オバタカズユキ 著
ダイヤモンド社 1890円

 わたしは新卒採用の世界に入ってから30年ほどのキャリアを持っている。しかし大学についてあまり多くの知識を持っていなかった。早慶クラスや成成獨國武明、日東駒専、大東亜帝国などの大学グループ名はもちろん知っているが、一つひとつの大学のカラーについての理解は皆無だった。
大学図鑑!2013
昨年秋から月に2校ずつキャリアセンターを取材することになって、はじめて大学の個性を知った。同じ20歳前後の若者が在籍しているのに、大学のたたずまいも学生の表情も異なっている。キャンパスの空気も違う。少々驚いた。

 もっと知りたい、理解したいと思ったが、よい本がない。大学改革などを論じたお堅い本はあるが、読みやすく面白く記述された本がない。
 朝日新聞社の「大学ランキング」は以前に読んだことがある。豊富なデータが掲載されており、役に立つ。ただし難点もある。
 昨年4月に発行された「大学ランキング2012」は網羅的に750校を取り上げており、とても読み切れない。ページも1000ページ近くあり、判型もA5判と大きいから、重くて読みにくい。
 そんな時に友人から紹介されたのが「大学図鑑!」だ。もともとは進学希望の高校生と保護者向けの本だが、単なる進学本としての評価では気の毒だ。大学を知るための好著であり、人事や採用担当者にも役立つはずだ。2013年版は4月5日に発行されたばかりだ。

 「大学図鑑!」の本作りは「大学ランキング」と異なる。B6判と小さな判型を採用している。ページ数は500ページを超えているが、軽い紙を使っているので、重さは400グラムと軽い。取り上げている大学数は79校。2012年4月現在の大学数は、7校増えて787校になっているから、その1割だ。
 79校は有名大学ばかりだ。地域も首都圏と関西圏に集中しており、中国地方、北陸地方、四国などの大学はない。北海道、東北、九州は1校ずつ取り上げられているが、北大、東北大、九州大学であり、他の大学は取り上げられていない。
 79校に絞り込んだ理由は、取材量を増やして内容を濃くするためだろう。「大学図鑑!」は1999年春に初年度版が出て、2013年版で14冊目になる。その間にOB・OG・現役学生延べ5000人にインタビューしているそうだ。

 79の大学は偏差値をベースに9グループ分けされている。そしてそれぞれの大学に対しタイトルを付け、「歴史と基本的な立場」「学生の気質」「世間の評判」「基本データ」「環境問題!(キャンパス)」「学問&学部問題!」「~~生の生活と性格」「就職問題!」というテーマで書かれている。欄外コラムもあり、面白い。内容は整理されており、豊富だし、わたしが昨年秋から取材して知っている最新情報も盛り込まれている。
 記述は鮮やかだ。タイトルの切れ味もいい。関東私大Aグループには5校が取り上げられている。そのタイトルを紹介してみよう。たぶんどの大学のタイトルか、すぐにわかると思う。
 ・東京23区の隣でのびのびと「閉じている」ミニアメリカ大学
 ・多彩なキャラがざわざわ行き交うヒューマンスクランブル大学
 ・中堅研究職の卵たちがかもし出す善良な安定感
 ・社交的で合理的、明るく賢く咲き誇る私大の華的大学
 ・2011年度に看護学科を新設!女子パワーが目立つカトリック大学

 本書に対し、偏差値ベースでグループ分けし、国公立大学は旧帝大クラスと関東、関西の大学に限定していることへの批判があるかもしれない。しかし偏差値以外にグループ分けするモノサシはないだろう。また国立大学を網羅すれば、数十校も増え、地方で取材しなくてはならない。それは無理だと思う。
 この本の良さはデータをかき集めたものではなく、オバタカズユキ氏が取材して得た主観の鋭さにある。たぶん取材して書くには、これくらいの校数が限界だと思う。
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