「懲戒処分」とは「企業秩序違反行為」をした従業員に課す罰のことです。最高裁の判例ではこの「企業秩序」に関し、「企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なものであり、企業はこれを遵守させる権利を有し、また、労働者には労働契約を結ぶことで『企業秩序遵守義務』が発生する」としています。

具体的な企業秩序遵守義務は、就業規則の服務規程に書かれたものであり、これに違反した場合には懲戒処分の対象となるとされています。ただし、就業規則に書かれていれば無条件に認められるわけではありません。

たとえば、労働者の容姿や容貌についての定めや、職務遂行に直接関連のない私生活上の問題などです。これらは労働者のプライバシーや人格権を保護する観点から、企業の規模・業種、労働者の職種・地位、行為の行状・反社会性の程度などにより判例の判断が分かれています。

懲戒処分の種類としては、その程度により(1)戒告(口頭注意)、(2)けん責(始末書提出)、(3)減給、(4)出勤停止(停止中無給)、(5)降格、(6)諭旨解雇(退職勧告)、(7)懲戒解雇などがあります。
 
(3)の減給については、法律に制限があります。1つの事案における減給額は平均賃金の1日分の半額以下、減給の総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1以下でなければならないと定められています。

また、もっとも重い処分である(7)懲戒解雇については、退職金を支給しないことが多いようですが、懲戒解雇は有効であっても、退職金の全額不支給は認められない、という判決もあり、これも議論が分かれるところです。