HRプロでは、東洋経済HRオンラインと共同で全国の4年制大学のキャリアセンター/就職部担当者を対象にしたアンケート調査を実施した。調査方法は、調査票を郵送し、FAXにて回収するもの。調査期間は2011年4月28日~5月31日。778大学のすべてに調査票を送付し、回答を得たのは、394窓口(複数窓口を持つ大学もある)。在学生規模は1~1000人が95(24%)、1001~5000人が190(48%)、5001人以上が109(28%)である。
大学側が学生の就職活動をどのように支援しているのか、どのような問題意識を持っているのか、大変興味深い結果となっている。
大学側が学生の就職活動をどのように支援しているのか、どのような問題意識を持っているのか、大変興味深い結果となっている。
これまでの就活が学業を圧迫していたか?
日本経団連が倫理憲章を改訂した理由は、これまでの就活スケジュールが著しく大学の学業を圧迫しているというものだった。もちろん「圧迫している」という認識には異論もある。当の大学はどのように認識しているのだろうか?図表1:企業の採用活動の早期化・長期化は大学の学業を圧迫しているか
アンケートによれば、63%が「圧迫している」とし、「圧迫していない」4%を大きく上回っている。ただし、「どちらとも言えない」との声が31%もあることに注目したい。日本経団連の倫理憲章改訂に関するフリーコメントでは、「中途半端だ」「疑問に思う」「徹底して欲しい」などの言葉が並び、さまざまな見解がある。
・学生の企業研究の期間が短くなり、早期から準備していた学生としていない学生との格差が広がると考えている。
・概ね肯定的に捉えているが、スケジュールが過密状態になることを懸念している。
・いずれにせよ拘束力がどの程度あるのか疑問視される。
・12月以前の本学主催のガイダンス(キャリア教育含む)講師としての参加が難しくなった。
・開始時期が重要ではなく、選考期間の長期化が問題。
・すべての企業が4月開始でスタートするなら結構だが、共同宣言に参画の企業のみなら就活期間の長期化対策にはつながらない。
・広報を2月以降、選考を5月以降等もっと遅らせるべき。
・学生の企業研究の期間が短くなり、早期から準備していた学生としていない学生との格差が広がると考えている。
・概ね肯定的に捉えているが、スケジュールが過密状態になることを懸念している。
・いずれにせよ拘束力がどの程度あるのか疑問視される。
・12月以前の本学主催のガイダンス(キャリア教育含む)講師としての参加が難しくなった。
・開始時期が重要ではなく、選考期間の長期化が問題。
・すべての企業が4月開始でスタートするなら結構だが、共同宣言に参画の企業のみなら就活期間の長期化対策にはつながらない。
・広報を2月以降、選考を5月以降等もっと遅らせるべき。
東日本大震災の影響を強く受けたとの認識は低い
東日本大震災により大きく影響を受けたと感じている大学は11%と意外と低かった。大震災により、大手メーカー、総合商社、メガバンク、生損保、証券などが選考開始時期を5月や6月に変更したことで、昨年までとはまったく異なる状況を生み出したが、多くの大学にはそれほど大きな影響ではなかったようだ。図表2:東日本大震災の影響
小規模校では「卒業生OB・OG名簿の閲覧・紹介」が少ない
学生に対して実施している就職指導で最も多いのは、「一般的な講座、ガイダンス」と「個別相談・カウンセリング」。約97%であり、ほぼすべての大学が実施している。次に多いのは「卒業生OB・OG名簿の閲覧・紹介」と「能力試験対策」で約94%。続いて「エントリーシートの添削・指導」「自己分析・自己PRサポート」で約87%。続いて「適性検査対策」84%の順になる。「マナー講座」は70%のキャリアセンターが実施しているが、「面接指導または模擬面接」と「業界研究・企業研究」は60%前後でやや少ない。
大学規模別で指導内容を見ると、1000人を境にして違いが見られる。いずれの項目でも「1~1000人以下」は「1001人以上」より少なく、特に「卒業生OB・OG名簿の閲覧・紹介」は「1001人以上」が60%を超えているのに対し、40%強と3分の2にとどまっている。小規模校なので、そもそも卒業生数が少なく、紹介しづらいという事情があるのかもしれない。
図表3:実施している就職指導
小規模校ほど、学生は支援窓口を利用している
厳しさを増す就職戦線の中で、どれくらいの学生がキャリアセンター/就職部を利用しているのだろうか。まず「把握していない」という回答が68、全体394回答の17%を占めている。数字が把握できていないのだから、6分の1の大学では就職指導の体制が不備と言ってよいかもしれない。
全体では、51%以上の学生が利用していると回答した支援窓口は204と過半数を超えているのに対して、学生の利用率が50%以下の支援窓口は93あり、「把握していない」の68窓口を合わせると161。大学によって就職指導への力の入れ方には差が大きいようだ。
規模別で見ると、違う傾向が見えてくる。1000人以下の大学では利用度が高く、規模が大きくなると、利用度が下がる。
図表4:学生のキャリアセンター/就職部利用度
小規模校ほど少ない学内合同企業セミナー/説明会
大学で開催される学内合同企業セミナー/説明会は、学生にとって「参加しやすい」というメリットだけでなく、「自校の学生を採用する意思がある」ことがはっきりしているので、有意義なイベントだ。しかし今回調査でわかったのは、半数の大学で実施日数は「0~10日」にとどまっている事実である。この有益なイベントに参加できない学生はかなり多い。学内合同企業セミナー/説明会の参加で不利なのは小規模校。1000人以下の大学の7割が「0~10日」。規模が大きくなるにつれ、「0~10日」の比率は下がり、5001人以上の大学では3割未満になる。
もっとも見方を変えれば、大規模校で3割弱の大学が「0~10日」ではあまりに少なすぎ、学生数からいえば影響が大きいともいえる。
図表5:学内合同企業セミナー/説明会実施日数
実施日数と同じ傾向が「参加社数」でも見られる。1000人以下の大学は「0~50社」が過半数を占め、「51社~100社」を含めると7割強である。規模が大きくなると参加者数は急増し、5001人以上の大学では20%近くが「501社以上」、「401~500社」が20%弱、「301~400社」が10%強、「201~300社」が20%になる。
図表6:学内企業セミナーの延べ参加社数
図表6:学内企業セミナーの延べ参加社数
半数近くが学内セミナー/説明会の強化を希望
学内セミナー/説明会の実施時期だが、2011年卒に関しては最も多いのが、「学部3年、修士1年の1月~3月」だ。続いて「学部3年、修士1年の10月~12月」、「学部3年、修士1年の4月~6月」の順になっている。大規模校ほど、その後も継続して開催していることがわかる。ただしこれまでの経験は、12月に本格スタートする2013年卒採用に生かすことはできない。日本経団連の倫理憲章改訂によって、12月より前には採用を前提にした企業広報が禁じられているからだ。
図表7:学内企業セミナー実施時期(2011年3月卒業生向けの実施実績)
また、今後学内セミナーを「増やすかどうか」についてのアンケートでは45%が「増やす」、「現状のまま」が41%であり、大勢としては合同説明会の強化の方向にある。大規模校ほどその意向が強いようである。企業からすれば、これまで参加できなかった大学の学内セミナーへ参加しやすい環境となってきたといえよう。
図表8:学内企業セミナーの今後の方向性
図表8:学内企業セミナーの今後の方向性
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