HRプロは、2011年4月22日から5月11日にかけて、日本の主要上場企業、未上場企業の採用担当者を対象にしたアンケート調査を実施した。その結果を報告する。
また本調査と並行し4月22日から4月29日にかけて、口コミ就職サイト「みんなの就職日記」が学生向け調査を行っている。そのデータもあわせて紹介する。
東日本大震災が起こった3月11日はセミナーの最盛期であり、選考が始まる直前だった。しかし大震災、津波、原発事故によって、風景は一変した。テレビは広告を入れずに24時間報道し続けた。震災の影響は被災地である東北地方にとどまらなかった。福島原発事故によって、関東地方が電力不足になった。その影響は、産業界、大学、交通、市民生活のすべてに及んだ。採用活動にも大きな影響が出た。その実態を検証してみよう。
また本調査と並行し4月22日から4月29日にかけて、口コミ就職サイト「みんなの就職日記」が学生向け調査を行っている。そのデータもあわせて紹介する。
東日本大震災が起こった3月11日はセミナーの最盛期であり、選考が始まる直前だった。しかし大震災、津波、原発事故によって、風景は一変した。テレビは広告を入れずに24時間報道し続けた。震災の影響は被災地である東北地方にとどまらなかった。福島原発事故によって、関東地方が電力不足になった。その影響は、産業界、大学、交通、市民生活のすべてに及んだ。採用活動にも大きな影響が出た。その実態を検証してみよう。
大手企業を中心に5月、6月に選考延期
図表1:東日本大震災による採用選考時期への影響3月11日(金)に起こった大震災の直後は、「被災地の学生のみ別対応」を表明する企業がほとんどだったが、翌週後半から全学生に対して選考延期を発表する企業が続出した。被災地への配慮も当然ながら、公共交通機関がいつ正常化するかが不明であり、計画停電の行方もはっきりしなかった(4月8日に解除が発表された)。そして3月開催予定のイベントがリセットされ、選考は事実上ストップした。
ただし、反応は企業規模によってかなり異なる。規模が小さいほど「予定通り実施」し、大規模になるほど「全学生に対し延期」している。従業員規模1~300名の企業では「予定通り実施」が3分の2に当たる66%なのに対し、「全学生に対し延期」は28%にとどまる。ところが1001名以上の企業になると、「予定通り実施」が27%に対し、「全学生に対し延期」は48%と半数近くになる。企業規模で数字が入れ替わっている。
大企業の選考ほど大震災の影響を受けている理由は、規模が大きい企業は東北地方に支社や取引先があることが多いので、採用以外でも大きな影響を受けた可能性が高いからだ。採用においても、東北地方の大学を対象にしており、例年どおりの3月後半や4月からの選考開始は物理的に困難だったと考えられる。
選考開始時期は業種によって異なる。銀行、証券、生損保は5月に変更した。電機、自動車、鉄鋼、食品業界などの大手メーカーと、JR東日本、NTT東日本と商社は6月に変更しており、生産体制や設備に被害を受けた企業が目立つ。
会社説明会参加者が大きく減り、面接数も比例して減少
図表2:会社説明会参加者数の増減会社説明会への参加学生数を見てみると、11年卒採用では対前年比で参加者が増えた企業が6割もあった。前年並みが3割で、減った企業は1割だった。12年卒採用は様変わりし、参加者が増えた企業は3割強と半減、減少してしまった企業は昨年の10%から25%になった。
もちろん、3月11日以降の会社説明会がほとんど中止になった影響もある。ただし、注意しなければならないのは、震災前から学生集客数の悪化が指摘されていたことだ。
図表3:面接者数の増減
説明会への参加者減は、面接に影響を与えている。説明会動員が増える局面では、面接受け入れ数には上限があるため、必ずしも説明会参加者数に比例して増えることはない。しかし、説明会動員が減る局面では、面接者数は減る。
スクリーニング通過者の比率が変わらなければ、選考母集団(=説明会参加者)の減少は選考対象者(=面接者)の減少につながるからだ。
説明会への参加者減は、面接に影響を与えている。説明会動員が増える局面では、面接受け入れ数には上限があるため、必ずしも説明会参加者数に比例して増えることはない。しかし、説明会動員が減る局面では、面接者数は減る。
