「ダイバーシティ・マネジメント」の難しさはどこにあるのか
大阪女学院大学 准教授 船越 多枝氏
「ダイバーシティ」と「マネジメント」の間に生じる矛盾
第1部では、私から今回のテーマの概要をお話しさせていただきます。皆さんは「ダイバーシティ&インクルージョン」や「インクルーシブな組織」といった言葉をお聞きになったことがありますでしょうか。組織や経営学の文脈において、「ダイバーシティ」とは「人材多様性」を示します。「様々な多様性を持つ人々が組織に存在すること」もダイバーシティです。“多様な人材が活躍する組織”というのは、“同質性の高い人材のみの組織”よりも、様々な視点や能力を多方面で活かせるため、高い成果を生み出すことができると言われてきました。一方で、多様な人材に活躍してもらうこと、いわゆる「ダイバーシティ推進」は、その実践が難しいと感じている方が多いと思います。なぜダイバーシティ推進の実践が難しいのでしょうか。ダイバーシティには「すべての多様性が尊重されるべき」という大前提がありつつも、経営組織においては「達成すべき目標」も重要です。加えて、マネジメントとは「管理すること」が包含されます。結果、一時的であっても、「目標達成に向けて管理のために切り分ける」という要素が含まれてきます。そのため、多様性を尊重する「ダイバーシティ」と「マネジメント」の間に、ある種の矛盾が生じるわけです。
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