障害を持つ人にも持たない人にも、仕事を通じた成長の場を
トークセッションでは、「企業に障害者雇用拡大を求める最近の法改正の流れのなかで、企業はこの問題をどう受け止めるべきか。企業側の真の課題は何か」と寺澤が問いかけた。松為氏は「障害を持とうと持つまいと差別せず、共生社会を実現していこうということは、いまや日本全体の共通認識になっている」と応じ、企業が社会の一員としてこの問題に積極的に取り組むことを促す一方、「皆さんが働くことを通じて人生を充実させているように、障害を持つ人たちにも同じ機会を与えていくという認識が必要だ」と、仕事を通じた自己実現・自己成長の場を提供する企業の社会的責任に言及した。また、最近は障害者の人材不足感が拡がっているが、企業が苦労して採用しても、結局、離職となり、また採用しなければならないケースも増えている。宮林氏は障害者の職場定着の難しさに触れ、「面談やカウンセリングも大事だが、最も重要なのは、その職場で本人が働くことに意義や生きがいを感じられるような環境を企業がいかに作っていくかだ」と述べた。障害者雇用がもたらす企業活性化の効果
では、障害者雇用をどう実践すればいいのか。「共生社会の実現は非常に大事なキーワードだが、まだまだ、社会全体で障害者の面倒をみてあげるという考え方になりがちな現状もある。そうではなく、その人たちをいかに戦力化するかという経営的な視点への転換が求められると思うが、そこはどう考えるか」。寺澤のこの問題提起に対し、松為氏は、「この人は障害者だからといった考え方だと、戦力化することは難しい。障害者を雇っている人たちは、あまり障害者だと意識していない」と述べたうえで、障害者雇用がもたらす企業活性化の効果を次のように紹介した。「特に雇用障害者数の多い企業の方は、この人たちを雇うことで会社全体が変わるということを必ず言う。障害を持つ人たちは大きな思いを持って働くし、非常に真面目でていねいだ。障害を持たない周りの人たちに及ぼす影響は大きい」。さらに、これから障害者雇用を進めていく人事担当者に対し、宮林氏は「一番大切なのは情報を知ること。支援機関が実施する企業向けセミナーなどもある。実際に企業がどのように障害者雇用を行っているか、情報を集めるなかで自分たちに合ったものを採り入れ、落とし込んでいくといいのではないか」とアドバイスを送った。松為氏も「高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページでは障害者雇用リファレンスサービスを提供しており、障害者を雇用する日本の数千社のデータベースを参照できる。そこで自分たちと同じ業種、規模などの企業の雇用事例を見てみれば、まず、不安感を払拭できる。こうした情報を経営者や現場の人たちに提供し、理解を求めることも大切だろう」と述べた。