近年はアルバイトやパートの採用に力を入れる企業が増え、退職後の男性や子育てが一段落した女性など、シニア層を戦力として雇用するケースも珍しくありません。一方で、自分よりもはるかに年上のスタッフを部下に持ち、接し方に悩む若い社員や店長も少なくないようです。そこで、株式会社フォーブレーン代表であり、『よくわかるパートタイマー活用の雇用管理』などの著書を持つキャリア・コンサルタント、稲好智子さんに、年長スタッフへの接し方のコツを伺いました!
最初に理解しておきたい、シニア層スタッフを雇用するメリット
コンビニエンスストアやスーパー、百貨店のお歳暮コーナーなどでの接客系、倉庫での商品仕分けなどの物流系、一般事務や経理などの事務系を中心に、シニア層が、アルバイト・パートとして勤務するケースが増えています。若くして管理職を任されている社員や店長にとっては、まさに“年上の部下”。普段のあいさつにすら気を遣う“やりにくい相手”と感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。そこで、まずはシニア層を雇用するメリットをおさらいしてみましょう。
【シニア層のスタッフに期待できる3つのポイント】
(1)定年退職をした人の場合、社会常識があり、これまでに培った知識や経験を生かした働きができる。
(2)主婦など、子育てを終えた人の場合は、短時間でさまざまな家事をやりくりすることに慣れているので、ムダを上手に省きながら作業をてきぱきとこなせることが多い。
(3)時間に余裕があることから、残業やシフトの交代をお願いしたとき、快く引き受けてくれる可能性が高い。
シニア層のスタッフは、うまく信頼関係を築ければ頼もしい味方になってくれます。とはいえ、年齢を重ねてきた彼らならではの問題行動があったり、若い社員のふとした言動がトラブルを招いたりすることがあるのも事実。お互いに良好な関係を築くには一体どうすればいいのでしょうか?
具体的なトラブルの事例を見ながら、解決策を探ってゆきましょう。
年長のスタッフが起こしがちなトラブル
今年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行されたことにより、これまで社員として勤めていた人が、定年後も同じ社内の他の職場でアルバイトやパートとして働くケースも増えています。なかでも男性に多いのが、社員時代に部下だった人に対して、アルバイトやパートなどの非正規社員になっても以前のように指示を出すなど、立場を超えた行動をとるケースです。または、「これまで面倒を見てきたのだから、これくらい融通してほしい」と、自分のわがままを通そうとする例も。
一方、女性スタッフにまつわるトラブルは、アルバイト、パートとして長年勤務した“現場のヌシ”的な存在がいるときに起きやすいですね。
職種によっては、管理職として新たに赴任した社員が、“現場のヌシ”的なベテランのスタッフから仕事を教えてもらうというのはよくある話。そのような現場ではベテランスタッフがシフトを勝手に組み替えたり、お店の運営方針に口を出したりと、社員に匹敵する権限を振りかざすことも……。社員側も、「この人は業務に詳しいから」と仕事をたくさん任せてしまい、「これだけ働いているのだから、社員並みの給与をください」と言われてしまう事例もあります。
また、女性の年長スタッフのなかには、お子さんやお孫さんの体調不良を理由に休みがちになる人も少なくないようですね。このような行動は、他のスタッフに悪影響を及ぼしたり、業務に支障をきたしたりするおそれがあります。若い社員・店長がこれらの問題を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?
事前に契約書を結ぶことが大切!
まず、アルバイト・パートに対して、彼らの仕事は何か、社員の仕事は何かをはっきりと区別すること。そして、それを周知することが大切です。この際は、仕事内容を詳細に記した契約書を作るのがおすすめ。異動した先で契約書が結ばれていなければ、自分が赴任したタイミングで新しく結ぶのがよいでしょう。というのも、あらかじめルールを作っておけば、先に述べた「これくらい融通してほしい」などのわがままへの「否」も言いやすくなり、ベテランスタッフに仕事を任せすぎることも、権限を超えた干渉も回避できるからです。
休みがちなスタッフには、「お約束した働き方と違います」と伝えて、勤務状況の改善を求めることもできます。年次有給休暇の範囲内で休むのは何も問題はありません。しかし、その日数を超えて休むことが頻発するのであれば、「うちの職場で働いていただくのは難しいと思います」と、ハッキリ伝えるのも大事です。