HRプロ株式会社
 12月1日に2013年卒学生向けの採用広報がスタートした。就職ナビの掲載企業数を見てみると、リクナビは6227社、マイナビ5707社、日経就職ナビ5676社。約9割の企業がエントリーを受け付けており、説明会受付の企業もかなりある。

 合同企業セミナーも週末を中心に開催されているが、これまで東京会場の聖地は東京ビッグサイトだったが、今年は東京モーターショー開催の関係で使用できず、パシフィコ横浜や幕張メッセといった横浜、千葉の会場が使われている。

 さて、これまでの採用活動については経済界で論議が高まり、3月に日本経団連が倫理憲章を改定し、採用広報を2カ月遅らせることになった。抜本的とは言えないが変化の第一歩であることに間違いはない。そんな変化に対するキャリアセンターの声を聞いてみたい。

 HRプロが2011年8月16日から9月30日にかけて調査した、全国362大学(国立57大学/公立26大学/私立279大学)からの回答結果を2回に分けて紹介する。

12月1日開始を評価しつつも、4月選考開始に異論

改定された倫理憲章は、「インターネット等を通じた不特定多数向けの情報発信以外の広報活動については、卒業・修了学年前年の12月1日以降に開始する」と述べ、続いて「それより前は、大学が行う学内セミナー等への参加も自粛する」とキャンパス内での活動も禁止している。
 この経団連の方針について「賛同する」「賛同しない」「どちらとも言えない」の三択設問で問うた結果は、「賛同する」との回答は半分以下で、「どちらとも言えない」と「賛同しない」の合計の方が上回った。
 その理由を聞いたフリーコメントを読むと、「賛同する」「賛同しない」と正反対の回答であっても、認識は似ている。
 「賛同する」の回答者は、12月開始になったことによって、「早期化の是正」が実現したことを評価している。2カ月の後ろ倒しで3年生が学業に専念する時間が増えたことに好感している。
 ただし、12月1日解禁がベストと考えているキャリアセンターはほとんどない。改革の第一歩として評価しているだけだ。
 「賛同する」の回答には、「3年の終わりの春休みからになると、なお良いと考える」「大学3年生の後期授業を欠席する学生が増加しているため、出来れば2月以降にしていただきたい」「希望は翌年の3月1日から」と、さらに遅くすべきだと考えている様子がうかがえる。
 「賛同しない」回答も内容は似ている。ただし「賛同する」回答が「広報開始が2カ月遅れる」ことを評価しているのに対し、「賛同しない」回答は、選考開始が4月と従来どおりであることを否定的に考えている。
 「選考スケジュールについては変更がなかったため、学生の就職準備期間が、タイトになっただけ」「選考の開始は4月のままであり、学生の企業研究活動が不十分なまま選考に突入することが懸念される」「学生の就職活動期間が短くなり、集中するため、負担が大きくなる」と、就活期間の減少を問題視している。
 「どちらとも言えない」もコメントの内容は「賛同する」「賛同しない」とよく似ている。「選考開始時期が従来のままであれば、採用活動期間が必然的に短くなり、学生が十分業界や企業を理解しないまま選考に臨んでしまうことが考えられる」「定期試験が終了する2月中旬以降が望ましい」と、さらに遅くすることを望む声が多い。
コメントの内容を整理してみると、
・ 2カ月遅らせたことは評価する
・ 評価はするが、もっと遅らせるべきではないか
・ 12月1日より前の段階で、キャリア教育の講師として企業に協力してもらうことが難しくなったことは困る
・ 広報開始を2カ月遅らせるなら選考開始も遅らせ、学生の就活の時間を確保してもらいたい
 というものだ。
 13年卒の採用活動に関しては、経団連の改定倫理憲章が守られてスタートしたが、経済同友会、日本貿易会、東京商工会議所はもっと遅らせるべきだとの見解を示している。その時期も経済団体によってさまざまであり、今後は見解の統一に向けて話し合いが行われるとみられる。
 話し合いのテーマは、上記の大学からの意見が中心になるだろう。大学からの要望が反映されれば、14年卒採用はさらに採用スケジュールが変化していくこととなりそうだ。

図表1:日本経団連の方針に賛同しますか
第77回 キャリアセンター意識調査~その1 2013年卒採用の変化

12月1日より前の企業参加セミナー開催校は全体の4割弱

12月1日より前に実施する学内で実施するセミナーの結果を見ると、倫理憲章がかなり忠実に守られていることが読み取れる。
 8割の大学で実施されるのは「企業が参加しないキャリア教育目的の講座・セミナー」だ。ただし「企業が参加するキャリア教育目的の講座・セミナー(個別企業へのエントリー不可)」もかなりあり、4割弱に上る。業界のトップ企業らによる「業界研究」や「仕事研究」が多い。
 採用活動に直結する「合同会社説明会・セミナー(個別企業へのエントリー可)」は5%にも満たない。倫理憲章賛同企業の参加は見込めないから、中堅・中小企業が中心のセミナーということであろう。
 大学規模別では変化が表れているのは、「企業が参加するキャリア教育目的の講座・セミナー(個別企業へのエントリー不可)」だ。「5001人以上」の大学は半数以上が実施するが、「1001~5000人」の大学では35%に低下し、「1000人以下」の小規模校になると、25%にとどまっている。
 大規模校ほど企業動員力があり、規模が小さくなると企業の参加を得ることが難しくなっている。小規模校は、歴史が浅く、地方立地のことが多いことも企業参加が少ない理由かもしれない。

