「かとく」とは、2015年4月、厚生労働省が東京労働局と大阪労働局に新設した「過重労働撲滅特別対策班」の通称。悪質な長時間労働など、労働基準法に違反していることが疑われる、いわゆる「ブラック企業」の取り締まり強化を目的に発足した特別チームです。

「かとく」のメンバーは、警察と同様の司法警察員としての権限を持つ労働基準監督官。事業所に立ち入って調査や監督指導を行い、違法な事業者を検察庁に送検できるというように、その権限は強力です。

これまでに、「かとく」が長時間労働で調査、立件した実績としては、靴販売店のエービーシー・マート、ディスカウント店のドン・キホーテ、外食チェーンのサトレストランシステムズなどの事案があります。「かとく」発足後間もない2015年7月に起きた、エービーシー・マートの労働基準法違反事件では、同社が法定時間や労使協定で定めた上限を超える違法な長時間労働を従業員にさせたとして、企業と役員と店長2人が書類送検されました。

また、2016年10月には、広告代理店、電通の女性新入社員が過労で自殺した問題を受け、同社で長時間労働が常態化しているとみた「かとく」が同社本社への立ち入り調査を実施。同社の3つの支社で残業時間が過少申告されていた疑いがあることが明らかにされ、2017年4月、企業と支社の幹部3人が書類送検される結果となりました。

「かとく」に配属されているメンバーは、ベテランの労働基準監督官ぞろい。違法な長時間労働を従業員に強いている企業の中には、パソコンに保存した労働時間のデータを改ざんするといった悪質なケースもあるため、そうした隠蔽工作を見抜いたり、専門機器を用いてデータの解析を行うなど、IT系の高度な操作技術も駆使しながら任務に取り組んでいるといいます。

政府では、働き方改革の一環として長時間労働の削減を急ごうと、企業への監督指導・捜査体制を強化。当初、東京と大阪のみに設置された「かとく」担当官を、全都道府県の労働局に配置していく方針も打ち出されています。「かとく」の働きぶりがクローズアップされる機会は、今後も増えていきそうです。