厚生労働省から発表された2015年度(平成27)の有効求人倍率は1.23倍。これを上回る数値を過去にさかのぼって探してみると、バブル最終年の1991年度(平成2)の「1.34倍」まで見当たりません。売り手市場の継続どころか、ほとんどの採用担当者が経験したことのない厳しい状況に突入しています。まさに企業の「採用力」が問われる時代です。
第2回 なぜ人材紹介会社は良い人材を紹介してくれないのか?


このような状況の中でも、採用に成功している企業はどのように「採用力」を高めているのでしょうか?今回は「エージェント(人材紹介会社)との付き合い方」に焦点をあてた2社の例を紹介します。

事例からみるエージェントとのパートナーシップ

  「採用力」に不安を抱えるA社は、2000年代に大きく成長したIT系の企業です。社名も世の中に広く知れ渡り、業績も好調、大手一流企業と同等の待遇を準備しています。しかし採用は成功しているとは言えません。
 A社の採用担当は求人依頼を作成後、数十のエージェントに一斉送信、定期的に督促の連絡を送る、というスタイルで採用活動を行っています。本当はもう少し人選促進を行いたいのですが、どの部署も多忙で面接結果の通知や面接日程の設定に時間がかかり、そこまで手が回りません。それでも、A社はこれまでこの採用手法で成功していました。
紹介される候補者は多く、どちらかというと書類選考・一次面接の工数に課題を抱えていましたが、この2~3年で候補者の数がめっきり減ってしまいました。

 もう1社のB社は、知る人ぞ知る程度の知名度で、待遇もAほど良くはない部品メーカーです。付き合うエージェントは片手に収まる程度にもかかわらず、経営計画に沿った採用に成功しており、海外進出など、順調に事業拡大しています。入れ替わりはあるものの、一定数のエージェントのみで「採用力」を確保しています。

 さて、この2社、どこに「採用力」の差があるのでしょうか。それはエージェントとの付き合い方にありました。

エージェントが力を入れやすい理由とは

  ここで改めて冒頭のグラフを見てみましょう。この2~3年で有効求人倍率が1倍を超えました。大きく売り手市場にシフトした時期です。A社の候補者の数が減少した時期と重なります。
求人案件が少ないときにはエージェントにとってA社は注力顧客でしたが、ライバルとなる求人案件・顧客が数多く現れたため、エージェントがA社に割く時間が減ってしまったのです。
エージェントは企業と求職者の希望を叶えるとともに、自分の営業成績も達成しなければなりません。A社の場合、合否の理由が分からないため人選の改善が出来きず、また結果待ちの時間が長いことから求職者に避けられてしまうこともあり、エージェントの気持ちも離れてしまったのです。

 一方のB社の採用担当者は、エージェントへの求人内容の説明と選考のフィードバックにしっかり時間をさいていました。そのため、B社の付き合いのあるエージェントは、B社のことを良く知っています。担当者が変わった場合には、改めてエージェントに説明を行う徹底ぶりです。
 また、必要に応じて部門とエージェントがコミュニケーションを取る機会を作り、仕事のやりがいや求職者への訴求ポイントを伝え、求人に関する疑問点を解消し、場合によってはマーケットに沿って求人条件を緩和するようにしています。
そのため書類選考や一次面接の通過率が高く、エージェントとしても求人内容や採用基準が明確で、求職者に紹介しやすい会社としてエージェントをひきつけています。
  会社の知名度・人気・待遇などは、採用担当者が容易に変えられるものではありません。しかし求職者に会社の魅力や採用基準を明確に伝えられることができれば情報不足による取りこぼしを減らすことができ、結果的に「採用力」は高まっていくでしょう。

 ぜひ一度、エージェントと膝を突き合わせて話をしてみてください。
新たな発見があるかもしれません。

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