永谷 研一 著
ProFuture株式会社 1,944円
人材育成担当者は「流行の研修」で人気のあるテーマを追い、参加社員の満足度の高い「カリスマ講師」を探す。研修で講師は情熱的に語り、感動させ、最後に盛り上げて社員が「参加して良かった」と成長を実感させようとする。
ProFuture株式会社 1,944円
人材育成担当者は「流行の研修」で人気のあるテーマを追い、参加社員の満足度の高い「カリスマ講師」を探す。研修で講師は情熱的に語り、感動させ、最後に盛り上げて社員が「参加して良かった」と成長を実感させようとする。
そして研修終了後には「Q1 この研修の満足度をお答えください。○大変満足 ○満足 ○ふつう ○やや不満足 ○不満足」、「Q2 その理由をお聞かせください。」という受講後アンケートで研修の効果を測ろうとする。満足度が高ければ、人材育成担当者と講師に高い評価が与えられ、その研修は続けられることになる。
ほとんどの企業がこういう研修を実施しているはずだ。研修の効果測定はむずかしいので、受講後アンケートによって満足度を測っている企業は多い。
講師にとって研修参加者の満足度を上げるのは比較的簡単だ。著者は「管理職やリーダー研修の場合、自分のことを話す時間が多いほど、満足度は上がる傾向にあります。また、若手の場合、最後に発表で盛り上げるなどフィナーレを感動的にすると、満足度は上がる傾向にあります」と書いている。満足度のスコアを上げるだけならいろいろなテクニックがあるということだ。著者はこういうやりかたに問題があると指摘し、「満足度のスコアが高いと行動に結びつきやすいといえるのか」と問うている。
そういう指摘を読みながら、「やりっぱなし研修」はメモリアルイベントに似ていると思った。結婚式も葬式もイベント満載だ。次から次へと司会者が感動的なシーンを演出していく。結婚式や葬儀は、2人を祝うため、故人を悼むために行われるのだと思うが、イベントが自己目的化し、過剰になっている。「やりっぱなし研修」も参加者の満足度は高いかもしれないが、終わってしまえば忘れてしまうことが多い。つまり研修の目的が見失われ、形骸化しているのだ。
研修の目的は、「社員の行動を変える」ことだ。本書では「行動定着」「行動変容」「行動習慣」という言葉を使っている。この場合の「行動」とは仕事上の行動、振る舞い方、考え方を指しており、いままでの自分の行動様式を脱ぎ捨て、新しい行動様式を身にまとうことによって、異なるビジネスパーソンになることができる。
「行動」はビジネスパーソンだけに重要なのではない。あらゆる人生のカギは「行動」にある。ノーベル平和賞を受賞した修道女マザー・テレザが語ったと伝えられている言葉に「思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから」というものがある。
松井秀喜選手の座右の銘として有名になった「心が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる 習慣が変われば人格が変わる 人格が変われば運命が変わる」はアメリカの心理学者ウィリアム・ジェイムズの言葉として伝えられている。
いずれも内容は似ている。思考や心が変わる(気づき)によって行動は変わる。行動が変わって習慣になれば、性格や人格が変わる。そしてそれがその人の運命になる。
研修も参加者の考え方に気づきを与え、行動を継続的に変えるものであるべきだ。ところが研修の多くは「やりっぱなし研修」になっている。やりっぱなし研修から脱するにはどうすれば良いのだろうか。
本書の後半で、研修の考え方、目的、やり方、検証などのテーマが詳説されている。前提になるのは、研修の目的をパラダイムシフトだ。研修の目的を研修当日に「知識や学びを得ること」に置くから「やりっぱなし研修」になる。研修の目的は「職場で行動を定着させること」なのである。
しかし、実践されない行動計画に基づいて実施される研修が多い。なぜ教えられたこと、習ったことが実践されないのか? それは人間が忘れる動物だからだ。ドイツの心理学者エビングハウスが研究した忘却曲線によれば、人間は1時間後に56%忘れ、1日後には74%忘れ、1カ月後には79%忘れる。
