メンバーたちが初めに取り組んだのは、ダイワコーポレーションの強みと弱みを整理すること。

「学生に一番伝えたいダイワの強み」をテーマに議論を交わし、発表を行った。さらに、曽根の就職活動生を対象としたビジネス講座を見学し、社長の言葉から“ダイワイズム”を学んだ。会社への理解を改めて深めたメンバーたちは、会社説明会の開催に向けて具体的なプログラムや役割分担について考えることになったのだが……。

それぞれの変化、それぞれの成長

メンバーの中の3 名(二戸、新井、佐藤)にインタビューしてみた─。

 二戸(営業部、入社3 年目)は当初、普段交流のないメンバーとどのように連携していくべきか戸惑っていたという。
 「面倒見の良い先輩や上司に恵まれているし、同期間での交流も続いている。けれど、歳の近い他の事業所の後輩とは、今まで挨拶を交わす程度の関係性だったんです。でも、本番の日が迫るにつれて、 1 人で抱え込むのではなくいかに周囲を巻き込んでいくかを考えるようになりました」
と、自身の気持ちの変化を振り返った。そんな二戸は、説明会に関わるすべての社員と積極的にコミュニケーションを取り、協力を仰ぎながらプロジェクトをまとめ上げた。

 「中途半端な結果で終わるのは絶対に嫌だったんです」と負けん気の強さを見せた新井(営業部、入社1 年目)は、今まで苦手意識を感じていた“人前に出て話すこと”を克服。説明会本番ではジョークを織り交ぜた司会進行を行い、学生たちを楽しませた。

 説明会で使用するスライドを作成したのは佐藤(管理部、入社2 年目)。役割分担を決めるミーティング時に自ら手を挙げ大役を背負った。「メンバーからは“パワポのみずき”なんて呼ばれるようになってしまいました(笑)」と照れくさそうに笑う彼女の手掛けたスライドは、社内外でも大評判だった。

リーダー役の不満が爆発!

  すべてが順風満帆だったわけではない。実は、上のインタビューにも答えてもらった二戸と、このプロジェクトを仕掛けた堂上との間で激しいぶつかり合いがあった。

 説明会を企画するために途中何回かの打ち合わせを開こうとしたのだが、思うようにメンバーが集まらず、リーダー役を任されていた二戸のイライラは頂点に達していた。 
 二戸は、「こんなに集まらないんだったらやる意味ありません。なぜ俺だけこんな苦労させられるんですか。管理部は何やってるんですか。管理部がちゃんとしないからみんな集まらないんじゃないですか。俺ももうやりたくありません!」と、不満の丈を堂上にぶつけてきたのだという。

 「言い分は分かる。でもな、社長がこのプロジェクトにどれだけの期待をかけているか、お前は想像したことがあるか? 今回のプロジェクトを推進するために、多くの現場長に掛け合い、頭を下げ、理解を求めてきた。今までの採用の何倍ものお金と手間もかけてきた。それはただ単に新卒採用を成功させるという目的だけじゃない。お前たち若手を、この採用プロジェクトを通じて成長させたいと思ってのことなんだ。管理部への批判は構わないけど、そんな社長の想いを無にして、お前このプロジェクトを放り出せるのか」

 二戸はこのとき初めて、今回の採用プロジェクトの裏ミッションのことを理解した。採用だけが目的なのではない。採用を通じて自分たちが成長しなければ、今回のプロジェクトが成功したことにはならない。それは自分がリスペクトする社長の期待を裏切ることにもなる。
 この日を境に、二戸は人が変わったようにリーダーシップを発揮するようになったという。他人のことを褒めないことで有名な同期の島田も、「二戸のリーダーシップには驚いた。感謝している」と発言していたそうだ。

(人事マネジメント 2015年9月号より転載)
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