常見 陽平著
角川SSC新書 819円
角川SSC新書 819円
この2年間で「就職」「雇用」や「新卒採用」が新聞、雑誌に取り上げられることが多くなった。それ以前の「就活」は、企業、学生、大学という当事者と、就職情報会社や採用ツール制作会社、そして就活本の出版社で構成される閉じた業界だった。現在は社会全体の問題として「雇用」「新卒採用」が語られている。
そんな時代の変化を背景にして、常見陽平氏は就活・採活業界の新星として登場した。初期の著作はいわゆる就活本だった。しかし昨年夏の『就活格差』では「マスコミの言う就職氷河期の再来は間違っている。起こっているのは就活格差」と説いて注目を浴びた。
最新作の『くたばれ!就職氷河期』では、さらに分析を進めて「就活断層」を提起している。
タイトルは『くたばれ!就職氷河期』と刺激的だが、内容は目配りが効いている。経験豊富な採用担当者なら、書かれている現象についての知識はあるだろう。しかし知識はばらばらのままではないだろうか。
本書は一つひとつのデータを整理、分析し、就活で起きている大きな変化を体系的に解き明かしている。切り口は「就活断層」だ。
まず新卒の人材ニーズだが、本書によれば就職氷河期と呼ばれた時代よりも仕事の絶対数は増えており、全体の求人倍率でも1倍を切っていない。にもかかわらず「無い内定」のままの学生が多いのはなぜか?
理由は明白だ。企業は一部の学生しかし採用ターゲットにしていない。ターゲット校を設定している企業が33%もあり、うち上位20校以下に絞っている企業が82%に達している(HRプロ『HR戦略資料2010』)。学生も一部の有名企業しか受けようとしない。ここに断層が生まれているわけだ。
また男女間格差、地域間格差、学歴格差、学部間格差という個別の断層も生じている。
このような格差があることは就活・採活業界では周知の事実だが、活字になって出版されることはきわめて少なかった。また採活の奇妙さについても触れられることは少なかった。たとえば「求める人物像」がおかしい。
「自立(自律)」「成長意欲」「コミュニケーション能力」「チャレンジ精神」「肉食系男子」「体育会の主将」「起業家タイプ」「尖った人材」など、驚くほど似通った言葉が使われている。
著者はこれらの言葉を「画一的で、実は曖昧で、ないものねだりの求める人材像が似非ターゲット採用を加速し、一部の人材の取り合いにつながっている」と切り捨て、「学生もあたかも自分が求める人材であるかのように演技する」と分析している。
本書では「就活が上手くいく学生の10の法則」や「女子学生の就活課題を解決する4つの方法」、「地方学生が納得いく就活をするための5つの法則」などの就活心得も語られている。いずれも説得力がある。
これらは学生向けコンテンツだが、本書の読者対象はもっと広い。採用担当者は本書を読んで「求める人物像」の文章を再考し、エントリーシートの内容や面接のやり方を変えるかもしれない。地方大学のキャリアセンター職員は、学生の指導に新しい知恵を見いだすかもしれない。
新卒採用支援会社は就職ナビ運営会社以外にも多種多様な企業が存在するが、どのような支援をする企業であっても本書の内容は興味深いだろう。
そんな時代の変化を背景にして、常見陽平氏は就活・採活業界の新星として登場した。初期の著作はいわゆる就活本だった。しかし昨年夏の『就活格差』では「マスコミの言う就職氷河期の再来は間違っている。起こっているのは就活格差」と説いて注目を浴びた。
最新作の『くたばれ!就職氷河期』では、さらに分析を進めて「就活断層」を提起している。
タイトルは『くたばれ!就職氷河期』と刺激的だが、内容は目配りが効いている。経験豊富な採用担当者なら、書かれている現象についての知識はあるだろう。しかし知識はばらばらのままではないだろうか。
本書は一つひとつのデータを整理、分析し、就活で起きている大きな変化を体系的に解き明かしている。切り口は「就活断層」だ。
まず新卒の人材ニーズだが、本書によれば就職氷河期と呼ばれた時代よりも仕事の絶対数は増えており、全体の求人倍率でも1倍を切っていない。にもかかわらず「無い内定」のままの学生が多いのはなぜか?
理由は明白だ。企業は一部の学生しかし採用ターゲットにしていない。ターゲット校を設定している企業が33%もあり、うち上位20校以下に絞っている企業が82%に達している(HRプロ『HR戦略資料2010』)。学生も一部の有名企業しか受けようとしない。ここに断層が生まれているわけだ。
また男女間格差、地域間格差、学歴格差、学部間格差という個別の断層も生じている。
このような格差があることは就活・採活業界では周知の事実だが、活字になって出版されることはきわめて少なかった。また採活の奇妙さについても触れられることは少なかった。たとえば「求める人物像」がおかしい。
「自立(自律)」「成長意欲」「コミュニケーション能力」「チャレンジ精神」「肉食系男子」「体育会の主将」「起業家タイプ」「尖った人材」など、驚くほど似通った言葉が使われている。
著者はこれらの言葉を「画一的で、実は曖昧で、ないものねだりの求める人材像が似非ターゲット採用を加速し、一部の人材の取り合いにつながっている」と切り捨て、「学生もあたかも自分が求める人材であるかのように演技する」と分析している。
本書では「就活が上手くいく学生の10の法則」や「女子学生の就活課題を解決する4つの方法」、「地方学生が納得いく就活をするための5つの法則」などの就活心得も語られている。いずれも説得力がある。
これらは学生向けコンテンツだが、本書の読者対象はもっと広い。採用担当者は本書を読んで「求める人物像」の文章を再考し、エントリーシートの内容や面接のやり方を変えるかもしれない。地方大学のキャリアセンター職員は、学生の指導に新しい知恵を見いだすかもしれない。
新卒採用支援会社は就職ナビ運営会社以外にも多種多様な企業が存在するが、どのような支援をする企業であっても本書の内容は興味深いだろう。
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