KPMGコンサルティング株式会社
ピープル & チェンジ パートナー
寺?ア 文勝 氏
早稲田大学第一文学部心理学専修卒。事業会社の人事部門、銀行系シンクタンク、会計系コンサルティングファーム等を経て現職。組織人事コンサルタントとして20年で300社以上の実績を持つ。 主な著書に「実践人事制度改革」(労務行政)他多数。
より効果的な人事管理を実現するために、憶測を排除し、蓄積されたさまざまなデータによって将来を予測するHRアナリティクス。その対象は、採用からパフォーマンス予測、 最適配置、退職者予測、ヘルスケアまで多岐にわたる。テクノロジーの進化により、その精度はさらに高まっており、今後も実践する企業は拡大していくだろう。そうした中、『HRテクノロジーサミット2017』では、KPMGコンサルティング株式会社の寺崎文勝氏に、HRアナリティクスの現状や可能性について語っていただく。そこで本記事では、事前インタビューとして、当日お話いただく内容の一部をご紹介しよう。
そもそもHRアナリティクスとはどういったものなのか。そしてなぜ今、これほど世界的に重要視されるようになってきたのか。その背景についてお聞かせください。
寺崎氏昔から「経営はアートか、サイエンスか」という議論がありますが、強いて言えば経営はアート(直感)に近く、今までの経験に基づいて意思決定や判断をするのが一般的でした。HRアナリティクスは、そういった経験則や直感をサイエンス(人事分析)により検証・裏付けることで、人事マネジメント上の意思決定をより良いものにすることができます。ではなぜ近年、これほどまでに脚光を浴びるようになったのか。その背景にあるのが、ビッグデータの存在です。これまでビッグデータに基づいたデータ分析は、主に製造やマーケティングなどの領域で活用され、ビッグデータを活用できる人材も、そういった分野に独占されてきました。しかし近年は、データサイエンティストと呼ばれる人材が、人事の領域にも少しずつ流入してきており、HRアナリティクスの定着に一役買っています。
VUCA(ブーカ)という言葉に象徴されるような先行きの見えない時代においては、自分たちの立ち位置や戦況をリアルタイムで把握し、しっかりデータで検証していかないと、思い込みの経営判断だけでは足元をすくわれてしまいます。つまりこれからの時代はデータを基に成功の確率を上げていくことが求められるわけですが、ビッグデータ分析の進歩によって、それがより確実にスピーディーに実現できるようになったというわけですね。
寺崎氏 おっしゃる通りですね。取り扱えるデータ量が増加し、さらにそれを解析するためのテクノロジーも発達したため、データによるエビデンスの質が飛躍的に向上してきています。ただし単にデータを扱うだけでは意味がありません。その検証結果をどのように活用するかが重要なのです。HRアナリティクスは、これまでやってきたことが是か非かを検証することも可能ですが、それよりも将来に向けた意思決定、つまりパフォーマンス予測にこそ、大きな力を発揮します。さらに言うと、人間が気づかないようなことを予測してくれるのもHRアナリティクスの魅力の一つでしょう。例えば、有能な人材を採用する際に、将来に向けたパフォーマンス予測をするとします。通常これを人間が行う場合は、学生時代の成績やクラブ活動、その人の性格などから予測するわけですが、HRアナリティクスの場合、一見何の因果関係もないようなあらゆるデータを関連づけて、我々が思いも寄らなかったようなパフォーマンスを予測してくれるのです。そういう意味では、HRアナリティクスが人事マネジメントや人事業務プロセスのあり方を変える可能性も十分に考えられます。
HR アナリティクスを採用に活用するという点では、海外と比べて、日本企業は相当遅れているように感じますが、その要因は何なのでしょうか?
寺崎氏 一つは新卒一括採用など日本独自の採用慣行が影響していると思います。海外企業は幹部候補、営業、技術者など必要に応じてスペックで採用するため、細かなデータ分析が成り立つのですが、日本企業はゼネラリストタイプの人材を将来の幹部候補という形で一括採用するため、ターゲットが非常に抽象的となり、どうしてもパフォーマンス予測の精度が落ちてしまうのです。さらにもう一つの要因として、・・・
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早稲田大学第一文学部心理学専修卒。事業会社の人事部門、銀行系シンクタンク、会計系コンサルティングファーム等を経て現職。組織人事コンサルタントとして20年で300社以上の実績を持つ。 主な著書に「実践人事制度改革」(労務行政)他多数。