17日~2月25日
有効回答:195社(1001名以上:55社、301~1000名:55社、300名以下:85社)

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