今後も続くであろうVUCAの時代を生き残り、企業が持続的な成長を果たすために「人的資本経営」の推進を重視する動きが、企業の間で広がっている。また、2022年8月30日に内閣官房より公表された人的資本に関する開示のガイドラインである「人的資本可視化指針」により、今年度より上場企業には有価証券報告書で複数項目の開示が義務化された。
このような動きを受けて、HR総研では、人的資本経営の捉え方や取組みの実態を把握するアンケートを実施した。本調査第2報の本レポートでは、主に「人的資本開示」について以下に報告する。

<概要>
●人的資本経営の取り組み期間「半年~2年以内」に集中し6割程度
●革新型タイプの企業群では8割が取り組む、昨年より大幅増加
●人的資本情報の開示状況、大企業と中堅・中小企業の差が顕著
●人的資本の開示項目、「多様性」が増加傾向
●人的資本経営による企業の変化、「経営層の意識・行動」で先に表れる傾向か
●今後、6割以上の企業が現状維持以上で推進する意向

人的資本経営の取り組み期間「半年~2年以内」に集中し6割程度

まず、人的資本経営の取り組み状況を確認する。
全体では「取組みを開始した段階」が24%、「安定的に取組みを継続中」が14%で、これらを合計して「取り組み中」の割合は38%と4割近くとなっている。また、これに「取組みへの準備中」の13%も合わせると約半数が前向きに取り組み始めていることがうかがえる(図表1-1)。

【図表1-1】「人的資本経営」の取り組み状況

HR総研:「人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート2023 結果報告(第2報)

また、取り組み期間の分布を見ると、企業規模別の大きな違いはなく、「半年~1年以内」、「1~2年以内」に取り組み企業の多くが集まっていることが分かる。従業員数1,001名以上の大企業では「半年~1年以内」が最多で36%、次いで「1~2年以内」が26%となっており、これらを合計した「半年~2年以内」(以下同じ)が62%と6割以上に上っている。「半年~2年以内」の割合を見ると、301~1,000名の中堅企業では62%、300名以下の中小企業では66%と7割近くに上っている。『人材版伊藤レポート』が発表された2020年から3年近く経ち、『人材版伊藤レポート2.0』も昨年発表されたとともに、内閣官房からは『人的資本可視化指針』も発表されたことで、企業の人的資本経営に対する重視度が徐々に高まってきていることが背景にあると推測される。
さらに大企業では「3年以上前から」が21%と2割に上り、まだ少数派ではあるものの、コロナ禍前から継続的に取り組んでいる企業も一定数あることがうかがえる(図表1-2)。

【図表1-2】企業規模別 人的資本経営の取り組み期間(検討開始以降の期間)

HR総研:「人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート2023 結果報告(第2報)

革新型タイプの企業群では8割が取り組む、昨年より大幅増加

回答企業の主要事業における経営戦略タイプを、高品質の製品・サービス、低価格製品等により、業界変化に関係なく限定した領域の事業を守る「保守型」、リスクを取っても積極的に幅広く新規事業・市場を開拓し、市場変化に他社より迅速に対応する「革新型」、既存事業を守りつつ将来性のある事業等に高品質の後発製品・サービスを展開する「バランス型」、特定の戦略にこだわらず、市場や競合の動きに合わせながら事業展開する「自然型」の4つに分けて見てみると、最も多いのは「バランス型」で51%と半数を占める。次いで「保守型」が25%などとなっている(図表2-1)。

【図表2-1】経営戦略タイプの分布

HR総研:「人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート2023 結果報告(第2報)

このような経営戦略タイプ別に、「人的資本経営」の取組み状況を見てみると、圧倒的に取り組みが進んでいるのは「革新型」の企業群で、「安定的に取組みを継続中」が32%、「取組みを開始した段階」が50%で、これらを合わせた「取り組み中」(以下同じ)は82%と8割にも上っている(図表2-2)。革新型に次いで「取り組み中」の割合が高いのは「バランス型」で38%と4割近くとなっている。

【図表2-2】経営戦略タイプ別 「人的資本経営」の取組み状況

HR総研:「人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート2023 結果報告(第2報)

現時点で8割以上が人的資本経営に取り組んでいる「革新型」の企業群について、昨年調査時(2022年調査時)の結果と比較してみると、昨年では「取り組み中」の割合は43%と4割程度にとどまっている。とはいえ、「取組みへの準備中」(9%)と「取組みを検討中」(35%)を合わせると44%あり、これらの企業の多くがこの一年で取組みを開始したと推測される。

【図表2-3】革新型タイプ 「人的資本経営」取組み状況の変化

HR総研:「人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート2023 結果報告(第2報)

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート        
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2023年4月17~24日
調査方法:WEBアンケート
調査対象: 企業の人事責任者・担当者
有効回答:221件

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※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
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