高橋 暁子著
自由国民社 1,500円
自由国民社 1,500円
2013年卒採用で気になるのは、ソーシャルメディアの普及である。リクルートはソーシャルメディア就活を「ソー活」と呼び、普及すると予測している。もっともHRプロの調査では、「2013年の採用広報で力を入れること」では、就職ナビ、学内企業セミナー、自社の採用ホームページが上位3位を占めており、学内企業セミナーの伸びが注目されるが、それほどの変化は感じられない。Facebookは11%、Twitterは9%にとどまっている。
学生の利用状況を見ても、使っているのは4割弱にとどまっている。しかもその利用目的は、友人との情報交換が7割強、他の就活生からの情報収集が5割と大部分を占めている。
もっとも本書を読むと、違う数字が紹介されている。就活ライブチャンネルのアンケート調査では、Twitterを利用している企業は10.3%、利用したいと思っている企業は26.3%もある。Facebookについては、利用企業が7.8%、利用したい企業は26%もある。
IT先進企業ではソーシャルメディア採用を始めている。本書37Pにはアイティメディア株式会社の例が紹介されている。この会社は、Twitterを告知・広報、エントリー入り口、エントリー学生へのフォロー、説明会、社員訪問、面接という採用プロセス全体で使っている。またUSTREAMを説明会、社員訪問のライブ配信に、Skypeは社員訪問や面接に使っている。
USTREAMやYouTubeを使えば、バーチャル説明会を開くことができることは知っていたが、Skypeで面接というのは新鮮。たしかに学生がスマートフォンやiPad2を持っていれば、ビデオ通話ができるから、面接も可能だ。
面接とは、入退室のお辞儀や着席の仕方までチェックするもの、という思い込みをなくせば、面接のかなりの部分はSkype通話でもこなせるのかもしれない。
さてソーシャルメディアに話を戻そう。本書はソーシャルメディアの就活での使い方を、非常に読みやすく説明している。日本で生まれたmixiやソーシャルメディアリクルーティング先進国の米国で普及しているLinkedIn(リンクトイン)に触れた部分もあるが、ほとんどの記述はFacebookとTwitterで占められている。
ソーシャルメディアはいくつもあるが、性格が異なっている。Facebookは実名登録で一人1アカウントだが、Twitterは匿名で複数のアカウントが持てる。210Pに登場する慶応の学生はうまい表現を使っている。「Twitterは微分化された自分を出すところなので、"自分という全体像が"が見えません。自分を知ってもらうためには積分しないといけないわけですが、それをFacebookでできる」と語っている。
本書には少し記述が間違っているところもある。176Pから178Pまで就活スケジュールが書かれており、前年6月のインターン募集開始、前年10月のエントリー開始、業界セミナー、説明会の開始とあるが、2013年卒からこのスケジュールが変わったことは読者が知っている通り。著者が採用業界の人でないことがわかるが、ソーシャルメディア本としての価値を殺ぐほどの間違いではない。
わたしはTwitterもFacebookも有益だと思うが、Twitterは広報や出会い、連絡の役割に向いていて、相手の理解、吟味という機能はFacebook向きだと思う。2つのソーシャルメディアの使い分けについては本書に詳しく説明されている。
また就活生に対する注意として、Facebookに書き込んだことは「人事が見ることができる」という指摘が興味深かった。確かにその通りである。Facebookに書き込まれた情報は、就活武装した状態のものではない。したがって選考が進んで内定出しに至るまでにFacebookで学生の名前を検索してみるのは人事にとって有益だろう。たぶんエントリーシートや面接で得られない素顔の学生を知ることができるだろう。
ところでソーシャルメディアについて、経団連の倫理憲章改訂ルールはどのように規定しているのだろうか。あまり論じられていないが、じつは自由なのだ。 大手の就職サイトは、12月になるまで、学生の個人情報の収集は制限されているが、企業が自社ホームページやソーシャルメディアを活用する双方向型コミュニケーションは、時期も内容もフリーなのである。
(HRプロ嘱託研究員:佃光博=東洋経済HRオンライン)
学生の利用状況を見ても、使っているのは4割弱にとどまっている。しかもその利用目的は、友人との情報交換が7割強、他の就活生からの情報収集が5割と大部分を占めている。
もっとも本書を読むと、違う数字が紹介されている。就活ライブチャンネルのアンケート調査では、Twitterを利用している企業は10.3%、利用したいと思っている企業は26.3%もある。Facebookについては、利用企業が7.8%、利用したい企業は26%もある。
IT先進企業ではソーシャルメディア採用を始めている。本書37Pにはアイティメディア株式会社の例が紹介されている。この会社は、Twitterを告知・広報、エントリー入り口、エントリー学生へのフォロー、説明会、社員訪問、面接という採用プロセス全体で使っている。またUSTREAMを説明会、社員訪問のライブ配信に、Skypeは社員訪問や面接に使っている。
USTREAMやYouTubeを使えば、バーチャル説明会を開くことができることは知っていたが、Skypeで面接というのは新鮮。たしかに学生がスマートフォンやiPad2を持っていれば、ビデオ通話ができるから、面接も可能だ。
面接とは、入退室のお辞儀や着席の仕方までチェックするもの、という思い込みをなくせば、面接のかなりの部分はSkype通話でもこなせるのかもしれない。
さてソーシャルメディアに話を戻そう。本書はソーシャルメディアの就活での使い方を、非常に読みやすく説明している。日本で生まれたmixiやソーシャルメディアリクルーティング先進国の米国で普及しているLinkedIn(リンクトイン)に触れた部分もあるが、ほとんどの記述はFacebookとTwitterで占められている。
ソーシャルメディアはいくつもあるが、性格が異なっている。Facebookは実名登録で一人1アカウントだが、Twitterは匿名で複数のアカウントが持てる。210Pに登場する慶応の学生はうまい表現を使っている。「Twitterは微分化された自分を出すところなので、"自分という全体像が"が見えません。自分を知ってもらうためには積分しないといけないわけですが、それをFacebookでできる」と語っている。
本書には少し記述が間違っているところもある。176Pから178Pまで就活スケジュールが書かれており、前年6月のインターン募集開始、前年10月のエントリー開始、業界セミナー、説明会の開始とあるが、2013年卒からこのスケジュールが変わったことは読者が知っている通り。著者が採用業界の人でないことがわかるが、ソーシャルメディア本としての価値を殺ぐほどの間違いではない。
わたしはTwitterもFacebookも有益だと思うが、Twitterは広報や出会い、連絡の役割に向いていて、相手の理解、吟味という機能はFacebook向きだと思う。2つのソーシャルメディアの使い分けについては本書に詳しく説明されている。
また就活生に対する注意として、Facebookに書き込んだことは「人事が見ることができる」という指摘が興味深かった。確かにその通りである。Facebookに書き込まれた情報は、就活武装した状態のものではない。したがって選考が進んで内定出しに至るまでにFacebookで学生の名前を検索してみるのは人事にとって有益だろう。たぶんエントリーシートや面接で得られない素顔の学生を知ることができるだろう。
ところでソーシャルメディアについて、経団連の倫理憲章改訂ルールはどのように規定しているのだろうか。あまり論じられていないが、じつは自由なのだ。 大手の就職サイトは、12月になるまで、学生の個人情報の収集は制限されているが、企業が自社ホームページやソーシャルメディアを活用する双方向型コミュニケーションは、時期も内容もフリーなのである。
(HRプロ嘱託研究員:佃光博=東洋経済HRオンライン)
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