図表2:12月1日より前に学内で実施するセミナー
第77回 キャリアセンター意識調査~その1 2013年卒採用の変化

協力企業確保に苦労するキャリアセンター

「企業が参加するキャリア教育目的の講座・セミナー(個別企業へのエントリー不可)」を実施するのは、今回調査の362校中136校だった。この136校に「日本経団連傘下の企業への要請に対して、企業側の反応はいかがですか」と問うたところ、企業の反応はばらばらだが、全体的には協力企業確保に苦労するキャリアセンターの姿が垣間見える。
 無回答の53校を除いてグラフ化してみると、最も多いのは「ほとんど受け入れられている(受け入れは80~100%)」の35%だが、続いて多いのは「断られるところと受け入れられるところが半々程度(受け入れは40~60%程度)」で3割に上る。「ほとんど断られている(受け入れは0~20%程度)」と「かなり断られている(受け入れは20~40%程度)」を合わせると43%に達する。

図表3:日本経団連傘下の企業への要請に対しての企業側の反応
第77回 キャリアセンター意識調査~その1 2013年卒採用の変化

12月1日より前に注力する就活指導の内容は例年どおり

「12月1日より前の就職指導、キャリア教育で特に注力していること」という設問はフリーコメント形式で行った。内容はほぼ似通っている。
 就職意欲の喚起、自己分析、業界研究、エントリーシート対策、面接対策、就職相談対応、インターンシップ、キャリア教育の充実、筆記試験・SPI対策、メイクアップ講座、OB・OGとの意見交換会、企業見学会、就活体験報告会と、これまでのキャリア・就職支援の内容と同一だ。
 2カ月遅れのスタートによって「短期決戦」になる、と予測するキャリアセンターが多く、スタートダッシュに耐えられるように学生の準備を進めさせたい意向が感じられる。しかし、就活に王道はないから、例年どおりの指導をより丁寧に行っているようだ。
 企業との関係では、インターンシップだけでなく、「企業人による講演会で職業観の醸成」を図る大学がかなりある。また「採用と直結しないインターンシップやワンデーセミナーの実施協力をお願いしたい」という声もある。

大学規模によって差が顕著な学内合同セミナーへの企業誘致

選考までの期間が短くなった13年新卒採用。当然ながら合同企業セミナーは就活生で混み合う。キャリアセンターは学内合同セミナーにどのように取り組んでいるのか。
 この設問に関する回答は、大学の規模によって分かれてくる。大規模校ほど余裕があり、小規模校ほど積極的に参加企業を開拓しているのだ。
 全体でいえば、「企業数は多く集まると予測しているので、これまでと変わらない」が31%だ。参加企業が質量ともに満足できる水準にある大学だ。「企業数は多く集まると予測しているが、レベルや多様性に課題があるので積極的に開拓する」は28%。量は満足だが、質(業種、規模など)には満足していない。「企業数がそれほど集まらないと予測するので、数を集めるために積極的に開拓する」は、量もままならないという大学で25%もある。
 この数字を大学規模別で見ると、はっきりとした傾向がある。「5001人以上」の大学は、37%が質・量ともに満足し、41%が質に不満足で、量にも満足していないのは15%にとどまる。
 ところが、「1000人以下」の小規模校になると、質・量ともに満足している大学は26%にとどまり、質に不満足な大学は11%、そして量にも満足していない大学は41%もある。

図表4:学内合同セミナーへの企業誘致状況
第77回 キャリアセンター意識調査~その1 2013年卒採用の変化

企業誘致で苦戦するキャリアセンター

では、キャリアセンターはどのようにして、学内合同セミナーに企業を誘致しているのだろうか。企業を誘致する主な方法を問うたところ、「これまでの参加実績企業に告知」、「自校の就職実績のある企業を中心に告知」、「地元企業や中堅・中小企業等を開拓して依頼」、「集まっている求人票の企業に告知」、「参加実績がない知名度の高い大手企業に依頼」、「就職情報会社等外部業者に依頼して集める」の6項目選択式で回答を得た。
 大学主催の合同セミナーへの敷居は高く、なかなか参加が認められないと聞くことが多い。この回答を見ても、そのとおりだろうと思われる結果になっている。最も多いのは「参加実績企業」で約8割。次いで「就職実績企業」が6割。この2つが圧倒的だ。
 「地元企業の開拓」は34%だが、たぶん地方立地の大学に限れば、もっと高い数字になるものと思われる。続いて「求人票提出企業」の24%。
 さて、これらの数字をどう見るかである。おそらく、これまでは「参加実績企業」への告知だけで、セミナー参画企業枠はほぼ埋まっていたのではないだろうか。それが、「就職実績企業」「地元企業」「求人票提出企業」へと対象企業を広げていかないことには、学内合同セミナー参画企業数を確保できなくなってきているというのが実態ではないだろうか。
 企業側から見れば、今年はこれまで実績がなくて参加できなかった大学の学内セミナー参加への道が開けてきたということである。関心のある大学には、ぜひ問い合わせをしてみることをお勧めしたい。

図表5:学内合同セミナーへの企業誘致方法
第77回 キャリアセンター意識調査~その1 2013年卒採用の変化
次回は、キャリアセンターが学生に対して行っている支援の内容を紹介する。キャリアセンターは、就活を始める3年生、まだ頑張っている4年生、就職留年者、あるいは未内定の卒業生という幾層もの「就活生」を支援している。そんな悩めるキャリアセンターの奮闘ぶりと問題意識を伝えたい。
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!