2013年9月、経団連(日本経済団体連合会)が新卒者の採用選考活動の時期の見直しを行うことを加盟する企業に求めた。2016年3月の卒業生より、広報開始時期をそれまでの(大学3年生時の)12月から翌年3月へ。選考開始時期を(大学4年生時の) 4月から8 月へと、それぞれ3~ 4ヵ月も繰り下げるという内容だ。
若手社員たちによる新卒採用への挑戦
経団連内には異論や反対意見があったものの、政府の強い意向で押し切られてしまった。このニュースを見た曽根は「これは困ったことになりそうだ。これまでと同じようにしていては優秀な人材は採用できないのではないか」と予感した。と同時に「政府も経団連も、いったい学生をどうするつもりだ」という義憤にも似た感情を抱いたという。
事実、この採用時期繰り下げは、多くの企業と学生を混乱に追い込んでしまっている。従来の(経団連に加盟する)大企業の選考は4月にほぼ終了していたので、そこから中小企業が採用を行う機会や時間は十分に確保されていた。大企業に縁のなかった学生も、そこから気持ちを切り替えて、自分に本当にふさわしい会社や仕事を考えることができた。
しかし、今回の時期繰り下げでは、それが不可能になってしまった。中小企業が大企業に伍して優秀な学生を獲得するには、今までとは違った戦略が求められるのだ。
この採用時期繰り下げ問題に直面することになる(2016年春の)新卒採用の戦略を立案する時期がいよいよやってきた。
2014年10月のある日、ダイワコーポレーションの採用担当者である堂上洋行氏(管理部人事採用担当係長、以下、堂上)は、社長の曽根に「2016年春の新卒採用は、若手社員に任せてみてはどうでしょうか?」と打診したのだった。
曽根は「堂上君、それだ! すぐにやってみよう」と、その案を即決で承認し、本格的なプランニングに取りかかった。
実は起案した堂上にも曽根にも、共通する狙いがあった。それは、大きな混乱と波乱が予想される2016年春の新卒採用を、若手社員の力を借りながら成功に導く、という表(オモテ)のミッションとは別に、若手社員たちの成長と組織全体の活性化を、新卒採用というシゴトをテコにしながら加速させていく、ということを裏(ウラ)のミッションとした、一石二鳥の作戦だった。
2014年10月のある日、ダイワコーポレーションの採用担当者である堂上洋行氏(管理部人事採用担当係長、以下、堂上)は、社長の曽根に「2016年春の新卒採用は、若手社員に任せてみてはどうでしょうか?」と打診したのだった。
曽根は「堂上君、それだ! すぐにやってみよう」と、その案を即決で承認し、本格的なプランニングに取りかかった。
実は起案した堂上にも曽根にも、共通する狙いがあった。それは、大きな混乱と波乱が予想される2016年春の新卒採用を、若手社員の力を借りながら成功に導く、という表(オモテ)のミッションとは別に、若手社員たちの成長と組織全体の活性化を、新卒採用というシゴトをテコにしながら加速させていく、ということを裏(ウラ)のミッションとした、一石二鳥の作戦だった。
立ちはだかる課題の山にパフ現る
「若手社員に新卒採用を任せる。それを若手社員の成長と組織全体の活性化につなげる」。画期的なアイデアではあるが、その計画、準備、実行には多くの困難が予想された。●若手社員たちは果たして主体的に手を挙げてくれるのか
●最初は面白がって手を挙げたとしても、社員のモチベーションは継続するのか
●現場の仕事と両立するのか、現場の上司は承認してくれるのか
●採用と教育と組織活性化に、どのようにつなげていくのが効果的なのか
●そもそも、企画設計とプロジェクトのマネジメントは誰が行うのか
社長の同意を取り付けたのはいいものの、堂上は頭を悩ませていた。そこで相談を持ちかけられたのが採用支援会社パフ(以下、パフ)の採用コンサルタントである木村友香(以下、木村)である。
以降、堂上と木村は綿密な打ち合わせを頻繁に行いながら、今回の若手社員たちによる新卒採用への挑戦「和く和くプロジェクト」の計画骨子を作り上げたのだった。
少し余談になるが、実はダイワの曽根と筆者とは、同社が新卒採用を始める数年前から個人的な交流があった。筆者が新卒に特化した採用支援会社であるパフを創業した際には、「いつかは釘崎さんに新卒採用を手伝ってもらえるような会社にしたい」と言ってくれていた。
そしてパフ創業から2年が過ぎたとき「いよいようちも新卒採用を真剣に考えてみたいと思います。釘崎さん手伝っていただけますよね?」という電話を曽根からもらった。同社の新卒採用の始まる瞬間だった。
あれから15年。今回の堂上の構想は、今までの採用を全面的に見直し、変革をもたらす内容のものである。従来の採用に囚われていては変革など望めない。とはいえ曽根の若者に対する熱い想いは同社の採用において必須のものである。
採用の変革と経営トップの想いを両立させてくれるパートナーとして、堂上が最終的に白羽の矢を立てたのがパフだったことは、筆者にはとても光栄なことであり、曽根にとっても嬉しいことであったに違いない。
(人事マネジメント 2015年9月号より転載)
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