まず、キャリア自律とは何か。よく、個人の価値観やスキルをベースとし、自分に見合った仕事を探すことがキャリア自律であるということが言われるが、私はそう思わない。自分探しへのこだわりに過度にエネルギーを割くべきではない。自分の可能性を「これしかない」と思い込んで決め打ちせず、毎日の現場における努力と成長を通して、まだ自分が気づいていない多様な可能性を磨いていく。
それにはいろいろな仕事に積極的に取り組まざるを得ない。これがキャリア自律だと考える。また一般に、キャリア自律は一人ひとりの個が自ら能動的に選択することが重要で、企業においては、管理者がコーチングを含めて選択後の支援を行えばよいと考えられている。だが、個が選択するといっても難しく、むしろ大事なのは選択する過程での支援だ。そこに管理者がコミットしていく仕組みを作ることがキャリア自律支援だと考える。
企業のなかには、個人が自分の可能性を自分視点で追求すると組織の統制が取れなくなる、キャリア自律なんてとんでもないという声もあるだろう。しかし、個人が現場のなかで自分の成長可能性を一歩一歩確信していく気づきのプロセスを組み込み、現場のなかでその可能性をしっかり拡げていくような「場」の構築を追求しないと、むしろ組織は内部から崩壊していく。さらに、キャリア自律に関して、「企業は5年先にどうなるかもわからないのに、個人が20年、30年後のライフキャリアを論じてどうする」という批判もあるが、私は、キャリア自律は瞬間、瞬間が大事だという視点を取る。それぞれの置かれた現時点でのライフステージ、キャリアステージのなかで、どのように自分の可能性を拡げていくかに本人が当事者意識を持ち、仕事のなかで工夫改善しながら自分を育てていく。その連続的な積み上げでライフキャリアが成り立っていくと考える。
企業のなかには、個人が自分の可能性を自分視点で追求すると組織の統制が取れなくなる、キャリア自律なんてとんでもないという声もあるだろう。しかし、個人が現場のなかで自分の成長可能性を一歩一歩確信していく気づきのプロセスを組み込み、現場のなかでその可能性をしっかり拡げていくような「場」の構築を追求しないと、むしろ組織は内部から崩壊していく。さらに、キャリア自律に関して、「企業は5年先にどうなるかもわからないのに、個人が20年、30年後のライフキャリアを論じてどうする」という批判もあるが、私は、キャリア自律は瞬間、瞬間が大事だという視点を取る。それぞれの置かれた現時点でのライフステージ、キャリアステージのなかで、どのように自分の可能性を拡げていくかに本人が当事者意識を持ち、仕事のなかで工夫改善しながら自分を育てていく。その連続的な積み上げでライフキャリアが成り立っていくと考える。
経営の視点からキャリア自律を考えるとき、人的資源と人的資産の違いを押さえることはポイントのひとつだ。人的資源とは力を発揮する可能性のある資源であり、資源が価値を発揮できるようにするのは組織の責任。
これに対し、人的資産とは現状で力を発揮し価値を生み出している流動資産であり、人的資産が価値を発揮できるかどうかは個人の責任となる。従来、人事が伝統的に取り組んできた人的資源開発は、企業の方針・長期の方向性に基づいた組織主導のキャリア開発だった。
しかし、これからは、主体的な個中心のキャリア自律・開発である人的資産開発をどれだけ支援できるかが、人事のもうひとつの大事な役割になる。成長実感や新たな働きがいに向けたモチベーション開発などに重点を置いて、支援の仕組みを作っていく必要がある。
これに対し、人的資産とは現状で力を発揮し価値を生み出している流動資産であり、人的資産が価値を発揮できるかどうかは個人の責任となる。従来、人事が伝統的に取り組んできた人的資源開発は、企業の方針・長期の方向性に基づいた組織主導のキャリア開発だった。
しかし、これからは、主体的な個中心のキャリア自律・開発である人的資産開発をどれだけ支援できるかが、人事のもうひとつの大事な役割になる。成長実感や新たな働きがいに向けたモチベーション開発などに重点を置いて、支援の仕組みを作っていく必要がある。
ぜひ、2055年の社会を念頭に置いていただきたい。これは、昨年、2012年に入社した社員が65歳になる年だ。そのとき、今から43年後の社会では、65歳以上が人口の40.5%を占めると予測される。まさに大変な時代だ。超高齢化社会を支えるためには65歳定年などあり得ず、70歳の人も普通に働いているだろう。ある一定の年齢に達したときに管理職のポストを明け渡していただくポストオフ制度も、続けていけるわけがない。おそらく非常に限定された数少ないプロフェッショナル管理職が認定される一方、多くの人は管理職にならない。だからポストオフもなく、一生働くことができる。そういう人事の仕組みに変えていかざるを得ない。
地位が上に上昇することを動機付けとする登山の論理から、人間的な成長や自分の可能性を拡げることを動機付けとするハイキングの論理に変え、一生現場で働き続ける働き方の原理原則を作らないと、これから先の日本の企業は回らない。このときの原理原則のベースとして、キャリア自律と人的資産の個人ベースにおける拡大ということに軸足を置いた人事制度を作っていかなければならない。
2025年、2030年には、すでにこうした社会の萌芽が見え始めてくるだろう。それに向け、経営人事として私たちが何を考え、準備するかという問題が突きつけられている。
地位が上に上昇することを動機付けとする登山の論理から、人間的な成長や自分の可能性を拡げることを動機付けとするハイキングの論理に変え、一生現場で働き続ける働き方の原理原則を作らないと、これから先の日本の企業は回らない。このときの原理原則のベースとして、キャリア自律と人的資産の個人ベースにおける拡大ということに軸足を置いた人事制度を作っていかなければならない。
2025年、2030年には、すでにこうした社会の萌芽が見え始めてくるだろう。それに向け、経営人事として私たちが何を考え、準備するかという問題が突きつけられている。
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