一括エントリーという仕組みが負の色彩を強めた
寺澤 そういう目で釘崎さんが就職ナビを見ておられたころ、わたしはナビの可能性に夢中でした。採用メディアの効果は学生の反応で計られ、紙メディアの時代には学生からの戻り葉書の数と大学名が重要でした。大学を担保するために上位大学しか紙メディアを送らなかったのです。就職ナビでも学生の反応件数が問われるので、一括エントリーできる仕組みを開発したのです。その結果、大企業でもせいぜい1000枚から2000枚程度の戻り葉書だったのが、数万件のエントリーが来るようになってしまいました。あまりに膨大なエントリーに対応するために、企業側はエントリーシートで落とす仕組みを導入せざるを得なくなり、次第に就職ナビの負の色彩が強まっていったのです。
釘崎 茂木健一郎さんが新卒採用の早期化を批判し、安倍政権は経済団体に採用広報を4月に、採用活動を8月に遅らせるように要請しましたが、本質を取り違えています。時期ではなく、仕組みが問題なのです。
採用基準を開示している企業は皆無に等しく、すべて企業はすべての学生を求めているような(エントリーしたら受かるかもしれない、という)錯覚を与えてしまっています。その採用基準がわからなまま学生が徹夜でエントリーシートを書いていることが無意味、異常なのです。