したがって研修は、「忘れてしまう」という弱点を補完する仕組みを取り入れなくてはならないのだ。では、その仕組みとは? 続きは本書で確認いただきたい。人材育成担当者必読の一冊と言える。
ほとんどの企業がこういう研修を実施しているはずだ。研修の効果測定はむずかしいので、受講後アンケートによって満足度を測っている企業は多い。
講師にとって研修参加者の満足度を上げるのは比較的簡単だ。著者は「管理職やリーダー研修の場合、自分のことを話す時間が多いほど、満足度は上がる傾向にあります。また、若手の場合、最後に発表で盛り上げるなどフィナーレを感動的にすると、満足度は上がる傾向にあります」と書いている。満足度のスコアを上げるだけならいろいろなテクニックがあるということだ。著者はこういうやりかたに問題があると指摘し、「満足度のスコアが高いと行動に結びつきやすいといえるのか」と問うている。
そういう指摘を読みながら、「やりっぱなし研修」はメモリアルイベントに似ていると思った。結婚式も葬式もイベント満載だ。次から次へと司会者が感動的なシーンを演出していく。結婚式や葬儀は、2人を祝うため、故人を悼むために行われるのだと思うが、イベントが自己目的化し、過剰になっている。「やりっぱなし研修」も参加者の満足度は高いかもしれないが、終わってしまえば忘れてしまうことが多い。つまり研修の目的が見失われ、形骸化しているのだ。
研修の目的は、「社員の行動を変える」ことだ。本書では「行動定着」「行動変容」「行動習慣」という言葉を使っている。この場合の「行動」とは仕事上の行動、振る舞い方、考え方を指しており、いままでの自分の行動様式を脱ぎ捨て、新しい行動様式を身にまとうことによって、異なるビジネスパーソンになることができる。
「行動」はビジネスパーソンだけに重要なのではない。あらゆる人生のカギは「行動」にある。ノーベル平和賞を受賞した修道女マザー・テレザが語ったと伝えられている言葉に「思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから」というものがある。
松井秀喜選手の座右の銘として有名になった「心が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる 習慣が変われば人格が変わる 人格が変われば運命が変わる」はアメリカの心理学者ウィリアム・ジェイムズの言葉として伝えられている。
いずれも内容は似ている。思考や心が変わる(気づき)によって行動は変わる。行動が変わって習慣になれば、性格や人格が変わる。そしてそれがその人の運命になる。
研修も参加者の考え方に気づきを与え、行動を継続的に変えるものであるべきだ。ところが研修の多くは「やりっぱなし研修」になっている。やりっぱなし研修から脱するにはどうすれば良いのだろうか。
本書の後半で、研修の考え方、目的、やり方、検証などのテーマが詳説されている。前提になるのは、研修の目的をパラダイムシフトだ。研修の目的を研修当日に「知識や学びを得ること」に置くから「やりっぱなし研修」になる。研修の目的は「職場で行動を定着させること」なのである。
しかし、実践されない行動計画に基づいて実施される研修が多い。なぜ教えられたこと、習ったことが実践されないのか? それは人間が忘れる動物だからだ。ドイツの心理学者エビングハウスが研究した忘却曲線によれば、人間は1時間後に56%忘れ、1日後には74%忘れ、1カ月後には79%忘れる。
したがって研修は、「忘れてしまう」という弱点を補完する仕組みを取り入れなくてはならないのだ。では、その仕組みとは? 続きは本書で確認いただきたい。人材育成担当者必読の一冊と言える。
出版記念セミナーのお知らせ
八重洲ブックセンター本店にて、出版記念セミナーを開催いたします。是非ご来場ください。
日時:2015年9月29日(火)19:00~
料金:入場無料(八重洲ブックセンターで書籍購入者対象)
場所:八重洲ブックセンター本店 8階ギャラリー
内容:永谷研一氏 講演会
【なぜ、何回研修しても社員の行動は変わらないのか?】
◆詳細はこちら
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