数年前のキャリアセンターと現在のキャリアセンターの違いは何か? それは負荷が極端に増大したことだ。2011年12月1日に13年卒の採用活動は始まったが、12年卒採用はまだ終わっていない。就活を始める3年生、まだ頑張っている4年生だけではない。就職留年者、未内定の卒業生という「就活生」もいる。
こんな環境で奮闘しているキャリアセンターの声を聞いてみよう。データは、前回同様、HRプロが11年8月16日から9月30日にかけて、全国362大学(国立57大学/公立26大学/私立279大学)を対象にした調査結果である。
こんな環境で奮闘しているキャリアセンターの声を聞いてみよう。データは、前回同様、HRプロが11年8月16日から9月30日にかけて、全国362大学(国立57大学/公立26大学/私立279大学)を対象にした調査結果である。
2012年卒学生の学内合同セミナーへの出席は漸増傾向
まず現在も活動を継続している12年卒学生の動きについて、キャリアセンターの声を紹介したい。学内で実施する合同セミナーへの参加学生数を11年卒学生と比べてみると、全体の4割の大学が「変わらない」と回答した。「かなり増えた」と「少し増えた」は合わせて35%。「少し減った」と「かなり減った」は合わせて25%だから、漸増傾向にあるようだ。
ただし、規模別ではかなり大きな違いがあり、「1000人」を境に異なる傾向になっている。「1000人以下」の大学では「かなり増えた」と「少し増えた」は22%であり、「少し減った」は26%もある。つまり減少傾向が読み取れる。
一方、「1001~5000人」の大学の「増えた」は37%、「5001人以上」の大学の「増えた」は42%と高い。
小規模校のキャリアセンターの課題は、学生の就職意欲の喚起と学内セミナーへの誘導にありそうだ。
図表1:学内合同セミナー参加学生数の対前年比
大規模校ほど支援環境が整っている
学内合同セミナーへの学生の誘導法についての回答を読むと、圧倒的に多いのは「書面の掲示・ポスター」(82%)だ。以下は、「学校の就職専用ホームページ」が56%、「PCメール」が51%、「携帯メール」が44%と、ネット系のメディアが並ぶ。意外なのは「紙DM」が22%とかなり高いことだ。「電話」は13%だが、すべての学生に対するものではなく、補助的な連絡に使っているのだろう。
規模別に見るとこちらでも「1000人」が境界になって異なる傾向になっている。「書面の掲示・ポスター」、「学校の就職専用ホームページ」、「PCメール」、「携帯メール」、「紙DM」のいずれの項目でも小規模校が低い。このあたりに、小規模校では、学内合同セミナーへの参加学生数が伸びない理由がありそうである。
学内合同セミナーは、その大学の学生を採用したい意欲の高い企業の集まりであり、これらの大学こそ学生の参加を促すことにもっと注力するべきであろう。
図表2:学内合同セミナーへの学生誘導方法
12年卒学生に充実した就職支援
12年卒学生で就職活動を継続している学生はまだ多いが、キャリアセンターはどのような就職支援を行っているのだろうか。回答を読むと、充実した支援を行っている様子がわかる。「職員による相談受付」は9割の大学が行い、「面接指導または模擬面接」の実施校は85%だ。「個別の会社紹介」を77%が行い、「専門キャリアカウンセラーによる指導」も65%が対応している。
「学内合同セミナー」については46%と半数を切っているが、大学によって企業誘致力にかなり大きな差があることが主な理由であろう。すべてのキャリアセンターが開催できるわけではない。
就職支援に関しては、学内合同セミナーの開催を除けば、規模の差はほとんど見られない。
図表3:12年卒学生への今後の就職支援
3分の2の大学が「既卒者の就職支援」を課題に
新卒学生の就職支援のほかに、キャリアセンターはどんな課題を抱えているのだろうか。「既卒者の就職支援」、「外国人留学生の就職支援」、「障がい者の就職支援」の三択で問うてみた。結果は一目瞭然。「既卒者の就職支援」が65%を占め、多くのキャリアセンターの課題になっている。「外国人留学生の就職支援」(45%)と「障がい者の就職支援」(40%)もかなり大きな数字である。
障がい者雇用は徐々に増えているが、就職支援には地道な努力が欠かせないだろう。中堅・中小企業の場合は1名、2名を採用すれば、法定雇用率1.8%を満たしてしまう。法定雇用率を満たす数の障がい者を採用した企業は、翌年の採用を手控えることもあるだろうから、キャリアセンターは新規受け入れ企業を開拓する必要がある。
外国人留学生については事情が異なる。数年前までは外国人留学生の採用市場はほとんど機能していなかったが、最近は市場が形成され始めている。ただし、外国人留学生を採用している企業でも、まだ多くの企業が高い日本語能力を求めており、それが留学生の就職率向上の壁となっている。
図表4:一般学生以外で課題となる就職支援
ほぼすべての大学が既卒者の就職を支援
「既卒者の就職支援」についてもう少し調べてみよう。ご存じのように政府は「大学既卒者の卒業後3年間は新卒扱い」を企業に求め、「3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金」「3年以内既卒者トライアル雇用奨励金」「既卒者育成支援奨励金」など至れり尽くせりの奨励金を用意している。大学では、既卒者の就職支援をどのように取り扱っているのだろうか。回答を読むと、93%とほとんどの大学で「すでに実施」しており、5%が「今後実施する予定」だ。両方を合わせると98%に達する。「実施する予定はない」大学は2%にすぎない。
ただし、規模別に見ると、小規模校での対応の遅れが目につく。未内定のまま卒業する学生は年々増え続け、そして毎年積み重ねられるのだから、3年以内を新卒扱いにしても、内定獲得競争は激化する一方だ。問題の根は深い。
図表5:既卒者の就職支援実施状況
強まりつつあるキャリアセンターと企業との連携
最後にキャリアセンターと企業との連携について述べたい。11年度から文部科学省の大学設置基準改訂によって、学生の就業力を高めるキャリア教育の実施が義務づけられた。大学はキャリア教育をどのように進めているのだろうか。企業は協力しているのだろうか。記述式で「キャリアセンターと企業が連携して実施しているキャリア教育の概要」を問い、144校から回答を得た。
企業と連携していない大学も数校あるが、全体的に見ると、企業との連携を強める傾向がうかがえる。
内容は従来からの就活定番メニュー(自己分析、SPI、ビジネスマナー、エントリーシート・面接対策)もあるが、企業との連携ではインターンシップ、企業人講師によるキャリア教育講座・講演が多く、OB/OGや同窓会が協力するケースも多い。業界研究だけでなく、職種研究も取り入れられている。企業人が話すことで、学生のリアル感が増すだろう。
大学設置基準改訂の影響もあるが、1年次、2年次からの取り組みが強化されている。内容は職業意識、就労意識の喚起に重きが置かれているようだ。
少し気になったのは、「学力」に関するコメントが1つもなかったことだ。「気づき」も大事だが、就活では「学力」で落とされることが多い。また語学力は就活の武器になる。キャリアセンターへのアンケート調査なので、勉強のことは教員に任せているのかもしれないが、基本学力の養成も就職支援の柱になりうるのではないかと思う。
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