2023年 世界生計費調査(Cost of Living Survey)‐都市ランキング概要
マーサーの「2023年世界生計費調査(Cost of Living Survey)」( https://www.mercer.com/ja-jp/insights/total-rewards/talent-mobility-insights/cost-of-living/ )によると、香港(SAR)とシンガポールは海外で働く駐在員にとって世界で最も物価の高い2都市である。香港(SAR)は昨年に引き続いてトップを維持し、シンガポールは6つ順位を上げて2位となった。スイスのチューリッヒ(3位)、ジュネーブ(4位)、バーゼル(5位)、ベルン(7位)の4都市と、米国のニューヨーク(6位)、イスラエルのテルアビブ(8位)、デンマークのコペンハーゲン(9位)、バハマのナッソー(10位)がトップ10入りした。
アジアでは、49都市中9都市が順位を維持または下げた。これには2022年にトップ10入りしていた北京(13位)と東京(19位)が含まれている。また日本の都市は、順位を56下げた大阪(93位)、62下げた名古屋(113位)、65下げた横浜(115位)という結果だった。
本調査について、アジア太平洋地域モビリティリーダーであるトレイシー・マーは以下のように述べている。
「アジア圏においても、シンガポールなど主要な都市の多くでインフレが発生しています。今回シンガポールが大きく浮上したのは主に通貨高に加え、サプライチェーンの混乱や燃料費の高騰によるインフレが原因です。中国本土と日本のほぼすべての都市が、40~60位順位を下げています。その主な理由は、消費が比較的鈍いことと米ドルに対する通貨安です。日本も国内消費が低迷しており、パンデミックからの回復に影響を及ぼしているのでしょう」
2022年に世界経済を形成した主な要因は、2023年になっても影響し続けるだろう。最近、各国で導入された積極的な金融政策とそれに伴う厳格化により、今年多くの国では失業率の上昇とともに所得の伸びが鈍化すると考えられる。多くの国の債務水準は依然として高く、コアインフレ率は多くの市場でまだピークに達していない。インフレと為替レートの変動は、国際的に活躍する海外駐在員の給与や貯蓄に直接影響を与えている。
さらにリモートワークの普及によって、多くの従業員が自分の優先順位を見直し、ワークライフバランスを重視し自分が住む場所について考えるようになった。また、このような背景から多くの企業が仕事の仕組みを再構築する必要性に迫られている。多くの企業、特に厳しい労働市場で事業を展開している企業は、グローバルに分散した人材をどのように管理するかが問われる。
人事リーダーが取り組むべきもう一つの優先事項は、エンプロイーエクスペリエンスを向上させることだ。人材を惹きつけ維持するためだけでなく、全体的な企業のブランディングのためにも重要である。組織は既存のポリシーや慣行を定期的に見直し、その規程が現在の情勢において競争力を維持し適切であることを確認する必要がある。