「 RJP(Realistic Job Previewの略、直訳すると「現実的な仕事情報の事前開示」)」とは、企業が行う採用活動の時に、求職者に対して開示する情報のことを言います。その際、職務内容や組織環境の実態に徹した良い面だけでなく、悪い面も含めたリアリスティックな情報を与えることが特徴です。

正確な情報を開示することで、採用時点における企業と求職者間のミスマッチを減らし、結果、採用者の定着率を高めることができるとされています。このように正直な情報開示をしながら行う採用活動は、Realistic Recruitment(直訳すると「本音採用」)と呼ばれます。人材確保のための採用戦略というよりむしろ、人材定着を重視した理論です。


RJPの採用理論を提唱したアメリカの産業心理学者であるジョン・ワナウス氏(John P. Wanous)によると、RJPには主に次の4つの効果があります。

一つ目は「セルフスクリーニング」効果です。正確な情報を得ることで、求職者が自ら企業との適合性を判断できるようになります。
二つ目は「ワクチン」効果です。求職者が職務や職場に対して抱く過剰な期待を事前に冷却させ、入社後の失望を軽減させることで離職率を低下させます。
三つ目は「コミットメント」効果です。ありのままの情報を開示することで組織の誠実さをアピールし、結果、採用者の企業への帰属意識や愛着を深めさせます。
そして、4つ目は「役割明確化」効果です。採用活動時に、企業が人材に何を期待しているかを明確化することで、採用者は企業に求められている業務に従事していることを実感しやすくなり、仕事への満足度が高まり、意欲の向上にもつながります。

RJPの導入方法として、5つのガイドラインが示されています。
第一に、RJPの目的を求職者に説明し、誠実な情報提供を行います。
第二に、提供する情報にみあったメディアを使用し、信用できる情報のみを提供します。
第三に、上層部や外部が提供する情報だけではなく、現役の社員もリアルな情報を提供しましょう。
第四に、組織の実態にあわせて開示する良い情報と悪い情報とのバランスを考慮すること。
そして、第五に、これら情報開示を採用活動の早期段階で行うことです。

また、求職者と企業間のリアルな情報交換の場の拡充の方法として、会社訪問や説明会で実際の職務環境を見る機会を提供し、ジョブマッチング会を開催して求職者と社員間で面談や質疑応答しやすい環境を作りましょう。

そして更に一歩進めて、トライアル雇用やインターンシップといった体験的就業を通じて企業側は求職者の適性を判断する機会を、求職者は実際の職務内容を確認する機会を得る場も作りましょう。
このように企業と求職者が「選びあう関係」こそが、RJPを実践するにあたって最も重要とされる理論です。