前回は、2012年卒採用市場の企業側の動きをリポートした。今回は、学生の動向を追ってみる。データは、4月22日から29日にかけて、口コミ就職サイト「みんなの就職日記」が学生に向けて行った調査だ。被災した青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県の在学者へのアンケートを自粛しているので、その他の地域の学生が対象である。
 例年なら、GW前後に大半の大手企業の採用活動が終了し、全体的な動きを総括できるが、今年は大震災によって選考が後ろ倒しになっているので、あくまでも4月末時点での学生の動向という点に留意してもらいたい。

4~14社のボリュームゾーンは変わらず

第70回 2012年度新卒採用動向調査【中間総括】学生の動き
図表1:面接を受けた社数

 3月11日以降の選考をいったん中断した企業がかなり多かったが、面接社数への影響は限定的のように見える。最も多いのは「4~6社」で、昨年より数パーセント上がっている。「7~9社」「10~14社」の3つがボリュームゾーンとなっている点は昨年と変わらない。
 しかし、10社以上の受験者は文系・理系ともに、昨年より3分の1程度少なくなっている。その原因は、学生による志望企業の絞り込みではなく、3月後半から4月に面接する企業が少なかったためだろう。

内定保有率は前年よりも7~10ポイント程度減少

第70回 2012年度新卒採用動向調査【中間総括】学生の動き
図表2:内定を受けた社数
 
 内定保有率は、文系で11年卒54%から12年卒44%に、理系では11年卒70%から12年卒63%へと7~10ポイント減少した。
 2社以上の内定保有者も、文系で11年卒25%から12年卒13%に、理系で11年卒26%から12年卒21%へと減少した。特に文系の減少率が大きく、ほぼ半分になった。なお、1つお断りしておく。「みんなの就職日記」は旧帝大や早慶をはじめとする上位校や就職意識の高い学生の登録比率が高いため、内定率については一般の調査データよりも高めの数字となる傾向がある。あくまでも経年比較で見ていただきたい。

文系は「地銀」、理系は「電機/機械/材料」がトップ

第70回 2012年度新卒採用動向調査【中間総括】学生の動き
図表3:内定を受けた業界トップ5

 内定を出した業種を見てみよう。これらの業種の企業は大震災後も選考していたものと考えられる。
 文系では「地方銀行」がトップだが、「情報処理/システム」「流通/小売」「電機/機械/材料」との差は小さく、いずれも10%台にようやく届くという状況だ。つまりこの他の多くの業種からの内定がバラバラにあることを示している。
 専門性の高い理系は文系とは異なる傾向を示している。「電機/機械/材料」「医薬/化学/化粧品」「情報処理/システム」が20%台で、他業界を大きく引き離している。

内定した企業規模では超大手企業比率が減少

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図表4:内定した企業規模

 内定した企業規模を見ると、12年卒採用の特徴が見える。文系、理系ともに、「5001名以上」の企業からの内定比率が減少している。文系では前年比で半減という状況だ。これは、5001名以上の多くの大手企業が選考を延期したことを物語っている。それ以外の企業規模では、減少せずに増加している。選考延期の企業が少なかったと考えられる。

「就活終了」学生比率が減少

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図表5:就職活動の継続意向(内定保有者のみ)

 企業は、大手が選考を後ろ倒しにしたことにより、内定を出しても辞退学生が増えることを危惧している。その危惧は正しいようだ。
 就職活動を「終了する」学生比率は減少しており、特に文系で目立つ。5割強の学生が継続すると回答しており、5月、6月以降に選考を開始する大手企業を志望する学生が多いということを示している。
 ただし、理系においては、「終了する」学生比率は減少しているものの、文系ほどの大きな変化は見られない。また選考を延期した企業でも、理系の「推薦応募」については別対応した企業もあったと思われる。

文系は選考延期業界を志望する学生が多い

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図表6:今後受けたい業界トップ5

 選考開始時期は業種によって異なっていることを前回のリポートで指摘した。銀行、証券、生損保は5月に変更した企業が多く、電機、自動車、鉄鋼、食品業界などのメーカーと、JR東日本、NTT東日本および商社は6月に変更している。
 「今後受けたい業界」を聞いたところ、これらの業界が多い。文系では6月以降に選考を開始する「総合商社」がトップだ。2位に「地方銀行」を挟んで、5月選考の「メガバンク」、6月選考の「電機」と、選考を延期した業界が並ぶ。
 理系のトップ3は「電機/機械/材料」「医薬/化学/化粧品」「情報処理/システム」。「内定を受けた業界」と同じ順番だが、現在の内定企業よりも大手を目指しているものと推定できる。

大手志向の強い「早慶」、「こだわらない」が意外と多い「旧帝大」

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図表7:今後受けたい企業規模

 大学クラス別に大手志向度を見ると、最も「大手志向」が強いのは「早慶クラス」だ。「絶対大手」と「できれば大手」を合わせると55%が大手を志望している。次いで「上位私大クラス」の大手志向度が45%。
 やや意外なのは「旧帝大クラス」だ。「大手志向」も43%とかなり高いが、「規模にこだわらない」層が34%もいる。
 「規模にこだわらない」層が最も多いのは、「その他私立大学」で40%。「大手志向」は2割弱と最も少ない。

「仕事内容」「社風」「やりがい」が文系、理系ともにトップ3

第70回 2012年度新卒採用動向調査【中間総括】学生の動き
図表8:今後受ける企業を選択するポイント

 学生の大手志向が強いと言われるが、企業の選択ポイントを聞くと、「企業規模」「知名度」を挙げる学生は意外に少ない。順位に若干の違いはあるものの、文系、理系ともに「仕事内容」「社風」「やりがい」が企業選択ポイントのトップ3である。つまり自分がどんな企業文化の中で、何を実現できるのか、という視点だ。
 4番目は文理で項目が異なり、文系が「勤務地」、理系は専攻と関係が深い「業界」だ。

「就職ナビ」強し、「就職部・キャリアセンター」が2位

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図表9:新しい応募先企業をどう探す

 選考中の「手持ち」企業がなくなった場合、新しい応募先企業をどう探すかを質問したところ、文系、理系ともに約7割の学生が「就職ナビ」と回答している。2位には「就職部・キャリアセンター」が挙げられている。
 就職ナビは便利な道具で、ネット環境があればいつでも閲覧することができる。他のキャリアセンター、先生・友人の口コミ、合同会社説明会などは、自分が移動する手間がかかる。したがってとりあえず就職ナビということになるのは当然だ。
 2位の就職部・キャリアセンターとの関係強化も、これからの12年採用では有効といえる。
次回は、2013年卒採用市場を展望してみたい。
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