近年の企業の人事分野において、「ダイバーシティ」と並んで重要なキーワードとなっている「インクルージョン」。“インクルーシブな組織づくり”が急務であることは分かっているものの、「何をすればいいのかよく分からない」という人事担当者の声も少なくない。本講演では、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するために、また社員のリーダーシップを強化するために、企業がどのような施策を検討・実践すればよいのかを考える。
「インクルーシブな組織づくり」に求められるリーダー層の意識改革
船越 多枝 氏
講師:

大阪女学院大学 准教授 船越 多枝 氏

博士(経営学)。専門は組織行動論。化学・機械部品等の複数の外資系メーカーで社長秘書・人材開発等に従事したのち, 2005年より日系大手メーカーにて, 社長室・経営企画・人材開発の業務に携わる。2010年よりプロジェクトベースでダイバーシティ推進に関わり, 2015年度からはマネジャーとしてダイバーシティ関連施策の立案・推進全般を担った。2017年4月より, 大阪女学院大学国際・英語学部にて勤務。組織行動論、特にダイバーシティ・マネジメントに効果をもたらす「インクルージョン」の研究を進めつつ、組織論分野の教育に従事している。著書に『インクルージョン・マネジメント:個と多様性が活きる組織』(白桃書房, 2021年)がある。

林 恭子 氏
講師:

グロービス経営大学院 教授 林 恭子 氏

筑波大学大学院ビジネス科学研究科修了。専門は組織行動論、人的資源管理論。モトローラ日本支社でB2B事業に携わった後、ボストン・コンサルティング・グループにてHRマネジャーとして採用、能力開発、女性活躍推進等を担当。(株)グロービスではマネージングディレクターとして管理部門全体を統括し、働きがいのある企業としての各賞の受賞へ。株式会社イートアンドホールディングス社外取締役。公益財団法人首藤奨学財団評議員。経済同友会会員。国際戦略経営研究学会理事。共著書に「女性プロフェッショナルたちから学ぶキャリア形成」(ナカニシヤ出版)他。

浅野 浩美 氏
講師:

事業創造大学院大学 教授/JSHRM執行役員 浅野 浩美 氏

筑波大学大学院ビジネス科学研究科修了。修士(経営学)、博士(システムズ・マネジメント)。専門は人的資源管理論、キャリア論。厚生労働省で、人材育成、キャリア支援、就職支援、女性活躍支援等の政策の企画立案に従事したほか、労働局長として働き方改革を推進。社会保険労務士。ライト工業株式会社社外取締役、日本キャリアデザイン学会理事、経営情報学会理事、人材育成学会理事等。著書に、『キャリアコンサルタント・人事パーソンのための キャリアコンサルティング―組織で働く人のキャリア形成を支援する』(労務行政,2022年)がある)。

「ダイバーシティ・マネジメント」の難しさはどこにあるのか
大阪女学院大学 准教授 船越 多枝氏

「ダイバーシティ」と「マネジメント」の間に生じる矛盾

第1部では、私から今回のテーマの概要をお話しさせていただきます。皆さんは「ダイバーシティ&インクルージョン」や「インクルーシブな組織」といった言葉をお聞きになったことがありますでしょうか。組織や経営学の文脈において、「ダイバーシティ」とは「人材多様性」を示します。「様々な多様性を持つ人々が組織に存在すること」もダイバーシティです。“多様な人材が活躍する組織”というのは、“同質性の高い人材のみの組織”よりも、様々な視点や能力を多方面で活かせるため、高い成果を生み出すことができると言われてきました。一方で、多様な人材に活躍してもらうこと、いわゆる「ダイバーシティ推進」は、その実践が難しいと感じている方が多いと思います。

なぜダイバーシティ推進の実践が難しいのでしょうか。ダイバーシティには「すべての多様性が尊重されるべき」という大前提がありつつも、経営組織においては「達成すべき目標」も重要です。加えて、マネジメントとは「管理すること」が包含されます。結果、一時的であっても、「目標達成に向けて管理のために切り分ける」という要素が含まれてきます。そのため、多様性を尊重する「ダイバーシティ」と「マネジメント」の間に、ある種の矛盾が生じるわけです。
気になる続きは、下記をダウンロードの上ご覧ください!

  • 1

この記事にリアクションをお願いします!