「ブラック企業」とは、法規や善良慣習を守らず、労働者を酷使するだけの「ここには就職しない方がいい」と入社を勧められない企業をいいます。英語では一般にスウェットショップ(sweatshop)、中国語では、血汗工場とも呼ばれています。
度を超えた長時間労働や顧客を犠牲・だまし討ちにする営業手法、パワーハラスメントなどで非合理的負担を与える労働を従業員に強制する体質の企業や法人を指し、犯罪にちかいグレーゾーン行為をさせられたり、適正な対価を得ることなく、激しい肉体労働や叱責で、身体的にも肉体的にも追い詰められる場合もあります。
かつては、暴力団の企業舎弟を指す言葉でしたが、バブル景気崩壊後、企業は「なるべく無駄を省く」「コスト削減」に比重をおいていくようになりました。そうなると、人件費削減で、リストラが始まり、残った末端の従業員に過酷な労働が課せられていきます。こうしたことから、「ブラック企業」という言葉が一般の企業や法人にも使われるようになりました。
そもそも「ブラック企業」という言葉が話題になったのは、過酷な労働により追い詰められ自殺する事件が増えてきたことにあります。また、2008年には、ブラック企業といわれる会社に勤める新入社員がインターネットに書いた話が書籍化され翌年映画化までされたこともあるでしょう。
ブラック企業には、労働集約的な体質の企業が多く、とにかく多くの人手を必要としているため、容易に入社することができ、いわゆる「代わりはいくらでもいる」という状態であり、末端の従業員は「使い捨て」同然で、常に「新入社員」を募集し続けています。
入社後は、厳しいノルマやサービス残業など一方的な企業利益を求められ、理不尽な仕打ちが多く、最後には、身も心も疲弊して自己都合退職に追い込まれます。求人広告などには常連で、短期間での離職率が高く、「人の出入りが激しい企業」が多いとされており、事件などで逮捕者が出ない限りなかなか表面化しにくいことが社会問題となっています。
これは、江戸時代に、勤勉で生産性を上げ、怠け者は村八分にされ、自発的に長時間労働をするという仕組みからはじまり、日本人の勤勉で責任感が強いという習性があり、日本では「ブラック企業」と呼ばれる企業が多いと言われています。
とはいえ、「ブラック企業」の定義はいまだ定まっておらず、求人の段階で見分けるのはなかなか困難です。ある人にはブラック企業だが、別の人にはホワイト企業というケースもよく見られます。求人情報だけで決めるのではなく、インターネットを活用し、従業員や顧客の生の声を集めたり、実際に企業説明会などに参加して雰囲気をつかみとり、自分自身で見極めることが、ポイントとなるでしょう。
また、企業側は、「ブラック企業」と言われないために、社内の風通しを良くし、企業理念などをきちんと浸透させ、無理に押し付けない、従業員の意見をきちんと吸い上げ、誠実に対応していくことが大切です。