スクリーニング通過者の比率が変わらなければ、選考母集団(=説明会参加者)の減少は選考対象者(=面接者)の減少につながるからだ。
約7割の企業が4月までに選考開始。 採用スケジュールは大幅に遅延
図表4:選考開始時期12年採用での選考は3月、4月に開始した企業が最も多く、19.8%と19.3%で計39.1%、2月以前開始を含めると7割近くに達する。逆に、未定を含め5月以降に開始する企業も3割以上ある。
もっとも大震災の影響は大きく、選考を3月までに開始していても、選考活動の中断を余儀なくされ、実質的な選考開始が4月にずれ込んだ企業も多いことだろう。
図表5:採用計画人数に対する現在の内定者数
採用スケジュールの遅れは内定出しの状況を見ると、明確に表れている。7割近くの企業が4月までに選考を開始しているが、内定を出している企業は5割強にとどまる。半数の企業は内定を出していない。
内定を出している企業も、採用計画数に対する進捗は芳しくない。91~110%が計画に対する妥当な内定数と考えられるが、10%未満の企業が6割近い。もっとも、採用計画数の1.5~2倍の内定をすでに出している企業も存在する。こんなに多くの内定を出した理由は、12年卒採用が長期化し、内定辞退が増加すると予想されるからだろう。
採用スケジュールの遅れは内定出しの状況を見ると、明確に表れている。7割近くの企業が4月までに選考を開始しているが、内定を出している企業は5割強にとどまる。半数の企業は内定を出していない。
内定を出している企業も、採用計画数に対する進捗は芳しくない。91~110%が計画に対する妥当な内定数と考えられるが、10%未満の企業が6割近い。もっとも、採用計画数の1.5~2倍の内定をすでに出している企業も存在する。こんなに多くの内定を出した理由は、12年卒採用が長期化し、内定辞退が増加すると予想されるからだろう。
内定出しのピークは5月末までだが、6月以降も続く
図表6:内定のピーク時期(予定)内定のピークはいつになるのだろうか。
11年卒採用では、4月に内定出しのピークを迎えた企業は事務系で43%、技術系で38%だった。ところが大震災の影響を受けた12年卒採用では事務系・技術系ともにピークは5月に移動している。
11年卒では、6月、7月、8月以降をひとくくりにし、「6月以降」として調査した。大震災によって選考が後ろ倒しになった12年卒では、6月前半・後半、7月前半・後半、8月以降と細かくしている。このデータを集計すると、事務系では6月以降に内定ピークを迎える企業が39%、技術系では36%と、とても多い。梅雨の時期も選考は続いているのだ。
図表7:今後の採用活動の予定
企業に採用選考活動の終了予定時期を聞いてみると、大震災によって後ろ倒しになっていることがはっきりわかる。4月末時点で選考をほぼ終了した企業は、わずか10%にとどまり、5月末までで終了予定と回答した企業を加えても28%にすぎない。6月末終了予定の企業(25%)を加えて、ようやく5割以上の企業で終了予定となる。
逆に言うと半数弱の企業の採用は、夏採用、秋採用へと継続されていく。本調査は4月末に行われたが、選考終了予定を9月以降の秋採用とする企業も2割ほどある。
企業に採用選考活動の終了予定時期を聞いてみると、大震災によって後ろ倒しになっていることがはっきりわかる。4月末時点で選考をほぼ終了した企業は、わずか10%にとどまり、5月末までで終了予定と回答した企業を加えても28%にすぎない。6月末終了予定の企業(25%)を加えて、ようやく5割以上の企業で終了予定となる。
逆に言うと半数弱の企業の採用は、夏採用、秋採用へと継続されていく。本調査は4月末に行われたが、選考終了予定を9月以降の秋採用とする企業も2割ほどある。
これからの採活は「攻め」と「守り」をバランスよく
図表8:今後の採用活動の施策選考中の学生だけで採用計画数を達成できなければ、新たに説明会を開催して選考対象者を増やしていくしかない。就職部・キャリアセンターとの関係強化を挙げる声も多い。 ただし、選考対象者を増やすことだけでなく、採用活動継続企業が例年以上に多いことから、内定者に対するフォローがとても重要である。
次回は、学生の動向をリポートする。
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