プロジェクトメンバーの声
●「入社3年目までの私たちに、このようなプロジェクトを任せていただき本当に感謝しています。
ご期待に応えられるよう、これからも全力で取り組みます」
●「中間報告会のためのレポートを作成する際、改めて今までを振り返ったが、本当に様々なことを経験できた。
また(上司の)皆さんから数多くの良い評価をいただくことができ、達成感を味わうことができた」
●「(上司から)成長しているという言葉をいただけたことが何よりうれしい。まだ残りの期間があるので、これからさらに
ダイワに貢献できるよう成長していきたい」
●「客観的にダイワを見つめ直すきっかけとなった。同期、後輩の活躍を目の当たりにし、大きな刺激を受けた」
●「若手社員同士でも、営業所が違うと一緒の仕事に取り組める機会はなかなかないので、このプロジェクトに参加できて
本当に良かった」
●「本社スタッフをはじめ、営業所の方々に数多くのご協力をいただけたことで、本当に『愛』のある会社だと改めて
実感した」
●「若手同士で何か1つのものを作り上げるという経験は、本当に楽しかったし勉強になった」
現場の仕事の関係で、このプロジェクトに途中から参加できなくなってしまった社員からも、次のようなメッセージをもらった。ある意味、このプロジェクトの影響度を物語っているのではないだろうか─。
「ダイワの社員の皆様、PJTメンバー、サポートをいただいているパフ様に対し、大変申し訳なく思っております。新規業務の立ち上げを担っていることもあり、和く和くプロジェクトにはほとんど参加することができませんでした。まずは、任されている現在の新規業務を安定させるため、日々従業員教育と業務改善を行い、自分が離れても問題のない現場を作ります。それが自分の成長につながると考えております。今後1日でも早く和く和くプロジェクトに参加できるよう日々取り組んでまいります」
プロジェクトに送り出した上司の声
若手メンバーを送り出した現場の上司は、抜けた穴の調整や仕事の段取りなど、ずいぶん苦労を強いられたことと思う。6月末の「中間報告会」には、全プロジェクトメンバーと現場の上司たちも参加して本社で開催したのだが、そのときの上司の声を集めてみた。●「私は面接官を担当したのですが、学生から『説明会の雰囲気が良かった』『現場では厳しい場面を見ることができて理解が
深まった』という声があった。内容も良かったんだろうと思うし、みんなの頑張りが伝わっていたのではないかと感じた」
●「この経験をもとに、営業所でもぜひ勉強会を開いてほしい」
●「この数ヵ月で、ずいぶん自信をつけてくれたようだ。今後も自信を持って仕事に当たってほしい」
●「部下2名の発表を聞いて目頭が熱くなった。成長したな、という感動を覚えた。今回のメンバーは、どえらい結果を
残してくれた」
●「(成果発表する部下の姿を見て)一皮むけたと思う。別人のようだ」
●「もともと力は持っているはずなのだが、今回それが花開いたのだと思う。ぜひ頑張ってほしい」
●「普段リーダーシップを発揮しない○○君なのに、驚くくらいに頑張っていた。倉庫見学会の司会進行をしている様子を
見て、成長しているなと思った。今後、非常に期待しています!」
上司たちも、このプロジェクトで若手メンバーが成長していったことを率直に認め、評価してくれた。今後の現場における期待も相当に膨らんだことだろう。
社長が語る感謝の言葉
社長の曽根に、改めて今回のプロジェクトについて語ってもらった─。「日本の人口減少に対しては、強い危機感を持っています。我々の業界においては特に、人材の確保、育成、定着というのは重要なテーマです。今回の『和く和くプロジェクト』は、その3つのテーマを同時にかなえるものではないかと最初から思っていました。
若手社員たちに新卒採用の仕事を任せるというのは、確かに一見、効率が悪く、失敗のリスクが高いように思えるかもしれません。また、それを見守る(結果的には失敗させるわけにはいかない)人事担当者たちにも大きなプレッシャーとストレスを与えるものであったと思います。プロジェクトメンバーを送り出さなければならなかった現場の上司や同僚たちにとっても、(一時的に業務負荷が増大するという意味で)辛いことだったろうと思います。
しかし、これらデメリットをはるかに上回る大きな効果が、このプロジェクトにはあったと確信しています。結果がはっきりと表れるのは数年先かもしれませんが、このタイミングで実行できてよかったと思います。快く理解し、協力してくれた現場の上司や社員のみなさん、自分たちで実行する以上の労力を払うことになった本社スタッフのみなさん、このプロジェクトを発案してくれた管理部の堂上君、そしてプロジェクトを力強く牽引してくれたパフさん、本当にありがとうございました」
互いに育て合う組織風土へ
新卒採用に巻き込まれることに否定的な現場社員は多い。「新卒採用なんかのために駆り出されるのは迷惑だ」とあからさまに抵抗する社員も少なくない。採用担当者でさえも、自らが手足を動かして学生と接触することを「非効率」という名のもとに避けようとする風潮がある。確かに仕事に効率性を求めるのは当然のことだし、ビジネスの最前線にいる現場の社員に、本業とは違う業務を行わせることに抵抗感があるのも無理ないことかもしれない。
しかし、それは実にもったいないことだ。効率性を追求するあまり、(組織に本来必要な)多様な価値観を受け入れるための寛容性や人間性が失われてしまっていないだろうか。採用に無関心であるということが、結局は自分の後輩や部下に対しても無関心な自分を作り出してしまっていないだろうか。無気力で不活性な、余裕のない組織風土を生み出す一因になってはいないだろうか。
新卒採用プロセスを利用して、現場の社員たちに多くの純粋な若者との交流の機会を持たせることで、社員たちは改めて自社の価値を発見できるはずだ。自分たちの将来の仲間は、自分たちで見つけ育てていく、という習慣が自然にできれば、会社は人間らしい温かい組織となり、ことさら大仰な教育制度など作らずとも、互いが互いを尊重し、助け合い、育て合う組織風土になるだろう。
今回ご紹介したダイワコーポレーションの事例を、そのままコピーして実践できる会社は少ないかもしれないが、一部だけでも参考にしてもらえたらと思う。
(人事マネジメント 2015年9月号より転載)
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